いや魔女殺すって、相当なことじゃね・・・?
「・・・え?魔女を殺した?」
「王には殺してしまったと伝えたが、正確には、“消した”んだ」
「いやそれも十分やばいだろぉぉ!?」
――つまりだな、彼女はなんてったって王族に仕えてるから、名前はあったが、ある実験をしていた時に、先代の魔女を消してしまい、名前も取られてしまったとか。ちなみにこの国、平民は親とかに名前を付けてもらってるから名前を持っているけど、貴族に仕える者は主に名前をもらい、主が取り消せば名を名乗れなくなるそう。
「地球にいたころの名前とか、ないのか?」
「いや、それは名づけの時に名乗れなくなって、なんせもう十二年だ、忘れてしまったよ。」
「そうですか・・・。ちなみにどんな実験を?」
「異世界転生装置だ」
「え?ここが異世界でしょ?」
「いや、この国からしてみれば、地球の方が異世界だよ。」
「あぁ、言われてみれば確かにそうだな。」
「で、その装置が完成したから、当時仲が良かった、先代の魔女のグレフォースを実験台にしたってわけだ。」
「いや仲がいいほど実験台にしちゃダメだろ・・・」
「っ、知らんっ!と、とにかく、実験は成功したんだ。だがな、帰還用の装置を作ってなかった。」
「それただお前が間抜けてただけじゃねぇぇぇかぁぁぁ!」
っていうかこの科学者、動揺したとき、けっこうかわいい。一応女だからなにも言わないが。
「でも、でもっ!グレフォースちゃん、たぶん生きてるよ。いまごろ地球で、新しい生活を楽しんでるよ!」
「そうだといいな。」
* * *
「ふぅ、なんかつかれたぁー!」
「ところでさドゴール、魔女って一人だけなの?」
城に戻った俺は、さっそくいろいろ聞いてみることにした。
「サティア様が町を楽しんでいただけてなにより。」
「んなことぁどうでもいいわ!で?魔女は一人しかいないの?」
「いや、ふたり以上の時期もありましたが、十五年前の戦争で、大半が死亡しました。生き残ったのは一人のみです。」
「それがグレフォースか。」
「・・・あなた、グレ・・・あの科学者に会ったのですか?」
「そうだけど?なんでわかったの?」
「グレフォースと仲良くしていた中では、あの科学者しか生き残ってないのでな。」
「そうなのか・・・」
「グレフォースは魔女の中でトップでした。マナの消費が激しかったようですが、蘇生もできたとか。しかし、あの科学者に殺されたのです。グレフォースが行方不明になった二日後、あの科学者が出頭してきました。王は処刑を考えましたが、彼女が最高の武器を作ると約束したので、名前の剥奪に終わりました。」
「そうか・・・。ところで、王にはいつ会えるの?」
「二か月後の王族でのパーティで、新しい王族直属戦士達の紹介が行われます。それまでは、あなたは王族の部下には私にしか会えません。もちろん、例外はありますが。そしてなにより、魔女たるもの、そのパーティまでに魔法を習得しなければなりません。」
そこから二か月、俺は一切城の外に出れず、魔法の練習に励むこととなった。