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獣ヶ森でスローライフ  作者: ふーろう/風楼
第三章 イチゴジャム、ソーセージ、缶詰、そして兵糧丸

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カロリー密度と……


 ダイエットの真逆の発想、効率的にカロリーを取ろうとした場合重要になるのがカロリー密度という数値だ。


 重さ当たりのカロリー量を数値化したもので……一番カロリー密度が高い食品は『油』となっている。

 次が脂身で、バター、チョコレート、ナッツ、チーズという順番になっていて……豆もそれなりにカロリーが高く、赤身肉やパンもそこそこに高いが……その下からはうんとカロリー密度が下がっていって……魚、米、トウモロコシ、じゃがいも、くだもの、葉物野菜といった順に低くなっている。


 カロリー密度が低いから食べても太らないという訳ではなく、あくまで重さに対してのカロリー量なので、そこは勘違いしないように注意する必要がある。


 元々の食材が軽ければ当然密度が高くなるし、重ければ低くなるし……あくまでも目安の数値といった感じだ。


 旅や冒険、船旅や山登りの際には、この数値が重視されることが多く、軽くてカロリーが多くて、それでいて美味しいナッツ入りチョコバーが重宝されているのはこういう理由だったりする。


 水分が多ければ重くなるからなるべく乾燥させようとするし、乾燥させれば腐りにくくなるし……伝統的な携行保存食に乾燥させたものが多いのは、ここら辺も影響してのことなんだろうなぁ。


「しかしまー、うん……これはあんまり参考にならないかな。

 チョコバーの仲間でもある携行保存食になら何か良いヒントがあるかもと思ったんだけど……」


 昼食後の休憩時間、テチさんとコン君が座布団を枕にして寝転がっている中、スマホを操作しながらそんなことを呟くと……コン君が畳の上をコロコロと転がってきて、俺の体をよじ登るようにして起き上がり、スマホの画面を覗き込んでくる。


「へー、カロリー密度かー……。

 油、バター、チョコ、ナッツ……チョコとナッツは大好きかな!」


 画面を覗き込みながらそう言ってきて……俺は頷きながら言葉を返す。


「そうだね、俺も大好きだよ。

 ただまー……普段の食事としては微妙なんだよねぇ、油もバターも使うには使うけど量が多すぎると料理の味に悪影響があるものだし、カロリー以外の部分で悪影響がありそうだし。

 そうするとやっぱり量かなーってなるんだけど……食事の量が多すぎるっていうのも良くないのからねぇ。

 んー……各食事にミックスナッツ入り小皿を追加するとか、ナッツを砕いて振りかけるようにするとか……?

 ……まぁ、うん、いきなりあれこれ変えるのも体に良くないだろうから、少しずつ、様子を見ながら増やしたりしていくことにしようか。

 チョコバーに関してはテチさんとコン君自身で足りないと思う分を食べるようにしてもらって……時間をかけて追々、食べなくても済むようにできれば一応のゴールって感じになるかな」


 と、俺がそう言うとコン君は興味があるのか無いのか「ふーん」なんて声を上げて……休んでいることに飽きたのか、俺の体をなんとも器用によじ登り始める。


 肘や肩に手をかけ足をかけ、肩の上に登頂成功したなら、勝手に肩車状態になって、そのふかふかの顔を俺の頭の上に乗せて……尻尾を振り回しているのか、右へ左へと体を僅かに揺らし始める。


 よく食べよく運動する割にはコン君の体は軽く、それなりに重いのだけども人間の子供程は重くはなく……俺は背中に力を入れてコン君の体重をしっかりと受け止め支えながら、スマホを操作して良いレシピがないか、レシピサイトの中を探っていく。


「……海外には乾燥チーズなんてのもあるんだなぁ、美味しさはともかく乾燥している分カロリー密度は高い、と。

 ああ、バター茶っていうのもありな訳か……。

 日本の携行保存食とかは……あー、うん、あんまりカロリー重視の携行保存食は無いみたいだなぁ」


 探りながらそう呟くと、コン君が頭上から言葉を返してくる。


「にーちゃん、にーちゃん、日本のけいこー保存食ってどんなのがあるの? 梅干し以外で!」


「えーっとね、有名なのだと干し飯かな? 炊いたご飯を平たく広げて乾燥させたやつのことで……そのまま食べるかお湯で戻して食べるかって感じだね。

 後は干し芋とか……芋がら縄なんかは面白い発想だってことで有名だったりするね」


「へー……芋がら縄ってどんなの?」


「芋がら、つまり芋の茎だね、芋の茎を縄みたいに長く編んで味噌で煮込んで乾燥させて……本物の縄みたいにして持ち運びやすくしたものだね。

 それを腰に巻きつけてベルトみたいにしたり、荷物を縛る紐みたいにしたりして……そして旅先とかでそれを沸かしたお湯に刻んで放り込んで、お味噌汁代わりにしたって感じかな」


「……にーちゃん……それって食べて良いものなの? オレ、食べたくないかな……」


「まぁ、うん、正直に言えば俺も食べたくはないかな。

 一応高温で煮ちゃえば殺菌は出来るんだろうけど……衛生観念とかが無い時代の代物ってことなんだろうねぇ。

 軽さと便利さだけを追求したって感じなのかな?

 野菜と味噌が材料だからカロリーもそこまでじゃないけども、塩分はしっかり取れそうだね。

 後は保存性はそこまで無かったようだけど、栄養バランスを考えた兵糧丸っていうのもあったようだね。

 兵糧丸……色々な食べ物を混ぜてお団子にしたもので、忍者食としても有名かな」


 と、俺がそう言うと……というか、忍者との言葉を口にすると、頭の上のコン君がピクリと反応をし……寝ていたはずのテチさんもピンと耳を尻尾を立てて……そうしてからこちらに顔を向けて興味深げな視線を送ってくる。


「……え、もしかして二人って忍者が大好きだったりする?」


 そんな二人に向けて俺がそう言うと、二人は同時にこくこくと頷いてから元気いっぱいの声を返してくる。


「テレビで見た! 忍者ちょー格好良い!」


「私達からしてみればテレビ番組や映画だけで見ることの出来る、外国の文化みたいなものだからな!

 ……たまに特集番組とかをやると、ここら一帯の視聴率は物凄いことになるらしいぞ!

 忍者資料を保存している所とか体験施設とかに行ければ良いんだが……私達はこの森を出ることも出来ないからな。

 忍者以外にも北海道特集とか沖縄特集とか……ああ、各地の温泉特集も人気だな。

 この森にも温泉があってそこである程度満足は出来るんだが……やっぱり泉質が違う温泉っていうのに一度は行ってみたいと思ってしまうな」


 二人のその声には本当に力がこもっていて、それらが好きなんだという気持ちがはっきりと分かる程にこもっていて……森の外に出ることが出来ないということの重大さと深刻さを改めて認識することになった俺は……少しだけ鼻の奥をツンとさせながら、ぽつりと思いついた言葉をそのまま口にする。


「じゃー……忍者気分に浸るってことで本格的な兵糧丸を作ってみる?

 保存性があまり無いとはいえこれも保存食の仲間だし……カロリー高めの兵糧丸を作ってご飯と一緒に食べればカロリー問題も解決しそうだし……。

 ああ、それと一緒に前々から話をしていた缶詰もつくろっか、缶詰もカロリー高めに出来るものだからね」


 するとコン君は俺の頭上で「やったー!」と大きな声を上げてから嬉しそうに尻尾を振り回し体を左右に揺らすことで喜びの感情を表現してくれて……そしてテチさんもまたなんとも嬉しそうな期待に満ちた笑みでもって、その感情を表現してくれるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] コン君肩車とかご褒美が過ぎない? あと兵糧丸って不味いイメージあるw
[一言] なんか本格的に獣人のルーツが気になってきた。 日本に少数ながら古来からいたとかではなく、がっつりエイリアンだったりするかね。
[良い点] カロリー取り放題の携行食 コンビーフとかペミカンかな
感想一覧
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