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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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ブリスケット実食


 夕方になって、まずはプルドポークが焼き上がる。


 温度計を刺してチェック……問題なし、温度計を刺した際の感触も問題なし。


 ならばとグリルから取り出すために料理用手袋をし、熱いのを我慢して肉を掴み上げ、用意しておいたキャンプ用テーブルの上に置いた、トレーの上に焼き上がった肉をどんと置いたら、冷ますことなく一気にほぐす。


 長時間じっくり焼いたことにより肉がホロホロに仕上がっていて、あっという間に崩れていって……崩しながら外側の、焦げ目のついたスパイスソースを肉全体に馴染ませていく。


 馴染んだら完成、すぐさまサンド用のパンを用意し、バターを塗ってレタスとピクルス、それとトマトとプルドポークをたっぷり挟んだら、プルドポークサンドの完成。


「一品目、出来たよー!」


 サンドが崩れないように丁寧に皿の上に乗せて飾り付けてから、そんな声を上げると流石に待ちきれずに居間で休憩していたコン君達が飛び出してくる。


「もうずっと良い匂いで待ちきれなかったよ!」


「わぁ、なんだかおしゃれなサンドイッチが」


「おお、肉たっぷりで良いサンドイッチだなぁ」


「わ、ほんとだ、こんな感じになるんスねー!」


 コン君、さよりちゃん、テチさん、そしてフキちゃん。


 自分の所のお肉がどうなるのか気になって遊びに来たとのことで……まぁ、うん、お肉はかなりサービスしてもらったみたいだし、文句はない。


「ブリスケットももう少しで出来上がるだろうから、まずはこのサンドを食べていてよ。

 すでに焼き上がったスペアリブは全滅したみたいで、お腹それなりに膨れているだろうから……うん、これだけのプルドポークがあればしばらくは平気だよね?」


 と、俺が言葉を返すと、焼き上がりを待つ間に出来上がったスペアリブを全滅させたテチさん達は、何も言わずに全員で一斉に同じようなにっこり顔を浮かべてから、サンドイッチへと手を伸ばす。


 あ、これは駄目だなと俺も手袋を外してから手を伸ばし、なんとか一つ確保する。


 そして食べると……うん、美味しい。


 スパイシーなのはもちろん、お肉がほろほろ柔らかくてジューシーで……失敗するとパサパサ肉になるらしいけど、どうにかパサパサは避けられたようだ。


 お肉自体の旨味も肉汁から感じられるけど、何よりスパイスとソースの味が強く、濃いめの味がパンとよく合って……うぅん、時間をかけただけのことはあるなぁ。


 いやまぁ、これだけ良いお肉なんだからトンテキのが味わえたのかもしれないけど……この柔らかさとジューシーさは良い肉だからこそなんだろうし、うん、悪くないと思う。


 テチさん達にもウケたようで、結構な量あったはずのサンドイッチはあっという間に全滅。


 二個目の肉塊……念の為いくつか作っておいた別のプルドポークもほぐした先から手が伸びてくる……が、流石に単体では味が濃すぎたのか、さっき程の勢いはない。


 そういうことならといくつかの料理を用意する。


 まずはサラダ、タマネギメインで水菜などでサラダを作って、輪切りトマトにプルドポーク。


 それらをレタスで包んで食べれば美味しく食べられるし……シンプルなプルドポーク丼も悪くない。


 プルドポーク乗せて生卵乗せてかき混ぜて食べる。


 醤油ベースの味付けにしたものは特に丼向きで……ホロホロ具合も食べやすく、たまらない組み合わせとなる。


 そうやって調理をするとテチさん達はまた食欲を取り戻し……どんどん食べていく。


 サンドや丼じゃなくてバーガーにしても美味しくて、てりやき風な味付けにしても美味しくて……うん、豚肉でも十分楽しめる食べ方だなぁ。


 ではそれが牛肉だとどうなるか……温度計のチェックをやった上でブリスケットをテーブルの上のまな板まで移動させ……こっちはほぐすのではなく、大きめの包丁でもって丁寧に切り身にしていく。


 半生くらいにすることもあるらしいブリスケットだけども、今回はしっかり中まで火を通していて……赤みはないけども肉汁は出てきて、うん、こちらもパサパサにはなっていないようだ。


 ホロホロにはなっていないが柔らかく、とにかく崩したり潰したりしないように切り分けたなら、それを皿に盛り付け、付け合せの野菜……マッシュポテトと炒めたブロッコリーとタマネギを盛り付けたなら完成。


「ブリスケットは牛肉の美味しさを楽しむものだからサンドとかしないで普通に食べようか。

 いや、多分サンドやバーガーにしても美味しいんだろうけどね、流石にいきなりそれは勿体ないからね」


 と、俺がそう言うと皆は頷いてくれて、それぞれ皿を取って割り箸でもって口に運ぶ。


 柔らかくジューシーな牛肉……しっかり火が通っているのにこの柔らかさは衝撃的だ。


 スパイスはもちろん効いているんだけど、プルドポークと違って混ぜなかったからか、牛肉の味もしっかり感じられて……いや、これは牛肉の質が良いからなのかもしれないなぁ。


 外側はしっかり焼かれていて、だからこそ旨味が中で凝縮されている感じがあって、なんと言ったら良いのか、牛肉をぐっと押し固めたというか旨味と味を濃くしたというか、そんな味がする。


「うお……思っていた以上に美味しいなぁ、牛肉って感じがする」


 と、俺が何のひねりもないコメントをするとテチさんがそれに続く。


「なるほど……時間をかけただけはあるな、外側が味が濃い焼き肉って感じだが、内側はすごーく美味しいウェルダンステーキって感じだなぁ。

 いや、ステーキではこの味はでないのか……? うぅん、なるほど、これがブリスケットか」


 そしてフキちゃん。


「なーるほどー、こーなるんだ。

 これは商売で扱うにはちょっと難しいかなぁ……あ、缶詰のコンビーフってこれを目指したんじゃない?

 多分これを簡単に再現しようとしたのがコンビーフだと思う、コンビーフの味の先にある味っていうか……そんな感じがする!」


 コン君とさよりちゃんは夢中でブリスケットに向き合っていて特にコメントはない。


 まぁ、それだけ美味しいってことなんだろうなぁ。


 そしてコンビーフか……その発想はなかったけど、肉に詳しいフキちゃんが言うならそうなのかもしれないなぁ。


「まー……缶詰でこれを再現は無茶があるよねぇ。

 何をしてもたどり着けない境地っていうか……そしてうん、美味しいは美味しいけど手間に合うかっていうとなんともだなぁ。

 本当にパーティ用、皆でワイワイ楽しみながら作って食べるのなら良いのかもねぇ」


 と、そう言ってから俺は次のグリルへと手を伸ばす。


 そして新しいブリスケットのカットを始めると、テチさんとコン君、さよりちゃんとフキちゃんが物凄い勢いでお皿を持ってこっちに来て……凄く良い顔でこちらを見てくる。


 まぁ、その顔が見れたのなら頑張った価値はあったのかもしれないなぁと、そんなことを考えながら俺はブリスケットのカットと配膳をしていくのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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