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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第六章 リフォーム、ホテル、レストラン

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リフォーム工事


 梅肉ソース焼きそばを皆で食べ終えて、お昼休みが終わるまでの間、鳴き始めたばかりのセミの声を聞きながらゆっくりと過ごすことにして……そうして麦茶をちびちびと飲みながらまったりと構えていると、ドスドスとその足音だけで誰かが分かる足音が、庭の方から響いてくる。


 それを受けてその足跡の主を知らないさよりちゃん以外の全員で、随分早かったなぁとそんな顔をしていると、たくさんの書類を抱えた熊の獣人で大工のタケさんが縁側へと腰をかける。


 それを受けてすかさず、俺が用意しておいたコップと麦茶入りの水出し瓶を差し出すと……タケさんはコップを使わずに、水出し瓶を掴んでそのまま口の中に流し込み……1.5リットル入りの瓶をあっという間に空にしてしまう。


「ふーい、ごちそうさん。

 すっかり暑くなってきやがったなぁ……ってことでよ、本格的な夏が来る前に、ほれ、リフォーム計画、しっかり立ててきたぜ」


 瓶をドンと縁側に起きながらそう言ったタケさんは、抱えていた書類を手渡してきて……俺と、俺の背後へと駆け寄ってきたテチさんと、俺の背中に駆け上がってきたコン君とさよりちゃんと一緒に書類を確認していく。


「工期は一週間、材料は揃ってるから明日からでも着工できるぜ。

 料金はそこに書いてある通りで……まぁ、悪くない値段になったんじゃねぇかな。

 工事中はどこか他所に泊まってもらう感じで、おすすめとしちゃぁ、森の中央にある公営中央ホテルが良いだろうな」


 書類を確認している俺にタケさんが更にそんなことを言ってきて……俺が「ホテルがあるんですねぇ」なんてことを言いながら首を傾げていると、俺の隣へと座り込み、こちらに視線を向けてきたテチさんが、その顔と瞳をこれでもかと輝かせての期待に満ち溢れた表情をしてくる。


 更に俺の膝下へと駆けてきたコン君、さよりちゃんまでが似たような表情をしていて……俺は何も言わずにタケさんに向けて、説明を求めるとの視線を送る。


「あー、公営中央ホテルはあれだ、ここからまっすぐ扶桑の木がある方に進んで、扶桑の木の根本のトンネルを越えた先にあるホテルでな。

 外国……いや、本国か、とにかく壁の向こうからの客人とか、将来的に観光客とかを受け入れることになった時のためにって建てたホテルなんだよ。

 だがまぁ、現状は客人にしても観光客にしてもからっきしで、公営にしなきゃやってられん経営状態になっててなぁ。

 そういう訳で普通のホテルはやめて色々と改装して、森の中の住民がたまの贅沢にってことで泊まって、リフレッシュするための療養施設みてぇになってんだよ。

 馬鹿みてぇに広いショッピングコーナーに、薬湯に露天などなどなんでもあり温泉にサウナにプール、マッサージを始めとしたボディケアに、森の中トップクラスの飲食店各店、温泉に入りながら療養擦る目的の、病院やリハビリセンターまであって……それはもう一週間でも二週間でも遊べちまうって感じでな。

 家を建て直すとかで業者からの紹介があると割引サービス価格で泊まれるってことになっててな……もちろん今回のリフォームでも泊まれるように手配しておいたぜ」


 そう言ってタケさんはにっかりとした笑みを向けてきて……書類の最後の方にあるホテルの紹介チラシと、割引チケットと思われるものをぐいと書類の中から引っ張り出す。


 それを改めてみた俺は、豪華絢爛って様子の、5階建てか6階建てか……縦にぐんと長く伸びた建物の写真を見て「おー……」と声を漏らす。


 俺の反応を受けてかテチさんだけでなく、コン君やさよりちゃんまでがここに行きたいとの視線を向けてきて……割引チケットの注意事項を確認した俺は、コン君達でも問題なく割引対象になることを確認してから、テチさんの方を見やり、大きく頷いてくれたテチさんの了承を得てから……ゆっくりと口を開く。


「えーっと……俺としてはコン君やさよりちゃんが来てくれても良いと思うんだけど、流石に1週間の泊まりとなると、ご両親の了解が必要だろうから、まずそこら辺の確認をしてからかな。

 ご両親が良いよってくれて、ホテルに連絡してみて……それで全く問題ないとなったら皆で行くとしようか。

 工事の日程はそこら辺が決まってからに―――」


 そうして俺がそんなことを言っていると、コン君とさよりちゃんはすかさず行動を開始して、スマホをポケットの中から取り出し、それぞれの両親に事情説明の電話をし始める。


 実椋にーちゃんとテチねーちゃんと一緒に中央ホテルに泊まりたい。

 割引サービスを受けられるみたい。

 家のリフォーム工事が完了するまでの1週間。

 支払いはちゃんと自分達の貯金でするから。


 コン君もさよりちゃんも両親にそんな感じの説明をして……電話の向こうのご両親は大きく笑いながら『行って来い行って来い、これが新婚旅行だな』なんてことを言ってきてしまい……あっさりと話がまとまってしまう。


 そうして電話を終えたコン君達は俺に視線を向けてきて、書類の……ホテルの電話番号が書かれた部分をトントンとその指で示してきて、俺は促されるままに仕方なくホテルへの確認の電話をする。


『あー、はいはい、森谷さんですね、お話は伺っております。

 えぇえぇ、こちらはいつでもお客さんが足りないくらいですので、いつでも、今日からでも大歓迎ですよ』


 するとホテルのスタッフはそんな言葉を返してきて……会話を盗み聞いているのか、ピクピクと耳を動かすテチさん達の表情を見て俺は、諦めると同時に覚悟を決めて、構えたスマホへと言葉を投げかける。


「じゃぁ……そうですね。明日から1週間で4人、大人二人子供二人、大人一部屋、子供一部屋の二部屋の予約をお願いします。

 ……ええ、はい、温泉も入りますし、プールやサウナやボディケアとか、そういうサービスも利用する感じで……はい、一週間暇しないような感じで……はい。

 そうですね、ホテルの周囲の観光とかもできれば……はい、支払いは……はい、はい、分かりました、問題ないです。

 では、そういうことで……明日10時のチェックインということで、はい、お願いします」


 そう言って俺が通話を終えると……テチさんはぐっと拳を構えながら立ち上がり、コン君とさよりちゃんは『やったー!』と異口同音に声を上げながら飛び上がって、空中でのハイタッチを成功させる。


「あー……タケさん、そういう訳ですので、明日から工事をお願いできますか?」


 と、そんな中で俺がそう声をかけるとタケさんは、満面の笑みでのサムズアップをなんとも格好良く決めてくれるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばテチさんの実家はどんな形なんだろう? リス科だからって木をくりぬいて住む、だと狭いから…普通な住宅イメージでいいかな!
[一言] 確かに婚約状態なんだろうけど、子供で一部屋? いいのか……? あと、最近宅配がこなくて寂しいです。ホテルで会えたり??
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