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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第十章

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神林さん


 レイさんが連絡してくれた人……詳細は到着してからのお楽しみとのことで、教えてもらえていない謎の人物は明日こちらに来てくれるらしい。


 もう良い時間でもあるし、そういうことなら家事修行や話の続きは明日で良いかということになって……車で送ろうと準備していると、テチさんから待ったがかかった。


「もう遅い時間だし、フキにはこのまま泊まってもらうことにしよう。

 自分で綺麗にした家で一日過ごせば、達成感を味わうことも出来るはずだ」


 そんなことを言ってテチさんはフキちゃんの宿泊準備を進め、フキちゃんはこれ以上家事をしなくて良いのなら何でも良いという態度で……ついでと言うか何と言うか、お泊りを羨ましがったコン君達も泊まっていくことになって、我が家は賑やかな夜を迎えることになった。


 レイさんもそんな賑やかさを羨ましがっていたけども、恋人が待っているからと帰っていった。


 俺とコン君は俺の部屋で、テチさん、さよりちゃん、フキちゃんはテチさんの部屋で。

 

 食事が終わったのなら入浴タイムとなり、それが終わったならさっさと寝ようとそれぞれの寝室に向かい……それから軽く遊んだり雑談したりして楽しんだ俺達はあっという間に眠りにつくことになり……翌日。


 目を覚ますなり、


「おはよー!!!」


 と、元気いっぱいなコン君の声を浴びた俺は、コン君に挨拶を返しながら身支度を済ませ……洗面所に向かったなら顔を洗い髭を剃り、髪もしっかり整え、それから洗面所を簡単に掃除し、台所、トイレを掃除をしていく。


 それらが終わったなら朝食の準備を開始し……それを見てか、居間で朝の情報番組を見ていたコン君が手伝いに来てくれる。


 その少し後にテチさんとさよりちゃんとフキちゃんが起きてきて……寝ぼけ眼で洗面所へと向かい、大人の女性の身支度が行われる。


 特にフキちゃんは服装も今風のをコーディネートしているし、髪もしっかりセットしているし、メイクだってくどくなりすぎない程度にしっかりとしていて……かなりの時間がかかることだろう。


 若い子らしいと言うか何と言うか……まぁ、薄化粧過ぎるテチさんが珍しいのであって、それが普通なんだろうなぁ。


 これから食事というタイミングでメイクというのもどうなんだろうと思うけども、人前……他人である俺の前に出るからには必要なのだろう。


 そんなこんなで朝食が出来上がり、配膳が終わる頃にテチさん達も居間へとやってきて……どうやらさよりちゃんもメイク……のような何かをフキちゃんにしてもらったようだ。


 頬の辺りの毛を赤く染め、ウィッグ? か何かを耳の辺りにつけて下げて髪の毛っぽくして、目元にもアイライン……と言って良いのか、どちらかと言うと歌舞伎の化粧なんかを思わせる模様も描かれている。


 あくまで顔の周囲の毛を染めたりしているだけなので化粧と言って良いのかは分からないけども、これはこれで獣人風の、獣人らしい化粧ということになるのだろうなぁ。


「……朝から結構家事してるんですね……あたしも手伝えば良かったかな」


 こたつに足を突っ込むなりフキちゃんがそんな事を言ってくれて……洗面所などを掃除したことに気付いてくれたことと、少しだけでも家事に前向きになってくれたことを嬉しく思い、笑顔で、


「じゃー朝食が終わったら、どんなことをしたのか、簡単に教えるよ」


 と、返す。


 するとフキちゃんは苦々しい顔をするが嫌とは言わず素直に頷き……それから皆で『いただきます!』と声を上げての朝食タイムとなる。


 朝食は至って普通……ご飯味噌汁、おひたしに魚、それとナッツヨーグルトというラインナップで、ごくごく簡単に用意出来るものばかりだ。


 そういった献立にした意図を察してくれたらしいフキちゃんは、こっちに半目を送りながら朝食をとり……朝食が終わったなら片付け、朝やった家事の説明、からの掃除洗濯などのいつもの家事をこなしていく。


 昨日は嫌々でほとんど動けていなかったフキちゃんだけども、今日はしっかり動けていて……積極的に働いてくれて、これならもう合格というか家事修行卒業でも良いのかもしれない。


 最初は面倒でもやり始めればなんだかんだとやれるようになって、楽になって……適度な手の抜き方を覚えるものだ、一度やってしまえれば……最初の面倒さを乗り越えられればなんとかなる……はずだ。


 なんてことを考えていると、車のエンジン音が聞こえてきて、ああ、いつもの配達車だなぁ、なんてことを考えているとレイさんがやってきて……それともう一人、レイさんが昨日話していた人なのか、リス獣人の女性……スーツ姿の女性がやってくる。


 色素が薄いというか透き通ったストレートの茶髪に、すらっとした体型。


 リスはリスなんだけども、尻尾を見る限りテチさん達のようなシマリス獣人ではないようで……エゾリスとかなのだろうか?


「どうもー、婚約絡みで困ってる人がいるって聞いてきた、神林かんばやしです。

 普段は中央で議員やってまーす!」


 その人は片手を腰に当て、片手で拳を握りながらそんなことを言ってきて……玄関で出迎えた俺とコン君は何と返したものかと硬直してしまう。


「え、えぇっと、とりあえず居間にどうぞ……」


 そしてどうにかそう声を上げると、レイさんと神林さんはなんとも軽い足取りで居間へと向かい……そして居間でも同じ挨拶を繰り返す。


 それを受けてテチさんとさよりちゃんは目を丸くし……フキちゃんは訳が分からないといった顔で硬直し、そんな一同を見てか神林さんが声を上げる。


「婚約絡みで悩んでるんでしょ? なら私が相談に乗るよー。

 だいじょーぶ、婚約を続けるにせよ破棄するにせよ、専業主婦になるにせよ共働きになるにせよ、一人でやっていくにせよ、力になれると思うからー。 

 どんなトラブルになっても議員の私がいればなんでも解決出来るし、フキちゃんはただ自分のやりたいことだけを……どうしたいのかだけを考えてごらん。

 そして私達にそれをぶちまけてごらん、間違えても失敗しても私がいればなーんの問題もないからネ!」


 それはなんと言うのか、権力のゴリ押しだった。


 こちらの議員という存在がどれくらいの権力を持っているのかは分からないけど……全く権力がないということはないのだろう。


 権力のある神林さんが後ろ盾になってくれるから好きにしなさい……好きに出来ると思って自分のやりたいことだけを、しがらみなんかを一切捨て去って考えてみなさいと、そうレイさんと神林さんは言いたいのだろう。


 そんなゴリ押しを真正面から食らうことになったフキちゃんは更に目を丸くしながらも、改めて真剣に……自分がどうしたいのかを考え始めるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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