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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十二章

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続く撮影会



 コン君達の撮影会には花応院さんも参加していて、あまり見ないタイプのデジカメでもって写真を撮りまくっていた。


 あの花応院さんがまさかこんな風にテンション上げるなんて、と驚かされたが、そう言えばと思い出されることもあって……花応院さんに視線を送ると、花応院さんは頷いて言葉をかけてくる。


「こちらの写真も表に出す場合はしっかりと編集しておきますのでご安心ください。

 由貴ちゃんを出すのがお嫌でしたら、そのように対処もしておきます」


 それを受けて俺がテチさんへと視線を送ると、以前コン君達の動画が門の外で話題になったことを思い出してくれたのだろう、問題ないと頷いてくれて、それを受けて俺は花応院さんに言葉を返す。


「編集をしてくれるのなら俺もテチさんも問題ありませんよ。

 それで融和とかが前に進むのは俺達にとっても嬉しい話ですので……細かい部分は花応院さんのことを信頼していますので、お任せします」


「そう言って頂けること、誠に光栄で感謝の言葉しかありません。

 由貴ちゃんの可愛さは……他人の私から見ても凄まじいものですので、きっとあちらでも大人気になりますよ」


 と、そう言って花応院さんはまたカメラを構えるが、その頃には由貴がポーズに飽きてしまいコン君の尻尾に抱きついていて……サービス精神旺盛なコン君は、そんな由貴がよく見えるよう皆に向けてお尻を突き出し、尻尾をゆらゆらと振るってみせる。


 そうなったらもう由貴が可愛いのか、コン君が可愛いのか、両方が可愛いのか、両親も花応院さんも暴走状態となってシャッター音を響かせ続ける。


 そうこうしていると由貴はおねむの時間がやってきたようで、コン君から離れてとてとてとテチさんの方に歩いていき……テチさんが両手でそっと抱きとめるとすーすー寝息を立て始め、しばらくそっと撫でてやったテチさんは眠りが深くなったのを確認してからベビーベッドにそっと寝かせる。


 由貴が寝た時は皆自然と言葉少なくなり、静かに過ごすようになり……両親はスマホを操作し、先程撮った写真や動画を眺めてのご満悦ムードに入っている。


 花応院さんもデジカメを操作しての確認をしていて……テチさんは洗濯物、ベビー服などを畳み始め、そしてコン君とさよりちゃんが暇そうにし始めたので、俺は台所に移動を開始する。


 由貴が寝ている時は、たとえそれが熟睡であっても俺かテチさんのどちらかが側にいることが我が家のルールだ。


 今はテチさんがいるので問題なし、台所での作業をするかと台所の中を見回していると、いつもの椅子に座ったコン君が声をかけてくる。


「そう言えばにーちゃん、赤ちゃん用の保存食とかってないの?」


「え? 赤ちゃん用かぁ……赤ちゃんでも食べられるってのはたくさんあるだろうけど、赤ちゃんのための保存食とかはあまり聞かないかなぁ。

 赤ちゃんと言えば母乳や離乳食が一番で……それ以外は食べさせない方が良いと思っている派閥かなぁ、俺は。

 ハチミツが駄目とか、この栄養素が駄目とか、赤ちゃんの食事には気を使わないといけないからねぇ……特に自作の保存食は100%安全とは言い切れないものだからね、赤ちゃんには食べさせたくないかな。

 それでも食べさせられそうというか、大丈夫そうなのは……ジャムとかになるのかな?

 ただそれも離乳食用の市販品にした方が良いと思うかな」


「なるほどー……まぁでもオレが赤ちゃんの頃はとーちゃんの食べ物、勝手に食べちゃってたらしいけど、それでもこうして元気だから心配いらないと思うよ!

 なんか塩辛とかカラスミとか、数の子とか、そーいうのばっか狙ってたらしいよ。

 後は納豆が大好きだったって! 冷蔵庫のドア開いた隙間に滑り込んで納豆のパック盗んじゃったんだって」


「そ、それはまた……晩酌のあての高級品狙いとは、コン君は赤ちゃんの頃から舌が肥えていたんだねぇ。

 そして納豆かぁ……和食党のコン君のお家なら良い納豆を買ってそうだから、それが余程に美味しかったんだろうねぇ」


 と、俺が返すと話を聞いていたさよりちゃんが、


「あ、私は大人しい子だったみたいなので、リス獣人の赤ちゃん全部がそうなる訳じゃないですからね」


 なんて釘を差してくる。


 なるほど……由貴がさよりちゃんみたいに大人しい子だったら……。


 それはそれで良かったのかもしれないが、由貴は今の由貴が一番だと思う自分もいる。


 元気いっぱい好奇心旺盛、このまま元気な大人になって欲しいと思う程だ。


「でもきっとユキちゃんもにーちゃんが作ったご飯好きになるはずだよ! どれもおいしーもん!

 これからだって何か作るんでしょ? 美味しいの!」


 あれこれ考えているとコン君がそう言ってきて……俺はどうしたものかと頭を悩ませる。


 少し前に食事をしたばかりでまた食事を作るというのもなぁ……時間がかかるにしても早すぎる。


 何しろ今日の客人は人間で、獣人程の食欲は持っていない訳だしなぁ……。


 そうなると……、


「何かおやつでも作る? コン君とさよりちゃんは食べたいおやつあるかい?」


 となる訳で、そんな俺の問いかけに対するコン君とさよりちゃんの答えは、


「アップルパイ!」

「あ、私もパイがいいです」


 というものだった。


 アップルパイか……うん、それも悪くないけどどうせなら、と材料を用意していく。


 今日はネットで見かけた海外で愛されている古き良きアップルパイを作ってみよう。


 そのレシピだとアップルパイなのに具材はリンゴだけでなく、リンゴ、イチジク、洋ナシとなっていた。


 それらを甘露煮にしてパイに詰める訳だけど、流石にそこからやっていると時間が足りないので時短するためにリンゴは自作のコンポート、イチジク洋ナシは缶詰のシロップ煮を使う。


 あくまでアップルパイなのでリンゴ多め、イチジク洋ナシは少なめで……恐らくは昔のリンゴは酸っぱいものだったらしいから甘さや風味などを足すためのイチジクと洋ナシなんだろうなぁ。


 こうなるとちょっとした料理のようというか、色々な野菜を入れて味に深みを増させるスープのような感じで美味しくなるかもしれないと考えての挑戦だった。


 あとは普通にパイのようにオーブンで焼き上げるだけ、その間はコン君達と料理に関する話をあれこれとし……そして焼き上がったなら居間へとパイを持っていく。


 すると両親は未だに寝ている由貴の撮影を続けていて……嘘だろ!? とちょっとした衝撃を受けた俺は、あえて何も言わずにアップルパイの配膳をコン君達に手伝ってもらいながら進めるのだった。

 


お読みいただきありがとうございました。

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