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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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山菜採り


 という訳で翌日。


 早速御衣縫さんの山菜畑へとお邪魔することにした。


 長袖長ズボン、軍手と背負籠。


 御衣縫さんに指定された格好をして皆で向かうと、収穫のための道具が用意されていて……それぞれ、割り当てられた畑での収穫を始める。


 俺はワラビ、テチさんはウド、そしてコン君とさよりちゃんはちょっと森に入ってのタラの芽。


 ワラビとウドは地面に生えていて楽に収穫出来るのだけど、タラの芽はその名の通りタラの木の先端に生えるもので、しっかり管理されているところでも簡単ではない。


 手が届く所は良いけども、届かないところは脚立なりを用意する必要があり……脚立があっても枝が深い所の収穫は難しいだろう。


 何故かと言えばタラの枝にはトゲがあるからだ。


 鋭く多く、引っかかりやすいようにと曲がっていて……軍手をしていても掴むのをためらうレベルなのがなんとも厄介だ。

 

 芽を摘むだけなら良いのだけど、枝の中に手を突っ込むとか枝を掴んで引っ張るとなると怪我の可能性もあり……実際、御衣縫さんの畑のタラの芽のうち、収穫されているのは低い位置にあるものだけだった。


 大して手入れしていない関係で、枝は生き生きと伸びまくり、高い位置や厄介な位置にも伸びていて……そんな芽を収穫するのがコン君達の役目だ。


 いくら身軽なコン君達でも、トゲだらけのタラに登るのは難しいと考えていたのだけど、なんとも驚いた事にそのための道具が市販されているらしい。


 リス獣人の子供が、タラの芽を収穫する時に使う手袋に足袋に、繋ぎのような服に背負籠に。


 それがあればトゲを気にせず木登りが出来るんだそうで……御衣縫さんがそれを用意してくれていたので、コン君達は余裕綽々といった感じでタラの木の枝を上り、次々に芽を収穫していっている。


「おう、そこには収穫しないでとっておいてくれ……ああ、そっちは収穫して良い。

 出来るだけ枝に傷をつけないでくれよ、来年も楽しみてぇからな!」


 そんなタラの木の下では御衣縫さんがあれこれ指示を出していて……コン君とさよりちゃんは、それに従ってどんどんと収穫をしていく。


 以前タラの芽天ぷらを作ってあげたこともあって、コン君達のやる気は凄まじいことになっている。


 採れたてタラの芽のテンプラは特別美味しいと、御衣縫さんが教えたことでそのやる気が更に加熱している。


 そんな光景を遠目に眺めながら俺は、ただただワラビの収穫を進めていく。


 手で折って籠へ、手で折って籠へ、こちらは残しておくとかは気にしなくて良いらしく、無心で収穫しまくっていく。


 テチさんは畑に植えられたウドを引き抜いている。


 ウドに関しては来年のためにいくらか残す必要があるそうだけど、それはもう御衣縫さんの方でやっているらしいので同じく無心で……背負籠をいっぱいにする勢いだ。


 そんなテチさんの胸には抱っこ紐でしっかりと固定された由貴の姿があり……由貴は動けないことを不満そうにしながらも、初めての光景を楽しんでいるのか、ご機嫌でわーうーと声を上げている。


 声を上げながら手をコン君達の方に伸ばし、じたばたとさせていて……もしかしたら元気に木登りをするコン君達の姿に興奮しているのかもしれないなぁ。


 そうやって収穫を進めていって……お昼になったらお昼休憩、持ってきた弁当と、御衣縫さんが用意してくれた山菜おにぎりを食べてから再開。


 そうやって背負籠をいっぱいにしたなら、御衣縫さんの神社に移動し……そこの台所で下処理をし、下処理が終わっての夕方。


 自分達で食べるには十分過ぎる程の量の山菜を分けてもらい、それらを持ち帰って早速食べることにする。


 山菜の塩漬けが欲しい、だから収穫と下処理を手伝った。


 それはそれとしてせっかくの山菜なんだから新鮮なうちに食べたい。


 という思いは捨てられず、おひたしや煮物、天ぷらに仕上げていって……食卓に並べると、それはもう物凄い勢いで箸が伸びてくる。


 普段通りにしていても食欲爆発させるだろう山菜フルコース。


 それが一日肉体労働してからでは尚更で……特にタラの芽の天ぷらの人気が凄まじい。


「……美味い!」


「うん、オレタラの芽好き! っていうか山菜ならなんでも好き!」


「御衣縫さんのとこの山菜は、森で採るのより美味しい気がします」


 テチさん、コン君、さよりちゃんの順でそう言ってどんどん食べていく。


「……皆、御衣縫さんが言っていた通り、食べ過ぎないでね? 山菜の食べ過ぎは良くないから……。

 残しておいて明日食べても良いんだよ?」


 と、そんな声をかけるが皆は止まらない。


 まぁー止まる訳がないとは思っていたけども……凄い食欲だ。


 ならばと俺は、山菜と相性良いと個人的に思っているワカメとアサリの炊き込みご飯をいつもの茶碗ではなく、丼に盛り付けて皆の前に出し……そちらへ食欲を満たす作戦を取る。


 山菜は滋味に溢れてとても美味しい……抹茶塩もおろし入りのつゆもとても相性が良くてたまらない。


 それと同時にご飯をかきこみたくなる味でもあり……手の込んだ、炊きたて炊き込みご飯を出されたら嫌でも手が伸びてしまうことだろう。


 山菜に合うように調整された薄味。


 ネギとショウガで爽やかさも付け足してあるので、多くても飽きずに楽しめるはずで……実際大好評、どんどん炊き込みご飯が消えていく。


 と、その時。


「うちのチーズが山菜と相性良いってほんと!?」


 なんて元気な声を上げながらフキちゃんが駆け込んでくる。


 縁側から廊下、そして居間へ。


 そしてテチさんが手洗いうがいをしてこいと、洗面所の方を指差し、それに従って駆けていって、手洗いうがいを済ませたならささっと駆け戻ってくる。


「で、で、で、山菜とチーズ、どうなん?」


「悪くないと思うよ、元々山菜って油系と相性良いから、こってりチーズだとより良いのかもね。

 今日はもう無理だけど、今度試してみる?

 ……それか天ぷらにチーズかけてみるとか? まぁ悪くない味にはなるかな? パリパリ感はなくなるけども」


 フキちゃんの言葉に俺がそう返すとフキちゃんは、


「んん~~~~~……悪くなさそうだけど、炊き込みご飯とチーズは流石にいまいちだよね?

 じゃぁじゃぁ、今日は普通にいただきます!」


 と、そう言ってちょこんと自分の席を作って座り……完全なる配膳待ちの姿勢となる。


 それを受けて俺は仕方ないなぁと苦笑しながらフキちゃんの分を用意してあげるのだった。


 


お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
ウドを引っこ抜く獣人パワー(・∀・;) タラの芽採取用の手袋欲しいですねぇ!
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