特別編 海外版書籍 第2巻発売記念SS『So You Want to Live the Slow Life?』Vol2
ある日の昼下がりのこと。
いつものように縁側から駆け込んできたコン君が、背負っていたリュックサックを居間の隅のいつもの場所へと置いて……直後、リュックサックの中身がドドドッと一気に飛び出す。
どうやらリュックサックのチャックをしっかり締めていなかったようで……そのせいで中身の雪崩が発生してしまったらしい。
それを受けてコン君は大慌てで飛び出した中身の回収をし始め……居間のちゃぶ台で休んでいた俺も、それを手伝うかと立ち上がり手を伸ばし……伸ばした先にある一冊のノートのタイトルが視界に入り込む。
『日記』
日記、コン君の日記。
子供の頃はあれこれと書いていたそれも、俺にとってはいつからか全く書かなくなった……どころかすっかりと忘れ去っていた代物で、それを見ているとなんとも懐かしい気分がこみ上げてくる。
「ああ、日記かぁ、懐かしいなぁ……コン君は普段どんなことを書いているんだい?」
そう言いながら日記を手に取り、コン君にて渡すとコン君は、ぎゅっと目をつむって笑いながら日記を受け取り、受け取るなりそれを広げてこちらに見せてくる。
今日の昼食、今日の食材、今日の料理。
そのほとんどがひらがなとカタカナだけで書かれていて、たまに簡単な漢字が混じっていて……コン君の年齢にしては読みやすい、綺麗な文字でもってそんな内容を記している。
「……これは……日記というか、レシピ本、かな?」
なんてことを言いたくなる程に料理についてが詳細に書かれていて、味の感想やどんな料理だったのかという絵や、具材の絵、料理の仕方についての絵までが書かれている。
「……コン君は絵が上手なんだねぇ、料理の仕方も分かりやすい……。
絵日記……と言うべきか、絵レシピと言うべきか……」
そんな俺のコメントに対してコン君は何も言わずにどんどんページをめくり、俺の料理だけでなくコン君のお母さんの和食料理のレシピまで見せてくれる。
「おお……さすがコン君のお母さんは手の込んだ料理を作っているねぇ。
煮物だけでこんなに手間暇を……。
うぅん、これは本当にレシピ本に出来ちゃうレベルだなぁ」
なんてことを俺が言うとコン君は、自慢げに胸を張って「ふふん」とそう声を上げて……それからイソイソとリュックの中に日記をしまう。
実のところそのリュックには他にも日記があって、コン君から見た俺とテチさんの日々があれこれと綴られていたりするのだけど、そのことを知るのは当分先のことで……俺はその時までコン君がそんな日記を書いているなんてことに気付きもせずにテチさんとの日々をのんびりと、過ごし続けるのだった。




