表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

410/497

災害食


 災害時の備えを皆で改めての確認をし……確認ついでに災害時という想定で食事をしてみようということになった。


 電気ガス水道が止まっていると仮定して、俺が作った保存食は使用せず、市販されているものだけを使うというルールを決めて……魚系の缶詰は少し前に散々食べたのでなし、それ以外の物を食べていく。


「という訳でまずは乾パンから行こうか、保存食の王道、安くて保存も効く……けど、まぁまぁの美味しさとなる一品だね」


 と、俺がそう言って缶詰の乾パンを取り出し、ちゃぶ台の上のお皿に乗せると、皆の手がすっと伸び、カリカリと乾パンを食べ進めていく。


 程よい塩味の中に感じるほんのりとした甘み。


 硬くて食べごたえがあって……それだけと言えばそれだけなので特に言うことはない。


 かなり大きめの缶詰だったので、結構な量があるのだが、食欲凄まじい獣人の手も次第に止まっていってしまう。


「じゃぁ次はパンの缶詰いってみようか。

 これはちゃんと柔らかいパンが入っていて……乾パンよりは美味しいはずだよ」


 という訳で今度はパンの缶詰。


 パン種を缶の中に入れて焼き上げたというもので、缶の中でパンはふっくらと膨らんでいて柔らかいが……味は普通のパンで、これはプレーンなのでただただ同じ味が続くことになる。


 中にはジャム入りパンとかもあるのだけど、あえてのプレーンでまたも獣人の手が止まっていく。


「お次は乾パンとパン缶詰の進化系と言っても良い救命パン。

 ふわふわだったり、ケーキ風だったり、それでいて具も入っているパンで、栄養価も悪くない、美味しいパンになるね、乾パンとかも悪くないけど個人的オススメはこちらになるかな」


 フルーツミックスだったりリンゴだったり、チョコチップだったり、その味は様々でかなり完成度が高く、文句なしに楽しめることの出来る救命パンはあっという間に食べ尽くされ……うん、食いしん坊だからこそ皆、味へのこだわりがあるようだ。


 それからもクッキー系パン系などの保存食を出していき……そうして俺はあるものを台所に取りに行きながら居間に向けて声を上げる。


「同じのばっかりで飽きたって顔だけど、災害時に色々な備えをしておかないと、今と同じ感覚を味わう訳だね。

 乾パンは確かに安くて保存が効いてカロリーがあるんだけど、飽きるっていうのは結構なダメージがあるもので……買う際にはその辺りも考える必要があるね。

 災害時だからこそ、心が弱っている時だからこそ美味しいものを食べたい……食べた方が活力になるっていうのもあると思うんだ」


 そう言いながら台所から取ってきたのはカセットコンロと鍋と水入りペットボトルで……カセットコンロをちゃぶ台の上に置き、鍋を置いて水を入れて火をつけたなら、再度台所に向かい……レトルトおかずの保存食、湯煎で温めると美味しくなるシリーズを持って行く。


「肉じゃが、煮物、煮込みハンバーグなどなど、カセットコンロと水があるだけでこれらが美味しく食べられる訳だね。

 もちろん温めなくてもそのままで食べられたり、水を入れるだけで温かくなる仕掛けがあるシリーズもあって、そういうのでもOKだよ。

 馴染のある味の、普通のおかずをあったかい状態で食べられるっていうのはありがたいものだと痛感して欲しくてのパン攻めだったけど、ここからは美味しいおかずと、湯煎で温めるパックご飯を楽しんでいこう」


 と、そう言ってから早速鍋でレトルトパウチパックや、パックご飯を温めていって……温めたなら食器に取り分け配膳していく。


 すると皆の箸が伸びてきて……レトルトおかずシリーズとパックご飯を口に運び、咀嚼し、そして下がっていたテンションが上がり、笑みがこぼれて声が上がる。


「うん、これは美味しい!

 これなら毎食でもおっけ~かな~、でもやっぱにーちゃんのご飯のが良い」


 と、コン君。


「え、レトルトって今こんな美味しいんですか?

 なんか前に食べたの全然美味しくなくて……あれってもしかして、古くてやばいやつだったのかな?」


 と、さよりちゃん。


「ふーむ……確かに悪くはないな、普通に食べられる。

 種類も豊富でこれがしばらく続くでも問題ないが……やっぱり実椋の料理が食べたくなるな。

 それとパックご飯が意外に美味しくて驚いた、普通とまでは言わないが、悪くない出来だ」


 と、テチさん。


「うん、美味しい!

 ……っていうか、皆舌肥えすぎじゃない? これだってふつーに美味しいし、全く文句ない味だと思うよ?

 今の保存食ってこんななんだーって感心したくらいなんだけど!」


 と、フキちゃん。


 全員文句なしに美味しかったようで反応は良好、あっという間の完食となる。


「カセットコンロと水があれば普通の料理だって出来るから、缶詰とかも大事なんだけど、こういう備えも大事になってくるよねぇ。

 選択肢が増えるってのは凄く大切なことで……特に獣ヶ森では山菜とか獣肉とか、川の水とかが採取出来るんだから、それらを活用するためにもカセットコンロは欲しくなるね。

 バーベキュー台でもなんでも、火を熾せて維持出来ればそれで良いんだけど……カセットコンロの手軽さには負けるから、オススメしたい所だね。

 ちなみにカセットコンロ用のガスで発電出来る発電機とか、暖房とかもあって、それだがあるだけで生活がぐっと楽になるから、お金に余裕があるなら選択肢に入ると思うよ。

 それらを使うなら当然、多めにカセットガスを用意しないといけないんだけど……料理をするなら普段から使う機会があるものだし、そう簡単には劣化したりはしないから、買い置きして損するってこともないんじゃないかな?」


 と、俺がそう言うと、フキちゃんはうんうんと頷いて、購入を検討しているのかスマホをポチポチと操作する。


 ……あの牧場ならプロパンガスもあるだろうし、ガスの供給が止まってもなんとかなりそうではあるのだけど、カセットコンロのような持ち運び出来るコンロがあっても損はないだろうし、悪くはないはずだ。


 それにフキちゃんはすぐ買う訳ではなく、あくまでチェックだけをして、あとで長森さんと相談するつもりのようだし……その時に本当に必要かどうかの判断を下せるはずだ。


 もしかしたらカセットコンロも普通にあるかもしれないし……なんだったらそれ以外の代物もあるかもしれない。


 カセットガスを使う調理器具は実は結構な種類があって、ホットプレート式、炉端焼き式などがあったりする。


 ホットプレート式のは焼き肉用プレートとか、たこ焼き用とかもあったはずで……調べてみると、こんなに種類があるのかと驚かされたりもする。


 中にはホットプレートとコンロ、鍋とホットサンドプレートまでがセットになって、一つの鞄に収納出来る持ち運びセットなんてのもあって……それがあれば災害時に困ることはほどなくなることだろう。


 ……まぁ、相応のお値段になってしまうという欠点はあるのだけども、普通のカセットコンロなら数千円で手に入るので、高くなりすぎるというのはかなりの悩みどころだ。


「あ、このセットかわい~~~。

 2万円かぁ~、ま、2万円ならなんとかなるかな」


 と、スマホを操作しながらフキちゃん。


 まさかまさかセットにたどり着き、そしてそんなことを言い出し、なんだかその場の勢いで買ってしまいそうな気配まで漂わせてきたフキちゃんに俺は、驚き目を丸くしながらも、


「ほ、本当に必要かどうか長森さんと相談してから決めると良いよ」


 と、そんな言葉を投げかけて制止する。


 するとフキちゃんは、


「それもそうか!」


 と、そう言ってスマホを操作し……どうやらギリギリの所で止めることが出来たようで、俺は思わず出てきた冷や汗を手で拭い、ほっと安堵のため息を吐き出すのだった。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ