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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第九章 いなり寿司、収穫、お餅に年取りのごちそう

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アップルパイ、ポテト、てりやきバーガー


 三日後。


 注文しておいた果物や、レイさんに頼んで用意してもらったものが我が家に届き、CMでよく見るあのチェーン店のセットを再現する日がやってきた。


「と、言ってもまぁ、あくまで我流……完全再現は無理なんだけどね」


 なんてことを言いながら用意したものを台所のテーブルに並べていると、それらを眺めていたさよりちゃんが声をかけてくる。


「パイ生地は手作りなんですね? いつもの実椋さんなら市販のパイ生地を使うんじゃないです?」


「ああ、うん、普通のパイを作るならそれで良いんだけど、あのチェーンのアップルパイは独特だからね。

 自分で作って自分で厚さ調整したパイ生地のほうがそれっぽくなるんだよ。

 もちろん市販のパイ生地でも構わないし、餃子の皮を使ったりする人もいるね」


 俺がそう返すとさよりちゃんとコン君はふむふむと頷きながらメモを取り……そしてもう一人、何故か見学を申し出てきた、お店は定休日らしいレイさんが声をかけてくる。


「コーンスターチはいらないのか? 多分だけどとろみ付けに使ってるだろ」


「……いやまぁ、使っているかもしれないですけど、まんまレシピを真似る訳ではないですから。

 お店のはあくまで大量生産前提のレシピになっているんでしょうし」


「なるほどねー、ま、俺もアレは食ったことねぇからなぁ、今日は勉強させてもらうぞ」


 と、そんなことを言いながら椅子に腰掛け……だらっとした態度で視線を送ってくる。


 プロに見られながら作業をするのは、なんとも微妙な気分になるのだけど……まぁ、仕方ない。


 パイ生地にバンズに、レイさんには色々作ってもらったのだから、そのくらいは我慢すべきなのだろう。


「じゃ、じゃぁまずはアップルパイから作っていこうか。

 ついでにフライドポテトも揚げるつもりだからそっちも同時進行でやっていくよ。

 と、言ってもポテトは切って揚げるだけだから楽なんだけどね」


 と、そう言ってから俺はリンゴをいくつか取って洗い始める。


 リンゴは……そこまで高くないもので良いと思う。

 美味しいリンゴならそのまま食べたって良い訳だし……味付けにハチミツを使う予定なので、蜜入りリンゴなんてものは使わなくても良いだろう。


 むしろ甘さ控えめで酸味が強めくらいのほうが美味しくなるはずで……実は硬めでも良いのかもしれない。


「リンゴを洗って皮を向いたら適当に切っていくよ。

 大きさとしては……小さなサイコロサイズ、小指とかの先くらいかな。

 切ったら煮込んでいくんだけど……耐熱皿にいれてレンジで温めても良いかもしれないね。

 味付けはグラニュー糖、ハチミツ、レモン汁。

 それと香り付けにシナモンとバニラエッセンスと、恐らくだけどとろみ付けにコーンスターチとか片栗粉とか混ぜているんじゃないかな。

 まぁ、今回はとろみは煮込んで作るからなしで行くよ」


 なんてことを言いながら切り分けていき……それが終わったらホーロー鍋に入れてゆっくりと煮込んでいく。


 煮込みながらグラニュー糖とハチミツを加えていって、ある程度煮込んだら香り付けにシナモンとバニラエッセンス、そしてレモン汁を加えて……そこからはほぼほぼジャムの要領で煮込んでいく。


 ある程度煮込んだらパイ生地の準備、薄めに広げて四角く切り分けていく。


 薄さはまぁ……破れない程度に薄く、最後の工程で揚げて膨らむので自分が思っているよりも少しだけ薄くすると良い感じだ。


 パイ生地が出来たなら煮込んだリンゴを中央に乗せて、乗せてからパイ生地を半分に折るようにしてたたみ、そうしたらフォークを手に取り、その先端でパイ生地包みの縁を押し潰していく。


「まぁ、これはフォークとかでやると良いと思うよ。

 フォークの先端で押していくとそれっぽい模様が出来上るからやっていって……それが終わったら一旦冷蔵庫に入れて冷ましておいて、その間にジャガイモも切り分けていこう。

 大きさは適当に、切り終わったらキッチンペーパーに乗せて水気を切って……そしてこのパイはオーブンで焼くんじゃなくて、揚げるものなので油の準備。

 しっかりと揚げ鍋を用意しても良いけど、パイ生地自体は薄いからフライパンに油を入れて、浅めの油で揚げるとかでも良いかもだけど……今回はポテトも揚げるので揚げ鍋でいこう」


 パイ生地は薄いので油の温度は低め、160度くらいで十分で……焼き上がりも見た目で焼き上がったなという感じになったらそれで良し。

 

「すぐに焦げ付いちゃうから常に菜箸で回転させて様子を見た方が良いかもね。

 揚がったら油はしっかり切って……キッチンペーパーで拭き取るくらいで良いのかもしれないね。

 パイが揚がったら温度を上げて、ポテトを揚げていく……んだけど、バーガーも仕上げたいからポテトはレイさん、揚げてください」


 俺がそう言うとレイさんは自分の顔を指差して「俺!?」みたいな顔をするが、ただ見ているだけでも暇だろうからここは手伝ってもらうとしよう。


 なんだかんだお菓子作りにも揚げの工程はあるので、ジャガイモを揚げるくらいお手の物だろう。


 そしてバーガー作りなんだけど……バーガー作りも大体の作業は事前に終わっている。


 バンズ……諸々を挟むパンはレイさんに焼いてもらったし、メインのハンバーグも昨日のうちに焼き上げてある。


 バンズに関しては自分で焼いても良かったのだけど、ここで失敗してしまうと大惨事になってしまうのでプロ任せにすることにした。


 パンとして美味しければ良いという訳ではなく、肉との相性とか持ちやすさとかも考える必要がある訳で……素人がそこまでやるのは難しいかなーと考えての判断だ。


 レイさんに頼めない場合は、バーガー用の市販のバンズでもOKだろう。

 

 ハンバーグも本当はハンバーガー用の、脂分少なめとか具材少なめとか極力平らにとか、こだわって作るべきなのだろうけど……素人がそこらをやり切るのは難しいので、気持ち平らな、普通のハンバーグにしてある。


 バンズとハンバーグがそうやって揃っているのなら、後は他の具材とソースを用意するだけでよく……今回のソースであるてりやきソースだけは自分で作るつもりだ。


「てりやきソースは……二種類の作り方があるみたいだね。

 醤油と味噌を使うのはどこも変わらないんだけど、仕上げの酸味をフルーツで出すか、お酢で出すか、みたいな感じで。

 てりやきソースはただ甘さだけじゃなくて酸味が重要な決め手になるらしいんだ。

 あの……ピエロの方はフルーツの酸味で、ライスバーガーで有名な方はあくまで和風ってことでお酢らしいね。

 更にショウガなんかの薬味を入れる量も違うみたいだけど……まぁ、ここはオリジナルでやっちゃおうか」


 醤油、味噌、みりん、お酒、それとハチミツを混ぜて軽く火を入れて……今回はお酢とショウガ多めで味を作っていく。


 何度も何度も味を確認しながら微調整をし……出来上がったならバンズをパン用包丁で半分に切り分ける。


「バンズを切り分けると上の部分はクラウン、下の部分はヒールと呼ぶらしいよ。

 クラウンは王冠、ヒールはかかとって意味になるのかな……不思議な呼び方だよねぇ。

 バンズを切り分けたら切り口にマヨネーズを薄く塗って……それから洗ってから切り分けて水気をよく切ったレタスの葉を乗せていく。

 レタスは食感も良いんだけどソースがパンに染みないようにするためのものだから多めに。

 レタスを乗せたらハンバーグを乗せてソースとマヨネーズをかけてからレタスをまた乗せて……バンズのクラウンを乗せたら完成!

 ポテトは揚げたてのに塩をかけたら完成で……アップルパイも程よく冷めたら完成かな。

 あとは冷蔵庫で冷やしておいたコーラがあるから……これでセットの出来上がりだね」


 と、俺がそう言うとずっと黙って見学していたコン君とさよりちゃんが……レイさん辺りと相談して作っていたらしい、厚紙製の箱を取り出してきて……それの内側にクッキングペーパーをしっかりと敷いた上で、こちらに渡してくる。


 ケーキの箱と同じような素材で作られたそれは、ポテトを入れるアレとバーガーを入れるアレにそっくりで……苦笑しながらそれに入れて上げると、今度はおぼんを取り出して、それをトレーのようにして配膳し……自分の分を両手でしっかり持ったなら落としてしまわないよう慎重に居間へと持っていくコン君とさよりちゃん。


 レイさんまでがそれのマネをして持っていき、コン君達の様子を見てなのかテチさんまでワクワクした様子で台所へとやってきて……俺はテチさんの分も用意して手渡してあげる。


 それから俺は自分の分と……人数分のコップとコーラのペットボトルをおぼんに乗せて、賑やかな声が響いている居間の自分の席へと向かうのだった。 


お読みいただきありがとうございました。

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