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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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お悩み


 ある朝のこと。


「実椋、少し話があるんだが……」


 と、テチさんにそう言われて俺はある相談を受けることになった。


 それはお通じの調子が良くないというもので……妊娠中や出産後にそういうことになることがあると、事前に聞いていた俺はすぐさま改善のためのメニューを作ることにした。


 ……と、言っても特別なことをする訳ではない。


 まず御衣縫さんに電話をし、玄米を譲ってもらった。


 御衣縫さんは田んぼもやっているので問題なく譲ってくれて……それを受け取るために車で向かったなら、すぐに家には帰らずにスーパーへ。


 スーパーの駐車場にはコイン精米機が設置してあるのでそこに入り……もらった玄米を入れて白米コースではなく、美味しい玄米コースでの精米を行う。


 新しめのコイン精米機で出来るこれは、玄米の表面にあるロウ層……米を守るためにあるらしい層、玄米を固くしてしまっている原因を取り除くという精米方法だ。


 これをやると玄米の栄養はそのままに、美味しく食べやすい玄米になってくれる。


 更には栄養吸収にも良いとかで……玄米食をやる場合には兎にも角にもこれをやるのが良いとされている。


 それからスーパーに寄ってヨーグルトを買い足し、ついでに小分け袋のミルクオリゴ糖という商品も買っておく。


 家に戻ったなら早速玄米の炊飯開始、普通に洗ってあとは炊飯器の玄米コースで炊飯するだけで、特別なことはしない。


 ロウ層を取り除かない場合、何時間も水に漬けておく必要があるらしいけど、精米機でしっかりやってあるのでその必要はなく……炊き上がりを待つ間に朝食の準備をする。


 すると由貴を抱っこしたテチさんがやってきて、炊飯器をじぃっと見つめながら言葉をかけてくる。


「玄米にすると良くなるものなのか?」


 それを受けて俺は包丁を動かしながら言葉を返す。


「人によって合う合わないはあるんだけど、かなり良くなると思うよ、玄米は食物繊維が豊富だからね。

 ……ただ食物繊維を摂取するだけなら他でも良いとは思うんだけど、不思議と玄米の方が効果あるんだよね。

 玄米の他の栄養素がなにか影響しているのか、糖分を食物繊維でしっかり包んでいるのが良いのか……詳しいことは分からないけど、きっと効くはずだから、とりあえずこれをヨーグルト、それとミルクオリゴ糖で様子を見ようか。

 ミルクオリゴ糖は人体には吸収されず、乳酸菌とかの栄養になるもの……らしいから、ヨーグルトと一緒に食べてね」


 と、そんなことを言いながら俺は昔、玄米食をしていたことを思い出す。


 米は基本的に玄米のままの方が長持ちする、味も落ちにくいから食べる直前に精米するのがベストだ。


 玄米とはつまりある種の保存食でもあり、興味を持って色々調べて、実際に食べていたという訳だ。


 変化が起きたのは玄米を食べ始めて2・3日した頃だったか、トイレで特大のものを出すことになった。


 それは流すのに苦労するほどのもので……特に大食いもしていないのに、何事だと驚いてしまった。


 いわゆる宿便というやつなのか、それが綺麗さっぱり出てきたらしく、それからお腹の調子が良くなった、なりすぎた。


 明らかにトイレに行く回数が増えて、快便が続き、体調全体も良くなった……気がした。


 こうなるとメリットまみれのように思えるが、腸の活動が元気すぎた結果、ガスがよく出るようになってしまった。


 明らかに回数が多すぎて、音も大きくて……当時営業をやっていた俺には合っていなかった。


 それで食べるのを止めたのだけど効果は凄まじいものであり……今回それを試すことにしたという訳だ。


「まぁ、白米に比べると固く感じるし、独特の風味もあるけども、決して不味いとかではないから安心してよ。

 体に良いのは本当で、由貴にも玄米を好きになってもらいたいしねぇ」


 と、言葉を続けるとテチさんは玄米に興味を持ったようで、残りの玄米を入れてある袋を広げて中の確認をし始める。


 白米の方が玄米より美味しいのは確かだ、食べやすいし甘みも感じるし……おかずとの相性も白米の方が良いだろう。


 ただ健康に良いのは間違いなく玄米で……給食とかでもたまに玄米を出しても良いと思うのだけど、あまりそういう機会は見かけない。


 ある程度食べ慣れて、その効果を知っていれば日常の中でも選択肢になるだろうに……うちの両親がそうだったけども、玄米へのイメージが良くないのが影響しているのだろうか。


 そんな玄米の相方は、鮭の塩焼きとホウレンソウのおひたしとキンピラゴボウ、それと豆腐とナメコの味噌汁と、ヨーグルト。


 由貴には玄米ご飯と薄味鮭、それと玄米が気に入らない時のために小さい器に入れた冷やしソバと温泉タマゴのセット。


 それらを配膳したなら皆で手を合わせ、


『いただきます』


「まー」


 と、声を上げ端に手を伸ばす。


 ……うん、玄米の味だ、少し歯ごたえがあってそれがクセになる味。


 昔は悪く言われていたらしい玄米だけど、精米機と炊飯器の性能が上がったことで全く問題なく食べることが出来る。


 鮭との相性もよし、白米と比べればどうしても固いので自然とよく噛むようになり、それも良い影響があるのかもしれないなぁ。


 テチさんは問題なく食べていて……由貴も嫌ってはいないようだ、ちゃんとスプーンでもってすくい上げてモクモクモクと食べている。


 固いものでも問題なく食べられるリス獣人からすると、むしろ少しは固い方が歯ごたえがあって良いのかもしれないなぁ。


 そうやって玄米を食べ上げた由貴は、鮭もささっと食べて……それからソバの器へと手を伸ばす。


 両手でしっかり掴んで引き寄せて……温泉卵入りのそれをじぃっと見つめてまず目で楽しむ。


 由貴にとって大好物のしょば、まぁ、あの時のは焼きソバで普通のソバとは全くの別物なんだけども、それでも同じ麺類、皆がソバと呼んでいるからか、こちらのソバも由貴にとっては大好物だった。


 そうやってじっくり眺めたらフォークですくい上げて口に運んで……チュルチュルと吸い上げて、どんどん吸い上げて、ほっぺたをいっぱいにしたらモグモグと咀嚼し、味と香りを存分に楽しむ。


 そうしてあっという間に温泉卵入りソバをたいらげた由貴は、器を両手で持ち上げこちらに差し出し、


「おかーりー」


 と、おかわりを要求してくる。


 それは予想通りのことで、


「分かったよ、ちょっとまっていてね」


 と、声をかけた俺は器を受け取って台所に向かい……今度は野菜入りソバを作り上げる。


 ホウレンソウと刻みネギ、その中に刻みセロリも紛れ込ませる。


 そんな風に野菜が入っていても由貴にとっては美味しいしょばで、単体では中々食べてくれない野菜も、しっかりと食べてくれる。


 実際、居間に行って差し出すと、野菜を気にした様子もなく食べてくれて……ソバさえあればどうでも良いと言わんばかりの由貴は、あっという間にそれを平らげる。


 それから由貴はさらにおかわりと要求してきて……今度は野菜がかなり多めで、ソバ少なめのものを出すが、それも平気で食べてしまう。


 ……この子は細かいことを気にしない大物になるかもしれないなぁ。


 なんて親バカなことを思いながら俺はそれを眺めて……じっくり眺めたなら汚れた由貴の口の周りを、ウェットタオルで綺麗になるまで丁寧に優しく拭いてあげるのだった。


 


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
最近ロウカットとかライススリットとかの玄米が結構売ってますねー。 美味しいのでここ数ヵ月玄米食べてます…ガスはいっぱい出ますよね(・∀・;)
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