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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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シイタケ料理


「にーちゃん、シイタケステーキってつまり焼くだけだよね? もっとこう、いつもみたいになんか凄い料理しないの?」


 シイタケの柄を落とし、それらを丁寧に並べていって……いつでもフライパンに入れられるようにと準備をしていると、コン君がそんなことを言ってくる。


「うーん……シイタケってこう、旨味と風味が凄くて、超主役にするか、超脇役にするかのどっちかなんだよね。

 主役にするならそのまま食べるのが一番で、脇役にするなら出汁を取るだけが一番で……他にもまぁ、薄切りにして煮物に入れたりもするけど、そこまで行くとシイタケ料理ではないからねぇ」


 と、俺が返すとコン君は、首を傾げながら言葉を続ける。


「そうなんだ? お出汁も煮物もよくうちで出るから分かるけどー……そっか、あんまり料理向きじゃないのかー」


「料理向きって訳じゃないんだけど……シンプルな料理が一番美味しいって感じかな。

 食感も旨味もそのままの状態で完成されていて、焼いて醤油を垂らす以上の料理法が中々ないんだよね。

 それでもあえて料理するなら、シイタケの柄を切ってから逆さまにして、傘の中にチーズとかひき肉を詰めて焼くって感じかな。

 チーズはその風味、肉はその味と食感でシイタケとは別方向の味を追加する感じだね」


「え、それめっちゃ美味しそうじゃん! にーちゃん、それ作ってよ! 食べたい!」

「あ、私も食べたいです」


 コン君だけでなくさよりちゃんもそう言ってきて……なら作るかと、冷蔵庫の中を確認する。


 チーズよし、ひき肉よし、これなら作れるなと頷いてから、シイタケをステーキ用、チーズ用、肉詰め用に分けていき……その途中、コン君が椅子から降りてきて、まな板の上のシイタケにぐっと鼻を近付けて、すんすんと鼻を鳴らす。


 それからゴクリと喉を鳴らし……それから目を輝かせながら口を開く。


「にーちゃん、そのままが美味しいならシイタケって生で食べても美味しいんじゃ?」


「あ、駄目だよ、生は駄目、シイタケに限らずキノコはどれでも生で食べちゃ駄目だよ。

 ほとんどの場合で食中毒起こすからね、しっかり火を通さないと本当に駄目だよ」


「え? え? あっ……駄目なんだ、キノコって全部毒ある感じ?」


「毒っていうか……まぁ、そんな感じになるのかな?

 毒キノコ以外の食べられるキノコって、あくまで火を通したら食べられるって話で、生でいけるとかじゃないからねぇ……。

 天然じゃなくて養殖……菌床栽培キノコは洗わなくても大丈夫なくらい安全性は高いんだけど、それでも生食は駄目だって言われているね。

 シイタケだけじゃなくて、エノキもナメタケもマツタケも本シメジも、しっかり火を通して食べるようにね」


「はーい」

「はーい」


 俺の言葉にコン君とさよりちゃんがそう返してきて……それに頷き返した俺は料理を進めていく。


 と、言ってもただ焼くだけなので、これといって言うことはない。


 ひき肉は塩コショウで味付けしたり、シイタケに軽く片栗粉を振ってから肉を詰めて、詰め終わった後にまた片栗粉を振ったりとひと手間あるけど、それにしたって難しい作業ではない。


 普通に焼いて、チーズを乗せて焼いて、肉を詰めて焼いて……焼き上がったシイタケを皿に盛り付けると、コン君達が居間へと運んでくれる。


 今日はとにかく量が多いので焼いて焼いて焼いて……肉厚なので干したりは難しいだろうし、とにかく焼いて食べることにする。


 そうやって調理を進めていると、畑に行っていたテチさんが帰ってきたらしく、玄関から洗面所から物音が聞こえてきて……その物音が居間へと移動し、そして台所へとやってくる。


「実椋! 今日は良い匂いしてるな! シイタケか? シイタケとチーズの匂いがこんなに良い匂いとは思わなかったな!」


 そして弾む声、かなり嬉しそうにしていて……どうやら今日のテチさんの嗅覚的にツボであったようだ。


 最近のテチさんは妊娠の影響か、嗅覚や味覚が不安定だ……今日食べられたものが明日には食べられなくなったりするが……どうやらシイタケと今日の嗅覚の相性は悪くないらしい。


 そして肉よりもチーズの方が良いようで……そういうことならとチーズシイタケを多めに作っていく。


 そんな俺の様子を見てテチさんは、冷蔵庫に入れておいたパンを取り出し始め……どうやらご飯よりもパンを食べたいらしい。


 チーズシイタケとパン……うん、まぁ、うん、悪い相性ではないはずだ。


 そうやってテチさんはパンとチーズシイタケの皿を居間へと持っていっての食事を始め……俺はコン君達の分のご飯や、今日もらった野菜などをただぶち込んだだけの味噌汁を盛り付けてから居間へと向かう。


 それからいただきますと声を上げ、箸を手に取りシイタケへと箸を伸ばし……皆が物凄い勢いでシイタケを食べる中、あくまで自分のペースでゆっくりとシイタケを食べていく。


 まずは普通に焼いただけのシイタケ、傘の裏に浮かんだ旨味の汁めがけて少しの醤油を垂らして食べると……うん、美味い。


 というか美味しすぎる。


 普通のシイタケより旨味が強く、それでいて臭みは少なめ、歯ごたえがよく、本当にステーキのように楽しめて……いくらでも噛んでいられる。


 御衣縫さんのところの野菜は特別美味しいものだけど、それにしたって美味しい。


 ……豊作の影響で味まで良くなっているのだろうか?


 それとも豊作を起こした何かが味を良くしている?


 そうなると……と、味噌汁を飲んでみると、うん、めちゃくちゃに出汁が出ている。


 タケノコはまだアク取り中で、使ったのは小さなソラマメとニンジン、それと以前もらったキャベツなどなのだけど、高級な出汁パックを入れたよりも美味しくなっている……気がする。


 うぅん……どうやら御衣縫さんの畑に何かが起きているらしい。


 それとも獣ヶ森の畑全部に何かが起きているのだろうか?


 ……と、そんなことを考えていると、大きなお皿に盛り付けたシイタケがどんどんなくなっていって、俺は慌ててチーズシイタケと肉詰めシイタケを一つずつ確保する。


 それから食べてみると……チーズも肉詰めもやっぱり美味しくて、あまりの旨味で満足感が広がり……大満足の一食となるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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