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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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魚フライ


 釣り堀で処理してもらったので調理は簡単、下ろしてある魚を切り分けたら刺し身、それを薬味と一緒に叩いたらなめろう。


 衣をつけて揚げたならフライで……まずは刺し身、そしてなめろうを作ったなら、それらを配膳してからフライに取り掛かる。


 フライはとにかく出来立てが美味しい、揚げたて直後が一番美味しい、だから出来たらすぐに食べられる状況を作るのが大事で……お皿を用意し、キャベツの千切りを用意し、中濃のソースを用意してレモンも切って用意して……それから一気に揚げていく。


 適温でしっかり揚げたら、皿の上にキッチンペーパーを敷いて……その上に魚焼き器の網を置いて、網の上に揚げたてフライを並べていく。


 キッチンペーパーに直接揚げ物を置いても良いのだけど、網の上に置いた方が油がよく切れてサクサクに仕上がってくれるので、いつも網を使うようにしている。


 その状態にしたなら皿ごと居間へと持っていき……ちゃぶ台の上にどんと置いて、後はそれぞれ自分が食べる分を、キャベツを敷き詰めレモンを置いたお皿に乗せて食べてもらうという形を取る。


 そうすることで出来るだけ揚げ立てを食べてもらうことができ……俺が配膳している間に、コン君達とテチさんが、お茶やご飯などの配膳を進めてくれて、フライを置いた時点で準備万端。


 俺は台所でさっとエプロンを外し、椅子にかけてから居間に足早に戻り……いつもの席に腰を下ろして手を合わせる。


『いただきます!』


 皆でそう声を上げたなら箸を手に取り、ついでにソースの容器を手に取り、多すぎない程度にフライにかけてから一気に食べる。


 熱いのは覚悟の上、少しでも冷めればその分だけ味が落ちる……噛んだ瞬間、じゅわっと衣の中から旨味いっぱいの汁が出てきて、一切臭みのない、一気に唾液で溢れかえる旨味の汁で口の中がいっぱいになる。


 これが魚のフライの本当の美味しさ。


 冷めても美味しいし、惣菜屋などで買っても楽しめるのは分かっているけども、釣りたて揚げ立てに勝るものはない。


 特にアジ、名前の通り味が良いこの魚の旨味は本当に別格で……アジフライという料理が生まれた理由がはっきりと分かる。


 コン君もさよりちゃんも、テチさんも無言、フライをかじった状態でしばし硬直し……そして一気に食べ、次のフライへと箸を伸ばす。


 濃すぎるくらいの魚の旨味を、これまた旨味たっぷりのソースが上手い具合に調整してくれて、サクサク衣の活躍もあって、凄い完成度になっている。


 いや、これは養殖魚が美味しいっていうのもあるんだろう。


 餌をたっぷりもらって、病気や外敵知らずでゆったり育って……だからこそ栄養がたっぷり蓄えられていて、天然とはまた違った美味しさが出来上がっている。


 もちろんアジ以外の魚も美味しい、サバもイワシも、普段食べない魚も全部美味しい。


 途中キャベツを食べて、レモン汁をかけたりして、そして旨味いっぱいのフライとご飯を一緒に食べて……存分にフライを楽しんだら、刺し身やなめろうにも手を出す。


 本当なら刺し身となめろうを食べてからフライのが良かったんだろうなぁ……味の濃さ的に、その方が良かったに違いない……けど、刺し身もなめろうもフライの後でもしっかり美味しい。


 しっかり管理された養殖魚だからとテチさんも安心して食べることが出来て、それが嬉しいのか、どんどん箸が進んでいるようで……うん、念のためにと用意しておいた炊飯ジャー3個分のご飯が一気に消えていく。


 いやぁ……美味しいおかずを作った時のお米の消費量、本当にエグいなぁ。


 スーパーに定期配達を頼んでいるけど、それでも追いつかない消費量で……コン君とさよりちゃんは日々成長して食事量が増えていて、テチさんは妊娠で食事量が増えていて……俺もまぁ体を鍛え始めたのもあって少し増えていて、とんでもないことになっているなぁ。


 子供が生まれたらもっとお金がかかるのだろうし……うん、食費に関しては今から覚悟を決めておいた方が良いのかもしれない。


 覚悟を決めた上でもっともっとお金を稼がなければ。


 今は猟をしなくなったけど、お肉の加工も色々出来るようになったのだからそっちをもっとやったりとか……クリやクルミの加工品を作ってみたりするとか、色々考えてみるのも良いかもしれない。


 あとは……コン君のように動画で……というのはあまりよくないかな。


 花応院さん達に迷惑をかけてもアレだし……いや、それでも相談くらいはしてみても良いのかもしれない。


 獣ヶ森の人々を写すのではなく、景色や名所を写すでも良いし、それこそ釣り堀のようなレジャー施設を紹介するでも良いだろう。


 ……うん、後で相談もしておこう。


 なんてことを考えている間に用意した食料は全滅、全てを食べ上げたコン君達がようやく声を上げる。


「っは~~~、美味しかった! 新鮮な海の魚ってほんっとうに美味しいんだね!

 こんなに美味しいのは初めてかも! かーちゃんのフライはソースかけないやつだから、そこも新鮮だった!」


「うちも魚とか衣とかに下味つけるフライですね、お父さんは辛くするのも好きみたいです」


「私の実家はソースだったな、実椋が使っているのよりは薄いやつだが」


 コン君、さよりちゃん、テチさんの順にそう言って……家庭によって色々あるものなんだなぁ。


 まぁ、醤油とかで食べる人もいるし、タルタルソースじゃなきゃ嫌だって人もいるし……人それぞれなのかもしれない。


 しかし俺はやっぱり中濃なソースだ、特に新鮮な魚のフライはこれが良い。


 ……ソース、ソースかぁ、こだわる人はこれも作ったりするのだろうけど……うん、流石にそこまでは止めておこう。


 キリがないし、凄まじく難しいし……洗練されている市販品に勝てるようになるまで何年かかるか分かったもんじゃない。


「うちはやっぱりこの中濃なソースだねぇ、フライはなんでもこれ。

 エビもカキもなんでもこれ、とんかつもこれだし……面倒だからってお好み焼きとかたこ焼きもこれだったな。

 ひどい時はオムライスもこれで……まぁ、美味しかったから良いんだけどさ。

 なにげに保存も効くから便利に使っちゃうんだよねぇ」


 そう言葉を返すと、それをきっかけにソース談義が始まり……それから俺達は膨れたお腹が落ち着くまでの間、あれこれとソースについて語り合うのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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