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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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お肉の食べ方



 約9万5千円分のお肉は、それはもうすごい量だった。


 ……と、言っても常識から外れたような量ではなく、段ボール3箱か4箱か……ギリギリ車で運べないこともないくらいだった。


 豚、牛、鳥、それぞれ良い所をしっかりカットしてくれて、食べやすいようにもしてくれながら、俺がある料理をしてみたいと呟いたことで大きめにカットしてある部位もある。


 それらの肉は布製の保冷バッグに入っていて……保冷バッグも料金のうちのようだ。


 そのバッグにはしっかりと牧場のロゴが入っていて……わざわざ特注で作るとは、中々の気合の入れようだなぁ。


 まぁ、この獣ヶ森で肉を卸していれば需要は物凄いんだろうし、こういったバッグを作るくらいの余裕はあるのかもしれないなぁ。


 支払いを済ませたなら、それらのバッグを車に乗せて、早速帰る……前にスーパーで色々購入して肉料理の準備を終える。


 その帰り道。


 テチさんを乗せている以上、絶対に事故る訳にはいかないぞという超安全運転をしていると、助手席のテチさんが声をかけてくる。


「で? どんな料理にするんだ?」


「あー、バーベキューにしようかなって」


「ああ、以前もやったな……あれは中々美味しかった」


「えっと、以前のバーベキューは日本式っていうか、焼き肉の延長線上だったじゃない?

 そうじゃなくて本場式……じっくり時間と手間暇かけて美味しい肉料理を作り出す、バーベキューをやってみようかなって」


 と、俺とテチさんがそんな会話をしていると、後部座席のキッズシートに腰掛けたコン君が身を乗り出しながら、


「それどんな料理!? 美味しいの!?」


 なんて声を上げてくる。


「ええっと……良い炭つかって燻製用チップも使って、バーベキューグリルでじっくり……本当にじっくりお肉を焼くんだよ。

 焼きに6時間とかかけて、それから一晩寝かせて食べるとか、そんな感じで……そうすると柔らかくてジューシーで、ソースやスパイスがしっかり染み付いたお肉が出来上がるんだよ。

 それをそのまま食べても良いし、サンドイッチやバーガーにしても良いし……そこから更にピザにしたりする人もいるね」


「おお~~~、なんか凄そう!」

「美味しそうですねぇ」


「ああ、話を聞いているだけで食欲が湧いてくるな」


 俺の言葉にコン君とさよりちゃん、そしてテチさんが声を返してきて……ちょうどそのタイミングで我が家に到着したので、お肉を倉庫の冷蔵庫に移動させながら話を続けていく。


「たとえばブリスケット。

 牛の肩バラ肉にマスタードを塗り込んで、スパイスで肉全体を覆って……スパイスが馴染んだらグリルで燻製にしながら熱を入れていく。

 熱くなりすぎないよう注意しながらじっくりじっくり加熱して、途中モップソースを塗って味と水分を足して……それを焼き上がるまで何度も繰り返していく感じだね。

 ……ちなみにモップソースっていうのはモップ……ハケで塗るソースのことだけど、霧吹きとかで全体にかけちゃう人もいるね。

 リンゴ酢をメインにしてケチャップ、砂糖や塩、唐辛子粉なんかを混ぜて更にそこにタマネギなんかの香味野菜を入れて、いい感じに香り成分が染み出したら、それを塗るって感じかな」


 俺がそんな話をすると、3人から声ではなく「ぐぅ~」というお腹の音での返事が来る。


「あとはプルドポーク。

 豚の肩ロース肉を、大体同じ感じで焼き上げて……それから熱い状態のまま一気に手でほぐした肉のことだね。

 柔らかくホロホロに仕上がるから、手で簡単にほぐせて、ほぐしながら表面のソースやスパイスを肉全体に馴染ませて、それをさっき言ったようにバーガーとかの具材にする。

 スペアリブもほぼ一緒で、骨付きバラ肉を使ったらスペアリブになるね。

 とりあえずブリスケット、プルドポーク、スペアリブを作ろうと考えていて……今日スパイスを馴染ませて明日朝早くに焼き始めて、完成は夕方くらいになるかなぁ」


 今度は「ぶぅ~」という不満の声が返ってくる。

 

 散々お肉を見てお肉の話をされて、明日まで待てというのは少し酷だったようだ。


「もちろん今日もお肉料理にするから安心してよ。

 シャトーブリアンとかは変に料理するよりもシンプルに焼くだけが美味しいお肉だからね……これからステーキを焼いて、たっぷり焼いて、皆が満足するかステーキ用のお肉がなくなるまではステーキ祭りだよ。

 こっちはフキちゃん達が焼くだけで良いとこまで処理してくれたから、すぐにでも料理出来るよ。

 味付けは塩コショウでシンプルに、溶岩プレートでじっくり加熱して、やわらかーく仕上げたいね」


 今回は何も返ってこない。


 ただ無言で黙々と作業を始めて、少しでも早くステーキを食べようと頑張り始める。


 テチさんは頑張らずに居間でゆっくりしていて欲しいのだけど……まぁ、全く動かないのも問題らしいから、無理をしない範囲でなら良いということにしよう。


 そういう訳で片付けが終わったなら、まずは付け合せの野菜を用意する。


 ニンジンのグラッセ、ポテトサラダ、炒めタマネギにコーン。


 それとお肉だけではアレなので野菜多めのサラダも用意して……それからご飯を炊いて、肉を焼く準備をしていく。


 カセットコンロを居間のちゃぶ台の上に設置し、その上に溶岩プレートを置き、加熱を始め……その間にサラダやご飯、付け合せを盛り付けたステーキ皿などの配膳を済ませ、それから肉を用意して……皆がサラダを食べる間に、目の前でじっくり焼いていく。


 これなら焼き立てをすぐ食べられる、味付けも自分好みに自由自在。


 ちょっとだけバーベキュー気分も味わえるし、悪くないだろうと思っての試みは、上手くいったようで3人とも物凄い目をシャトーブリアンに向けてくる。


「テチさんがいるからお肉はじっくり焼くよ、半生やレアはまた今度だね。

 それでもこのお肉は十分美味しいはずだから……じっくりじっくり硬くならないように焼いて……焼き上がったら大雑把に切り分けてお皿に乗せるから、後は自分で好きなように切って味付けて食べてください。

 塩コショウは焼きながら振るからソースなしで食べても大丈夫だよ」


 俺のそんな説明が聞こえているのかいないのか、テチさん達は微動だにせずステーキを見つめ続け……焼き上がったのを3分割してそれぞれのお皿に乗せると、すぐさま箸が動き、一瞬でシャトーブリアンステーキがお皿から消える。


 うぅん……もうちょっと味わって欲しかったけども、まぁまだまだお肉はあるからそっちを楽しんでもらえば良いか。


 1枚食べて落ち着いたはずだし……と、そんな俺の考えは甘く、それからもテチさん達はステーキを瞬殺していく。


 ただお腹が空いているだけではない、お肉が美味しいからこその食欲爆発といった感じで……結局、今回買ったかなりの量のシャトーブリアンは綺麗さっぱりと食べ上げられてしまうのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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