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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十一章

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干物料理


 調理が済んだなら、昨日のうちに仕上げておいた干物を一つ、魚焼き器に投入する。


 それからじっくりと焼いて……十分に火が通った所で取り出し、身をほぐし、3人分に分けての試食をする。


 うん、美味しい、普通に美味しい。

 養殖魚センターでたっぷり餌をもらっているからか、脂分もたっぷりで旨味もあって、普通に美味しい干物の出来上がりだ。


「おいしー! いつもの干物だ!」

「うん、美味しいです」


 と、コン君とさよりちゃん。


 2人とも普通に美味しいといった反応で……まぁ、そうなるよね。

 

 干物に関しては使う塩分も大体決まっているし、あれこれ味を付け足すものではないから、大体決まった味になってしまう。


 もちろん魚を丁寧に下処理するとか、俺も知らない技法での下処理をするとか、プロにしか分からないような手法もあるのかもしれないけども、素人の冷蔵庫干しならこれが限界だろう。


 太陽に干せば、良い風が吹く場所で干せばなどなどもあるけども、そこら辺は季節の関係もあるからなぁ。


 むしろピチッとするシートのおかげで、素人にしてはかなり良い出来になっているとも言えて……ここから更に美味しくしようと思ったなら、干物を使った料理で美味しくしていくべきなのだろうなぁ。


「と、いう訳で干物を使った料理も作ってみよう」


 そんな声を上げるとコン君達は、何がどういう訳? と、疑問を表情に出すが、すぐに美味しい料理が食べられるのならどうでも良いかと切り替え……目の前の干物をシュババッと食べ尽くしてから、いつもの椅子に移動する。


「まずは味噌とすりゴマを合わせて混ぜて……よく混ざったらこれを一旦トースターで焼く。

 焼く理由は香ばしさを出すためで……軽く焼色がついたらOKだよ。

 それから絹豆腐を手で崩して、キュウリを輪切り、ネギとミョウガを刻んだら具材は完成。

 あとはだし汁を用意して、鍋に入れて……火にかけたらゴマ味噌を投下、丁寧に混ぜていって……しっかり混ざったら火を止めてボウルに移す。

 そのボウルより大きいボウルに氷水を入れて、氷水の上にだし汁入りボウルを乗せて、かき混ぜることでよく冷やし……冷やしながら豆腐とキュウリを入れて更に混ぜる。

 そしたらアジ干物を魚焼きグリルでよく焼いて……身をほぐしたら冷やした汁に混ぜて

それをどんぶりご飯にかけて、ネギとミョウガをふりかけたら完成だね」


 なんて解説をしながら作業を進めていき……アジ干物の冷や汁丼を完成させる。


 干物とキュウリの相性は中々よく、他にもサバとキュウリを甘酢で揉んでの酢の物とか、干物キュウリと大根下ろしを混ぜたものを醤油タレでさっぱり楽しむとか、色々な楽しみ方があり……その中でも一番美味しいと思うものがこれだ。


 これからどんどん気温が上がり、暑い日も出てくる。


 汗をかいた後にこの冷や汁丼を食べるのは最高で……そんな冷や汁丼を作ったなら居間へと持っていく。


 その間にコン君達は器用に冷蔵庫から麦茶のポットを取り出し、3人分の麦茶を用意してくれて、ちゃぶ台の上に並べてくれる。


 配膳が終わったなら全員で席について「いただきます」と挨拶したなら、箸を手に取り冷や汁丼を口の中に送り込む。


 さっぱりとしていて、だし汁とアジ干物の旨味がしっかりあってあまり良くないことだけど、噛まずに飲みたくなる程、旨味が強烈で……ゴマと味噌の相性も良い。


 ミョウガなど薬味のおかげで爽やかでもあり、良い食感も足してくれて飽きがこない。


「うぅん、今日のは中々美味しく出来たなぁ……アジが良いからかな?」


 と、俺がそんな声を上げると、コン君とさよりちゃんはモグモグモグっと口を動かし、口の中の冷や汁丼を飲み下してから声を返してくる。


「これ好き! 干物飽きたときこれ食いたい!」


「私も好きです、とっても爽やかで……ミョウガも好きなのですごく美味しいです!」


 和食党の家のコン君としては干物は食べ飽きるくらいに干物を食べているようだけど、それでも好きと言ってくれるくらいには気に入ってくれたようで……さよりちゃんはそんなコン君よりも、力と気持ちのこもった声を上げていて、いつになく気に入ってくれたようだ。


 それからは三人何も言わずに冷や汁丼を食べ進め……しっかり噛んでから飲み下し、麦茶を飲んで一息つき……それから口を開く。


「は~~、美味しかった。

 干物料理は他にも、炊き込みご飯やおにぎり、味噌汁に入れたりもするし、ちらし寿司とか、サラダとか……アクアパッツァにするのも美味しいらしいね。

 アクアパッツァは普通の魚でやっても美味しい料理だけど、そこに更に旨味を足せるんだとか。

 あとは風変わりなところでサンドイッチかな? 炒めた野菜とほぐした干物をサンドすると、中々美味しくなってくれるらしいよ」


 するとコン君達は、今食べたばかりだというのに、早速それらの料理を食べてみたいとそんな顔をし始め……俺は苦笑してから言葉を続ける。


「これから作るとなると、炊き込みご飯かサンドイッチになるかな?

 ……炊き込みご飯なら夜にテチさんにも食べてもらえるし、やるとしたら炊き込みご飯になるかもね。

 ちなみにアジ干物だけで炊き込みご飯にしても良いんだけど、細ネギやショウガと一緒に炊き込みご飯にしても美味しいんだ。

 もう少し温かくなって6月過ぎると新生姜が出てきて、それと一緒に……というのも悪くないねぇ。

 まぁ今日は普通のショウガを使うことになるけど、それでも良いかな?」


 と、俺がそう言うとコン君達は力いっぱいにうんうんと頷いてくれる。


 そういう訳で俺達はまず歯を磨くべく洗面所に向かった。


 そこで丁寧に磨いたら食器やらを片付け……それから炊き込みご飯の準備に入る。


 味付けはシンプルに醤油とお酒だけ、あとはアジの旨味とショウガの爽やかさがなんとかしてくれる。


 アジの干物からは骨と皮を丁寧に取り除き、余計な雑味を増やさないようにし……後は普通の炊き込みご飯と変わらない手順だ。


 お米はしっかり浸漬、研ぎすぎず程々にし、あとは炊飯ジャー任せ。


 炊きあがったらそのまま食べても良いんだけど、おろしショウガを乗せると更に美味しく楽しめるので、と用意をしていると、家の外からダダダッと誰かが駆けてくる足音が聞こえてきて……俺達がまさかという顔をしていると、実家に帰っていたはずのテチさんが家に駆け込んでくる。


 真っ直ぐに洗面所に向かい、手洗いうがいを済ませたら自室に向かい、そこで着替えをしてから居間へとやってきて……そして早くご飯を食べさせろと、そんな表情を居間からこちらに送ってくる。


 ……帰宅途中、炊き込みご飯の匂いを嗅ぎつけたから駆けてきたのだろうか……いや、妊婦さんがそんな風にして走って欲しくないのだけど……。


 なんてことを言いたくはなったけど何も言わず、コン君達に手伝ってもらいながら盛り付けやらを終えた俺は、テチさんのお腹を満たすため、大盛り炊き込みごはんを居間へと持っていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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