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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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ゲーム飯


 今回花応院さんが持ってきてくれた荷物の中には、コン君に頼まれた品物もいくつか含まれていた。


 獣ヶ森では買えない品を俺が代理して通販で、コン君のお小遣いの範囲で買ったもので……以前からちょこちょこ買い物をしていたのだけども、今回は少し大きな買い物となっていた。


 最新ゲームハードと最新ゲームソフト。


 CMで見ることはあっても中々獣ヶ森で入荷しないそれらを、コン君はずっと遊んでみたかったらしい。


 普通のコントローラーで遊ぶのはコン君の小さな手では難しいけども、それはキーボードなどで操作することも可能になっていて、持ち歩くための折りたたみキーボードや小型マウスなども注文してある。


 小さな折りたたみキーボードやマウスならば、コン君の手で操作するのにちょうど良く……あとは持ち前の運動神経と反射神経の良さでなんとかしてくれるに違いない。


 そういう訳でそれらの荷物を段ボールから取り出し、居間に並べておく。


 開封もまた買い物の楽しみだからと箱から開封はせずただ並べるだけにして……それから家事に着手し、コン君がやってくるのを待つ。


 そしていつものようにコン君がやってきて……、


「きたよーー!」


 と、元気な声を響かせながら手洗い場へ。


 すぐにゲームに飛びつくかと思ったけども、さては今日届くことを忘れているな? そして居間の様子をよく見もせず駆けていっちゃったな?


 まぁ、手洗いうがいを先にすることは悪いことではないので何も言わないでおく。


 後からやってきたさよりちゃんは居間の様子を見て気付いたようだけども、


「お邪魔します」


 と、それだけを言ってコン君を追いかけていく。


 さよりちゃんも俺と同じような考えだったらしい。


 そして手洗いうがいをしっかり終えたコン君が、いつものように居間へとやってきてから、


「あっ!?」


 と、声を上げて硬直する。


 煌めく最新ゲームハードの箱を見て硬直し、その隣にあるソフトやキーボードの箱を見てまた硬直し……それからゲームハードの箱に飛びついたコン君は、しばらくの間その箱に抱きついたまま動かなくなってしまう。


 それから開封しなければ遊べないということに気付いたようで、その鋭い爪でもって器用にシールやらテープを切って開封をしていって……そしてゲームハードをちゃぶ台の上にどんと置く。


 どうせならテレビの近くに置けば良いだろうに、そこで配線をしようとし始めてしまって……俺は苦笑しながら近付いてハードをテレビの側へと持っていってから、セッティングを手伝って上げる。


 配線をし、電源を入れて、日時やら何やらを入力してネット接続の設定もして……キーボードやマウスの設定も終えるとアップデートファイルのダウンロードやらインストールやらが始まり、少し待つことになる。


 その間コン君は全身の毛を逆立たせながらソワソワソワソワし続けて……アップデートと再起動が終わった瞬間、ソフトをハードに入れて、それからちゃぶ台の前に座り、ちゃぶ台の上に置いたキーボードとマウスを器用に操作し始める。


 少し遊んでチュートリアルを終えたなら、さよりちゃん用のキーボードも起動して二人でプレイをし始め……そこからはもう夢中で遊び続ける。


 最初は「画面綺麗!」とか「この武器すげぇ格好いい!」とか「キーボード使いやすい!」とか、そんな声を上げていたのだけど、遊び始めるとほぼ無言だ。


 二人でプレイしているんだから、色々声を掛け合えば良いだろうに、それも少なめで……無言の連携をし始めたりする。


 獣人的な直感か何かでそれを可能にしているのだろうか……?


 そうやって遊んで遊んで……そのうちテチさんが仕事から帰ってきて、由貴の面倒を見てくれるのでその間に家事を進めていく。


 家事が一段落してもコン君達はゲームに夢中……だったが、ゲームのストーリーもちょうど一段落した所のようで、コン君達はただただ流れる映像を眺めているだけだった。


 何か大きな戦闘が終わって、食事会のようなものを開いてそれを祝っているらしい。


 やけに作り込まれたリアルな映像で描かれているのは、とても美味しそうな……そこまで手間をかけずに再現出来てしまいそうな料理の数々で、それらを美味しそうにゲームキャラ達が食べていて……コン君達の目はそれに釘付けだ。


 その映像が終わるとプレイデータのセーブが始まり、セーブが終わるとコン君達は、十分満足出来たのだろう、ゲーム機の電源を落としてからこちらに振り返り、食欲に満ちた表情をこちらに向けてくる。


「……さ、再現して欲しいの?

 見た感じ、いくつかは出来るだろうけど……ああいうのは必ずしも美味しいとは限らないよ?」


 と、俺がそう言うとコン君は、


「それでも出来るならお願い!

 特にあのベーコンのやつ! ベーコンのやつが良い!」


 と、返してくる。


 ベーコンのやつと言うと……焼き立ての大きなベーコンにハチミツをかけていたやつか。


 ベーコンにハチミツかぁ……映画で見て試したことはあるんだけど、正直今ひとつだったんだよなぁ。


 甘さとしょっぱさが全然交わらないというか、ハチミツの香りとベーコンの燻製の香りが正面衝突するし、それでいて半端な甘さとしょっぱさがなんとも微妙にブレた味となって、これなら別々に……ベーコンはベーコンで食べて、ハチミツはハチミツで舐めた方が良いのでは? なんてことを思ってしまった。


 もしかしたらベーコンに合うハチミツ、ハチミツに合うベーコンがあるのかもしれないけど……そこまで研究する気にはならなかったなぁ。


 ただ単に俺の舌に合わなかったのか、それか何か工夫が足りなかったのか……どっちなのかは未だに分からない。


 しかしまぁ、コン君達がそれを望むなら……と、まずは自作ベーコンを取りに、倉庫の冷蔵庫へと向かう。


 そこから一番大きなベーコンを取り出し……ハチミツもリンゴ農家が直販をしている香りの良いものを用意する。


 あとはもうベーコンを焼いてハチミツを垂らすだけなんだけど……コン君達をがっかりさせないための一工夫をすることにする。


 用意するのは粒マスタードにマヨネーズ、ハチミツと醤油だ。


 やることは簡単、それらをボウルに入れてよく混ぜるだけ……これでハニーマスタードの完成だ。


 ただハチミツを塗るだけは合わなかった俺だけどもハニーマスタードをベーコンに塗るのは大好きだった。


 しっかり味が合うし、ハニーマスタードの中でふんわりとハチミツの香りを楽しめるし、ベーコンの味だってより美味しいものへと高めてくれる。


 ハチミツががっかりに終わってもこれがあればリカバリーは十分に可能だろう。


 という訳でいつもの椅子に座ったコン君達がワクワクの表情で眺める中、あえて分厚く切ったベーコンをフライパンで炒めていく。


 しっかり火を通すというよりは冷蔵庫で冷えたベーコンを温め直す目的で、温めて脂を柔らかくして食べやすくして……十分熱が取ったならハチミツをたっぷりかけて完成。


 それをお皿に乗せたなら居間へと配膳していく。


 そして用意するのはコン君達用のフォークとナイフ。


 ゲームでもそれらを使って食べていたからと用意する俺を見てコン君達は、言葉ではなく満面の笑みでもって答えを返してくれて……そうして皆で居間に移動してのハチミツベーコン試食会が始まるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
ハニマ厚切りジェイソ…ベーコン! 真似しよっかしら
ナイフで食べるの見るたびちょっとハラハラしちゃうんですよねぇ。口切りそうで(・∀・;) コン君たち、獣ヶ森ではリアルハントしてるでしょうにw
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