表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第九章 いなり寿司、収穫、お餅に年取りのごちそう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

302/496

風変わりなオムレツ


 芥菜さんとあれこれ話した翌日、花応院さんが門の向こうからの荷物を持ってきてくれて……年末年始を見越して大量に買い込んだ通販の荷物の中に、母名義の荷物が紛れ込んでいることに気付く。


 クール便で荷物の宛先は俺ではなくテチさん、荷物の内容は『とかてちさん用食材』と書かれていて……どうやら妊婦のテチさんを気遣ってあれこれと送ってくれたらしい。


 花応院さんにお礼を言ってから荷物を家の中に運び込んでいると、いつものようにコン君とさよりちゃんが駆けてきて、挨拶もそこそこに出来る範囲での手伝いをしてくれる。


 そしてテチさんも検診から帰ってきて……大体の荷物の片付けを終えてから、テチさん用荷物の開封を始める。


「まぁ、中身の想像はつくんだけどね……散々お前を産んだ時にーとか聞かされてきたからさ」


 なんてことを言いながらガムテープを剥がしてダンボール箱を開くと、中には予想通りのものが入っていて……その一つを取り出したコン君は、その目をキラキラと輝かせながら、それをじぃっと見やる。


「おぉー……カキだ、カキ、オレあんま食べたことないんだよね」


「コン君、カキじゃなくてカキですよ、カキ」


 コン君がカキと……柿の発音でその名前を呼び、さよりちゃんがすぐに牡蠣の発音でもって訂正する。


 生牡蠣のパック詰め、殻付き加工品様々あり……とにかく牡蠣まみれの荷物となっている。


 なんでも母さんは俺を妊娠している時に、牡蠣を食べてつわりなんかを乗り越えたんだそうで……正直つわりを牡蠣でっていうのはレアケースだと思うのだけど、それでも確かな成功体験があるからか、こうして送ってきてしまったらしい。


「いやぁ、それにしても多いよなぁこれ……」


 その量はかなりのもので、俺がそんな声を上げると、同封されていた手紙を読んでいたテチさんが、そのうちの一枚を俺に見せてきて……そこに書かれた一文に俺は唖然とする。


『この後、冷凍便も送る予定なので冷凍庫の準備をしておいてください』


 それを見てふぅーーーと長いため息を吐き出した俺は、仕方ないかと覚悟を決めて、それぞれの消費期限を確かめながら声を上げる。


「じゃー……消費期限が短いのから食べていくとしようか。

 生食用もあるけど……流石にそれは怖いから、ちゃんと調理して食べることにしようか。

 牡蠣のアヒージョ、カキフライ、牡蠣燻製に……牡蠣オムレツ。

 テチさんはどれが良い?」


 俺がそう尋ねるとテチさんはしばらくの間考え込んでから……首を傾げながら言葉を返してくる。


「牡蠣のオムレツというのは、美味しいものなのか? なんとなく美味しそうだなとは思うんだが……?」


「あー……俺も本場のは食べたことないんだけど、海外の料理で野菜、小松菜や長ネギと一緒に卵に包んで、甘辛ソースでいただく感じだね。

 牡蠣の旨味たっぷりの卵とじって言ったら良いのかな……独特の味だけど、それがまたたまらないって言うか……美味しいことは保証するよ」


 俺がそう返すと直後、三人のゴクリという喉の音が聞こえてくる。


 そうなったらもう止まらないことを知っていた俺は、まずは荷物の牡蠣を台所なり倉庫なりの冷蔵庫にしっかりと保存し、それから必要な材料を各種揃えていく。


 それが終わったならエプロンを装着し手洗いをし、それからコン君とさよりちゃんがいつもの椅子に座り、テチさんが台所の椅子に座ったところで調理を開始する。


「まず大事なのは牡蠣をよく洗うこと、今回は殻付きのを使うから尚更しっかりと洗う必要があるね。

 実は牡蠣って見た目では分からないけど、結構な汚れがついていて……塩で揉んでから塩水に入れて指でこすってやると、結構な汚れが出てくるんだよ。

 パック入りのやつだと大体は洗ってあるんだけど……それでもたまにすごい汚れが出てくるのがあるから、やっておく方が良いだろうね」


 なんてことを言いながら牡蠣をまな板の上に並べて塩を振って軽く揉んで、それからボウルに塩水を入れて中で一つ一つ丁寧に洗っていく。


 すると段々と塩水が濁っていき、汚れが浮かんできて……それを見ていたコン君が何か言いたげな物凄い顔をこちらに向けてくる。


「うん……まぁ、気持ちは分かるよ、見た目では汚れているように見えないからね。

 牡蠣の食中毒って言うとノロウィルスが有名だけど、この汚れを落とさないとまた別の食中毒になることがあるから要注意だね。

 洗い終わったら軽く水で流して、キッチンペーパーで包んで水気を切る。

 これが終わったらまな板を一回綺麗に洗って……小松菜、長ネギ、ニンニクを適当なサイズに切っていく。

 切り終わったら水溶き片栗粉を作って……そうしたらソース作りかな」


 ソースに関してはそれぞれの好みの味にして良いと思う、市販のブルドックなソースでも良いと思うし、辛味のあるソースでも良いと思うし……ケチャップでも全然良いと思う。


 だけども今回はオリジナルでやることにして……砂糖、ケチャップ、オイスターソース、お酢、豆板醤を混ぜてソースを作る。


 辛くて甘くてちょっと酸っぱい、そんなソースが出来上がったら、塩入りの溶き卵を用意しておく。


 そうしたらフライパンに油をひいて、適当な大きさに切ったニンニクを弱火で炒めて香りを出して……十分に出したら牡蠣を投入し、強火で炒めていく。


 ある程度炒めたら水溶き片栗粉を回し入れて中火にし、小松菜と長ネギを入れて、蓋をして軽く蒸し焼き。


 小松菜がしなっとしたら、溶き卵を回し入れてまたも蒸し焼き、卵に火が通ったらフライパンを煽ってひっくり返して、両面に焼入れをつける。


「おぉー! さすがにーちゃん!」


「綺麗にひっくり返りましたね!」


 なんてコン君達の称賛の声を聞きながら、オムレツをお皿に盛り付け……さっき作ったソースを同じフライパンで軽く煮詰める。


 良い感じにとろみがついたらそれをオムレツにかけて完成。


 材料さえしっかり下拵えしておいたら作るのは簡単なので、同じように人数分のオムレツを仕上げていく。


 すると待ちきれないのかコン君達が手際よく配膳を始め……俺は慌ててレタスを千切ってきゅうりを輪切りにしてプチトマトを飾ってのサラダと、チキン出汁のワカメスープを用意する。


 それと炊きたてご飯でメニューは完成、配膳を手伝い……ついでにお茶も用意して、そうして俺達は居間のいつもの席に腰を下ろすのだった。


お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 牡蠣洗うのは知らんかった 牡蠣好きだけど、怖いから基本的に自宅では食べないので…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ