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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第八章 収穫、柿、ジビエ肉

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ウェリントン風


 レイさんや御衣縫さんがあれこれと料理を持ち込んで、肝心要の肉の消費量はどうなのかと心配したけども……そこら辺に関しては全く問題ないようだ。


 美味しい料理が呼び水となって皆の食欲が爆発しているようで……今が秋ということもあるからか、どんどんバーベキュー台の上の食料が消えていく。


 消えていく速度が尋常ではないせいで、焼くのが間に合わず、焼き上がり待機なんてことをしている人まで出始めて……これは予想以上の速度で肉の消費が進みそうだなぁ。


 ……と、言うよりもこのままのペースで消費が進むと、逆に肉の在庫が足りなくなってしまうかもしれない。


 まさかそんなことあるはずがないと思いたいが……相手は獣人だ、油断は出来ないだろう。


 実際コン君とか食べてすぐ消化してを繰り返して食べていたことあったしなぁ……何か手を打った方が良いのかもしれない。


 そう考えて一旦家の中へと移動し……ついでという訳ではないけども、居間で友達と楽しんでいるテチさんの様子も確認する。


 お酒が入っていないこともあってかゆっくりと、にこやかに食事を楽しんでいて……邪魔をするのも悪いだろうから無言で、そろりそろりと通り抜けて台所へと向かう。


 それから何か追加の料理は作れないかなと考えて……居る所にトテテテッといつもの足音が響いてくる。


 今日くらいはこっちに来ないで楽しんでいれば良いのになぁ、なんてことを考えていると……予想していたコン君だけでなく、さよりちゃんや他の子供達までがやってきて、コン君とさよりちゃんはいつもの席へ、他の子供達は台所のそこら中に腰駆けてこちらをじいっと見つめてくる。


「えっと……?」


 そんな皆に俺がそう声をかけると、コン君が言葉を返してくる。


「皆も料理出来るようになりたいんだって! だから見学したいんだって!」


「なるほど……?

 大人に混じって料理をしているコン君達が羨ましくなったのかな?」


 と、俺が返すと皆がコクコクと頷いて……なら何か皆にも真似出来る料理が良いかな、なんてことを考えていると、更に足音が聞こえてくる。


 それはコン君達よりも重いが、それでもかなり小柄な軽いもので……あの人だろうなと振り返ると、御衣縫さんが本シメジと野菜の入った編みカゴを両手で持ちながらやってきて、それをズイとこちらに差し出しながら声をかけてくる。


「良いじゃねぇか、子供達にも作れる料理を見せてやんなよ。

 ……どうせお前さんのことだ美味くない肉は自分だけでこっそり食うつもりなんだろう? ならそれをウェリントンにでもしてやりゃぁ良い」


 御衣縫さんの言葉を受けて、ウェリントン? そんな料理あったかな? 地名だったような? なんて思考が頭の中を駆け巡り、それから数秒後にようやく、ある料理の名前が思い浮かび……それから編みカゴの中を見た俺は、なるほど、と頷いてからカゴを受け取り、冷蔵庫の中からあまり美味しく無い、パサパサとした臭みの強い部位を取り出し……それと冷凍パイ生地を取り出す。


「じゃぁ今日はビーフ……じゃないや、ポーク……でもないイノシシ・ウェリントン風の料理を作ってみようか。

 作り方はまぁ、シンプルで……お肉のパイ包み焼きだね。

 パイで包む前にパテで包むのが特徴で……それにはキノコを使うと良いとされているね」


 なんてことを言いながらまずはパイ生地を広げて解凍させておく。


 次に本シメジの石突を切り落としてから、フードプロセッサーに入れて……ついでにパセリと玉ネギ、ニンニクも入れて細かくみじん切りにする。


 本当は玉ネギではなくエシャロットで、エシャロットとニンニクを油で炒めて水分を飛ばした物を使うのだけど……今回は子供向け、簡単な調理法にすべきと考えて雑にやってしまう。


 それでも本シメジの旨味があれば問題ないはずで……しっかり細かくなったなら、それをフライパンに移して軽く炒めていく。


 塩を振って、まとまりが悪ければオリーブ油を足して、そうやって整えたなら適当な入れ物に入れて冷やしておく。


 そしてお肉、これは大きさによっては事前に炒めたり茹でたりして火を通しておく必要があるのだけど……今回はそれもなしにして、火が通りやすい大きさに切り分けるだけにしておく。


 そうやって食材の準備が終わったならパイ生地を広げてバターを塗って、その上に本シメジパテを塗っていき……塗り終わったら生地の中央に肉をどん、後はパイ生地で肉を包んだら……その表面に卵黄を溶いて軽く水で薄めたものを塗っていく。


「これを塗ったら……次に網目状にしたパイ生地を被せるんだけど、面倒ならメッシュローラーっていう道具でざっとパイ生地を切ってそれっぽくしたのを乗せても良いし、紐状に練ったのを乗せても良いよ。

 それを乗せたらまた卵を塗って……後は予熱したオーブンに入れて、30分焼いたら完成。

 この料理の良いところは、キノコの旨味がしっかりとお肉につくし、ハーブを入れたらハーブの匂いがしっかりつくしで、それなりのお肉がうんと美味しくなることだねぇ。

 パイ生地が旨味を逃さないし……多少雑にやっても美味しくなるから、お父さんお母さんに手伝ってもらいながらやってみると良いよ」


 なんて説明をしながら完成したものをオーブンに入れると……子供達だけでなく居間からこちらを覗き込んでいたテチさんの友人からも声が上がる。


「相変わらず美味しそうだけど高カロリー!」

「いや、今日はそういうパーティーでしょ?」

「うーん、いつもおしゃれだよねぇ」


 そんな友人達の後ろでテチさんは何故だか満足げな表情をしていて……俺はどういう感情で居たら良いんだと困惑しながら、更にパイ生地を用意し、パテを用意し……焼き上がり待ちの皆に持っていくためのイノシシ・ウェリントンを作るべく準備を進めていく。


 進める中でコン君とさよりちゃんがそれを手伝ってくれ始めて……他の子供達も手伝いたいとの声を上げてくれるけども、流石に割烹着なしでは許可ができなくて、今日は見学だけということになる。


 すると一部の子供達は割烹着さえあれば良いのかと、そう言う解釈をしたようで……スマホなどでメッセージをどこかに送り始める。


 ……まぁ、ご両親なのだろうけども、割烹着をねだっているのだろうけども……ただの肉祭りのはずが、どうしてこうなったやら。


 まぁー……料理を教えるくらいのことはいつもやってることだし、流石にコン君達みたいに高頻度にはならないだろうし……それも悪くないかと頷いた俺は、ひとまず料理に集中して、ウェリントンを仕上げていくのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] お料理教室が定番イベントになるかも 子供達がどんどん成長していくなぁ
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