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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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サバ節


「アジはふりかけて美味しくてサバは缶詰で美味しくて、魚の保存食も美味しいの多いんだねー……。

 あとなんだっけ、サバ節ってのがあるとかにーちゃん言ってたっけ?」


 ふりかけご飯をたっぷりと……それはもうたっぷりと食べてお腹をぷっくり膨らませたコン君が、居間で体を休めながらそんなことを言ってくる。


「そうだね、カツオ節のサババージョンなんだけど……カツオ節みたいに硬くするのもあれば、程々に柔らかくしてそれ自体を食べて楽しむやつもあるね。

 カツオ節やサバ節はようするに魚を燻製にしたものだから……柔らかい状態で食べるのもそれはそれで美味しいんだよねぇ。

 サバ節の場合はらっきょうとあえてみたり、玉ネギのスライスと混ぜ合わせてサラダにしたり、後はマヨネーズで食べるのも美味しいって聞くね、ポテトサラダにも入れるらしいから、マヨネーズとは好相性なのかもねぇ。

 まぁ、そこら辺になると酒のおつまみって感じになってくるんだけども」


「へー……サバの燻製かぁ、それなら普通に美味しそうだねぇ」


 俺の言葉にそう返したコン君はこちらをチラチラと見てくる。


 え? まだ食べるの? という気分になり、食べ過ぎではないかと心配になってしまうが……まぁ、コン君は食べたら食べた分だけ動く子だから、問題はないのかな。


 問題があればテチさんが止めるはずだし……と、テチさんの方を見やるとテチさんは、自分も食べたいと、そんな顔をこちらに向けてくる。


「いやまぁ、在庫はあるにはあるけど、興味半分で買った一切れしかないよ?

 そんなに量はないからね? OK?」


 と、俺がそう言うと皆がこくりと頷いてくれて……そういうことならと俺は台所に向かい、冷蔵庫の奥底から真空パックにされたサバ節を取り出す。


 これはそれなりに固くしたサバ節で……包丁で普通に切れるくらいの硬さとなっている。


 それを薄切りにしたなら、玉ネギも薄切りにし、ラッキョウをみじん切りにしてからオリーブオイルとレモン汁、それとコショウを混ぜて作ったドレッシングでサバ節と玉ネギの薄切りを軽く揉んで、サバ節サラダの完成となる。


「はい、出来たよ。

 すっぱめの味付けだけど、そこまではきつくないはず……気になるようなら言ってね」


 と、そう言ってちゃぶ台の上に乗せると、待ってましたとばかりに箸が伸びてきて、皆の口にサラダが運ばれモグモグと口が動き……そして皆がなんとも嬉しそうな顔となる。


「おー! これオレ好き!

 なんだろ、普通のサバ焼いたのより好きかも、なんでだろ、凄く美味しい!」


 そしてコン君がそうコメントすると、さよりちゃんがうんうんと頷き……テチさんも同意見のようだ。


「んん、あたしはいまいちかも? いや、おいしーんですけど、サバの味噌煮のが好きかなぁ。

 なんかこー……サバらしさがないっていうか」


 そしてフキちゃん。


 フキちゃんの言うサバらしさというのは……恐らくだけど脂分のことなのだろう。


 サバの味噌煮やサバ缶においては脂分が重要で、冬のサバ……マサバには脂分が多く、だから寒サバの缶詰は美味しく出来上がる。


 ……が、サバ節にする際には脂分は邪魔というか、しっかり熱を通して飛ばしてしまうものなので、あえて脂分の少ないサバ、ゴマサバと呼ばれるサバを使っているらしい。


 特に夏のゴマサバは脂分が少ないそうで、普通に食べたりすると今ひとつの味になってしまうのだけど、こうやってサバ節などの保存食にする分には悪くないという訳だ。


「サバが好きな人程、そういう感想になるみたいだね、どうしても脂分が足りないというか、サバらしさが足りないそうだから。

 でもその分旨味は強くなるし、しっかり仕上げたならカツオ節にも負けない美味しさになるそうだから、楽しみ方次第だと思うよ。

足りないと思う部分はドレッシングとかマヨネーズとか具材とかで足してやれば良いんじゃないかな。

 それこそポテトサラダとかフキちゃん好みに仕上がるかもね」


 夏のゴマサバもそのまま食べると今ひとつだけど、フライにすると脂分が足されて美味しくなるし、何事も工夫次第なのだろう。


 地方によってはサバカツを当たり前に食べていて、それを丼にしたりバーガーにしたりサンドイッチにしたりと、色々な楽しみ方をしていて、名物として推している所もあるそうだし……と、この辺りのことは皆には言わないようにしよう。


 言ったが最後、作れと言われるのは明白で……流石にここにサバの揚げ物追加は食べ過ぎにも程がある。


 養殖所のサバは脂分たっぷりで、あえて足す必要もないし……うん、秘密にしておこう。


「そっか、料理で足せば良いのか……うん、悪くないかな。

 サバ節サラダもまぁ悪くなかったし、お肉サラダも色々考えてみようかなー……。

 やっぱりさっぱり系かな? えーっと、実椋さん、都会だとどんなお肉サラダがあるの?」


 と、フキちゃんが言葉を続けてきて、俺は内心を押し込んでそれに言葉を返す。


「よく見かけるのはローストビーフ系のサラダかな? あとはローストポークとか豚しゃぶとか。

 チキンサラダも見かけるけど、あれは美味しさを求めてとかじゃなくて、ダイエットとかトレーニング目的のサラダだったから、あんまり参考にはならないかな」


「いや大事! そういうの大事!

 そっか、カロリー少ない鳥でダイエットサラダか、悪くないかも。

 ……味付けとかドレッシングに工夫いりそうだけどー……まぁ、うん、なんとかなるかな。

 んじゃー、牛と豚と鳥でサラダ考えておこ……ま、他にも色々お肉食べてもらうつもりだし、そういうの食べてもらったらカロリーいっぱいでダイエットも何もないけど、気分って大事だからね、うん」


「ああ、フキちゃんなら大丈夫だと思うけど一応。

 サラダって意外と食中毒の原因になることが多くて、仕事終わりに手洗いが不十分とか、生肉についているあれこれがサラダに付着しちゃってーとかがあるから十分気をつけてね。

 食堂に入る日は牧場や動物に近付かないとか、そのくらい神経質になっても良いくらいで……保健所の検査とかもしっかり受けるように。

 ……俺もテチさんが妊娠してからだけど、あれこれ検査したからねぇ、定期的に受けておくと良いと思うよ」


 と、俺がそう言うとフキちゃんは、真顔になってこくりと頷く。


 これから生業にしていく大好きな牧場で食中毒事件なんて起こしたくはないはずで……それから俺はフキちゃんに、具体的にどういった部分に気をつけたら良いかなどの話をしていくのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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