表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

436/496

肉バーガー


 カウンターに腰を下ろし、メニューを手に取り、コン君と一緒に視線を落とす。


 クマバーガー、シカバーガー、アナグマバーガー、鳥バーガー。


 ……まず目に入ったのはそんな名前のバーガー達で、写真付きではあるものの、どれもこれも同じに見える。


 一応具材というか野菜部分が少し違うようだけど……これ多分臭み消しだな。


 臭い肉には臭み消しの力が強い野菜を使っているようで……それぞれの肉に合わせての味の調整もしているようだ。


 その下には合い挽きバーガーがズラリ。


 たとえばクマとシカ、シカと鳥……などなど、色々な組み合わせの合いびき肉があるらしい。


 そんなジビエコーナーを過ぎると豚、牛、鶏などの一般的な肉が並び……さらにはブリ、アジ、シャケなどの魚肉を使ったバーガーもあるようだ。


 ジビエ肉は森で捕まえたもの、家畜肉は長森牧場、魚は養殖場……って感じだろうか。


 てりやきとかチーズとか、そういった一般的なメニューは全くなく、どれもこれも肉中心……肉に合わせて味が変わるのがこのお店のバーガーの特徴のようだ。


 ……ページをめくるとベーコンバーガーに、ジャーキーバーガー。


 どこまでも肉主体なんだなぁ。


「コン君はどれが良い?」


「多すぎて分かんない!」


 隣のコン君に質問を投げかけてみると、ストレートな答えが返ってきた。


 まぁ、それはそうか……どれもこれも同じような外見で、こんなにも種類が多いとどれを選んだら良いのやら……。


「……じゃぁ適当に頼んで、たくさん持って帰って、皆で味見してみようか?」


「おー! さすがにーちゃん! それなら色々楽しめそう!

 ……じゃぁじゃぁ、クマとシカ! それと普通の牛のやつ! 食べたい!」


 俺の提案にコン君がノリノリで応じてくれて……それから俺達は自分達で食べたいものを選んで注文をし……電話をしてテチさんとさよりちゃんの希望を聞いて注文をし、結果合計20個というかなりの量のバーガーを注文することになった。


 ポテト他の王道サイドメニューは存在せず、本当にバーガーだけのお店だったので注文はそれだけ。


 せめてジュースなどのソフトドリンクくらいはあったほうが良いと思うんだけど、メニューにあったのは水とお茶だけで……なんとも渋い感じだなぁ。


 そしてそんな大量注文を受けてタケさん達は大忙しとなり……俺とコン君はキッチンから聞こえてくる賑やかな音を聞きながら出来上がりを待つことにする。


 ……そしてキッチンから聞こえてくる声から察するに……。


「なるほど、とんでもないメニュー数だとは思っていたけど、注文を受けてから肉を用意しているのか……」


「ん? どゆこと?」


 俺の呟きにコン君がそう返してきて、俺はキッチンの中をどうにか覗き込めないかと首を伸ばしながら言葉を返す。


「注文を受けてから肉を切り分けてひき肉にしてハンバーグ状にして焼き上げてバーガーに。

 門の向こうのファーストフード店だと既に焼いてあるお肉を再加熱してバーガーにして提供するんだけど、そういう形ではないみたいだねぇ」


「へ~~……あ、だから色々な組み合わせの合いびき肉ができるんだ!

 頼まなかったけど、クマと牛! とか注文したらそれを今から用意してくれるんだ!」


「そうみたいだねぇ。

 その方が美味しいし好みの組み合わせも選べるし、手間と時間はかかるけどお客さんにとっては悪くない……って、そうか、好みが違う人が多いからってのもあるのか」


「ん~? 好み?」


「いや、ほら、獣人って俺がまだ把握しきれてないくらいに種類がいて、それぞれ好みとか食生活とかが違うんでしょ?

 ってことは肉の好みも違うはずで……だからこその豊富なメニューなのかなって。

 ジビエがメインなのは肉食系の獣人向けってのもあるのかもねぇ」


「あ~~、なるほど!

 肉食の人は生肉とかいけるって聞いたことあるし、そう言う人は半生とかになるのかもねー」


「……え? いけるの? 生肉? ジビエの??

 い、いやまぁ、そうか……人間とは違う体の作りなんだからいける獣人もいるのか……。

 ……仮にリス獣人がいけるとしても我が家では出さないからね、生肉。

 俺は人間だし、由貴も俺の血を引いている訳だし……」


「え? うん、大丈夫だよ?

 にーちゃんのご飯は生肉より美味しいし」


 ……今の言葉に突っ込むべきか否か、悩んでいるとタケさんがやってきて、持ち帰りようの袋を準備し始める。


 もうそろそろ出来上がるのかな? と、思ったらどうやらそうでもないようで……少しでも冷まさないように、出来上がりを持ち帰るようにあらゆる作業を平行して行っているようだ。


 一つ一つ仕上げるのではなく、全て並行して材料や道具を揃えていって……焼き上げと組み上げ、包装紙に包んで袋に入れるという作業を一気に行うつもりらしい。


 客としてはありがたい限りだけど、タケさんは大忙しといった様子で……あまり話も出来ないままに商品が出来上がっていく。

 

 少しでも冷めないようにとそうしてくれているのだから、受け取り後に長話もためらわれて……出来上がったならさっさと支払いを済ませて、タケさんにまたお暇な時にと声をかけて両手で大きな紙袋を抱えながら我が家へと向かう。


 すると電話していたのもあってか、テチさんが玄関で由貴を抱きかかえながらの仁王立ちで俺達……というかバーガーの到着を待っていて、すぐにでも食べたいと表情で語りかけてきて……俺達はバーガーをテチさんに渡してから手洗いうがいを済ませ……それとバーガーの相棒ということでジュースを用意してから居間へと向かう。


 それからそれぞれ気になったバーガーを手に取る。


 個人店ということで包装紙は全て同じものだけど、張られたテープにどんな肉が使われているのかがしっかりと書いてあって……俺は牛豚合いびき肉、テチさんはクマ肉、コン君はシカ、さよりちゃんもシカを手に取る。


『いただきます!』


 そして食事開始。


 手作りハンバーグということもあって丸々していて分厚いハンバーグを、新鮮なレタスとトマトとタマネギとソースで挟んで……パンも焼き立てで香ばしく、食べれば当然に美味しい。


 なんというかジャンクフードではなくしっかりとした料理という印象で……そしてハンバーグの主張が凄まじい。


 バーガーという料理というより、ハンバーグ+オマケ達といった感じで、パン外が負けてしまっているくらいにハンバーグが美味しく、ソースの味付けも完璧だった。


 感想としては美味しい、これで一つ500円なんだから全く文句もない。

 美味しいのだけどハンバーガーとしてはどうだろうと思う部分もあり……どうなんだろうなぁと思っていると、テチさんが


「これは美味しいな!」


「うん、めっちゃ美味い!」

「お肉がおいしーです!!」


 コン君、さよりちゃんが続く。


 ……なるほど? お肉を楽しむならこれで良いのかな?


 もしかしたらソースとかもリス獣人好みになっているのかもしれない。


 もしそうなら……あのお店は中々長続きしてくれそうで、近所と言える距離に新しいお店が出来たことを喜んだ俺は、手にした合い挽きバーガーを一気に食べ上げるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
バーガーキ○ングのやつより大きいんでしょうねー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ