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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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ふりかけ


「そう言えばにーちゃん、アジってすごい美味しいけど、アジの缶詰ってないの?」


 サバ缶を食べ進める中、コン君がそんな事を言ってきて、俺は口の中のものを飲み下してから言葉を返す。


「あるにはあるんだけど、お高い上に販売量も少ないんだよねぇ。

 だから限定品になりがちで……あとは缶詰にするとそこまで美味しくならないのが問題なんだよねぇ」


「そうなの? あんなに美味しい魚なのに」


「うん……アジをサバとか他の魚みたいに缶詰にするとすっごく臭くなるんらしいんだよ。

 アジの成分がそうさせるとかで……臭くしないためにはその成分がたっぷり入った脂を抜かないといけないんだ。

 脂を抜いてから缶詰にするっていう作業のせいで余計な手間が必要な上、本来であれば美味しさの元である脂を捨てちゃうもんだから美味しさも激減してしまう。

 そこまでしてアジの缶詰を作るよりもサバやイワシ、ツナ缶とかを作った方が安く出来る上に需要もあるから、中々作られないんだよね。

 手間かかる関係で値段も高いしあんまり数も作れないしで……大衆魚の王様の意外な欠点ってやつになるね」


「あー……そっかぁ、そうなんだぁ。

 美味しくないんじゃ駄目じゃんねー……じゃぁじゃぁ、アジの保存食ってない感じなの?」


「いや? そんなことはないよ?

 アジと言えばの干物もれっきとした保存食だし、缶詰じゃなくてオイル漬けとかなら問題なく作れるからねぇ。

 まぁ、オイル漬けよりも干物の方が需要があるから、だいたい干物になっちゃっているけどね。

 あと南蛮漬けだって、そこまで保たないとはいえ保存食ではあるし……アジふりかけなんてのも中々美味しくて悪くないんだよ」


「ふりかけ? アジのふりかけ? え、なにそれ美味しそう!」


 と、そう言ってコン君は期待に満ちた視線をこちらに向けてくる。


 そうして今すぐに食べたいと、そんな表情をした上で今たっぷり食べたばかりだというのにお腹を「ぐ~」と鳴らしてきて……俺はその顔に負けて立ち上がり、冷蔵庫の確認をする。


「……んん、アジもあるしサバもある……じゃぁアジふりかけとサバふりかけ作ってみようか。

 と、言っても作り方は簡単なんだけどね……すぐに出来ると思うよ」


 と、そう言ってから俺はまずは揚げ鍋の用意をする。


 たっぷりの油を入れてコンロで熱しておいたなら、冷蔵庫からアジとサバを取り出す。


 あの養殖所で買ったものなので下処理は出来ていて、今すぐにでも食べられる状態で……それらをいつでも鍋に入れられるように準備したなら、フライパンの用意をする。


 フライパンも熱し、醤油とみりんを入れて軽く熱して、それからたっぷりの鰹節を投入し、鰹節にしょうゆみりんタレを絡めていく。


「これは出汁取りを終えたガラ節でも問題なくて、更に言うなら鰹節以外のものを入れてもOKだよ。

 たとえば細かく切ったゴーヤ、これを入れると苦みと歯ごたえ追加ができるね、他にもニンジン、大根の葉っぱ、かぼちゃとかを細かく刻んだものでも良いし、昆布やほうれん草、アスパラガスとかでも問題ない。

 今回は……ニンジンと昆布を刻んだものにしておこうか」


 と、そんな説明をしながらニンジンと昆布を取り出し、それぞれ下処理をした上で細かく……本当に細かく刻んでいく。


「へぇーー、色々野菜いれるんだねぇ。

 オレ、ゴーヤは正直苦手だけど、ゴーヤのふりかけがどんな感じなのかは興味あるかも」


「自分で作る野菜ふりかけも美味しそうでいいですね」


 するとコン君とさよりちゃんがそう返してきて、俺は、


「なら今度そっちも作ってあげるよ」


 と、返しながら刻んだものをフライパンに投入してタレに絡めていく。

 

 そうこうしていると揚げ鍋の油が良い温度になってきたので、素揚げ状態でアジとサバを投入する。


 揚げ具合はカリッカリになるまで、とにかく徹底的にしっかりと揚げて長期保存が可能な状態に仕上げていく。


「アジとサバをしっかり挙げたなら油を軽く切った上ですり鉢で粉々にしていく。

 今回はアジとサバが混ざらないよう別のすり鉢を用意してやるけど、一緒にしてしまってアジサバふりかけにしても美味しいかもしれないね。

 粉々に……本当にしっかり粉々にしたらフライパンに投入して、しっかりと絡めて炒めて……程よく水分がなくなったら完成だよ。

 あとは保存瓶に入れて冷蔵庫に入れておけば……結構保つんじゃないかな?

 これなら小さなアジとか少し鮮度が落ちたアジとかでも美味しく食べられるから、アジが変に余ったらふりかけにするのも良いかもね」


 と、そう言いながらフライパンを振ってしっかりと水分を飛ばしたなら、鍋で煮て消毒をした保存瓶に流し込む。


 それからしっかり蓋を閉じて……一応の保存食の完成という形を作ったなら、それをすぐに居間へと持っていく。


 何故そんなことをしたかと言えば、俺がふりかけを作っている間にテチさんとコン君達が居間での食事の準備を整えてしまったからだ。


 炊飯器とご飯茶碗と箸を持っていって、自主的にお茶の準備までして……ふりかけを存分に楽しむための状況を作り上げている。


 これで変に待たせたら何を言われるか分かったものではなく、ふりかけがたっぷり入った2つの瓶、アジふりかけ、サバふりかけの瓶を持っていくと、すぐさまテチさんとコン君達の手が伸び、ほかほかご飯を盛り付けた茶碗にふりかけがドサッとふりかけられる。


 そうしてすぐさま箸が伸び、出来立てふりかけとほかほかご飯が口の中に運ばれ……カツオ節とアジの旨味たっぷりのふりかけの味に負けてか、はらぺこじゃないはずの獣人達の食欲が爆発する。


 まぁー……あの養殖所の魚を使えばそうなるよね、普通に食べても美味しいんだし。


 結構な腹具合ながら俺も少しは食べてみたいと居間に向かい、自分のご飯茶碗と箸を手に取り、それなりの量のご飯を盛り付け、ふりかけをさっと振って食べてみると……うん、美味しい。


 旨味はもちろん、醤油とみりんの塩梅が良い具合で、それでいて歯ごたえもあって食べるのが美味しいし楽しい。


 これとご飯だけでも満足出来るし、いくらでも食べられるし、さわやか目なおかずと合わせたなら更に食が進むことだろう。


「いやぁ、これは思っていたより美味しく出来たねぇ」


 なんてコメントをするがそれに反応が帰ってくることはなく、テチさん達はただただ夢中でご飯を食べ進める。


 結構な量あったはずのご飯は全滅目前となっていて、俺は無言で立ち上がり台所に向かい、予備の炊飯ジャーでもってご飯を炊き始めるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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