9/18 突然の来客
1522年 9/18 AM2:00 【203号室】
ドアをノックする音で目が覚めた。
ーノックというより、ぶん殴る音で、だが。
ドアがミシミシバキバキと悲鳴を上げている。
本能が俺を逃げろ逃げろと促す。
とうとう「バキッ」というドアがお亡くなりになったのが確定な大きな音とともにとある人物が侵入してきた。
その人物とはー
私の親愛なるいとこ、ジョン=アンドリューであった。ちなみに俺の目の前に立っているこの男、ジョン=アンドリューの父親であるジェイソン=アンドリューは俺ことグレイ=アンドリューの父親であるジェームズ=アンドリューの弟であり、ジェイソン=アンドリューが俺をこの素晴らしいボロアパートに送り込んだ張本人である。・・・うん。何言ってんのかわかりにくいな。
つまり、私 グレイ=アンドリュー。
目の前の人 私のいとこ ジョン=アンドリュー。
目の前の人の父 私の叔父 ジョンソン=アンドリュー。 うん。これでわかりやすい。
「?何でここにいるの?」
「そんなことはどうでもいい!!お前だろ?俺の部屋のインターホン壊したの!?」
「……ん??」
全く話が読めない。
「だから俺の部屋!!103号室!!」
………はて?103号室??何のことやら。
あのもとから壊れていたインターホンのことなど忘れました。
「てめえはいつまでとぼけるつもりなのかねえ??」
「あああああ!?痛い!!痛いから両手でこめかみをグリグリするのはやめてー!!」
おおう…………頭蓋骨がゆがんだのか視界がチカチカする。
そんなわけで俺は少ない金の中から銀貨5枚支払ったのだった。
で気づいたら銀貨15枚と少し。あれ~おかしいな………つい昨日まで35枚はあったんだけど………
ーというかなんじゃかんじゃでドア外れてるし。
まあ残り15枚あるし何とかなるやろ。
取りあえず応急処置としてドアを入り口に立てかけておく。
よし。これで大家さんにバレることは・・・あるよな。
というよりバレたら遅かれ早かれ死ぬよね。
金銭面からも身体面からも。
かくして俺はびくびくしながら生活することを強いられたのだった。
ーというより今はまだ電気とかガスとか契約していなかった……
今まで給料もらったー ヒャッハー!! さて外食しますか。 という生活をしていたので。
「いや待てよ……俺は魔術士!!一応 国家公務員!!一応魔術で食っている身。電気とか食事とかその他諸々は俺の魔術で……!!
て~~~~い!!なんか出てこーい!!」
『グレイ=アンドリューは魔術を使おうとした。 しかし何も起きなかった。』
……なんか変な声が聞こえたような……??
「………。でえええええい!!」 『効果がないようだ。』
………そういえば魔術ってどうやって発動するん??
目を背けていたが、テストに受かったとはいえ、魔術に関する知識はほぼゼロ。
いや~忘れてましたな~。
「………。Noooooo!!」
はい、詰んだー。詰みましたよー。コンボで詰みました。
あーっはっはっは まさか銀貨20枚が2日もたたぬうちに消え失せるとは思ってもいませんでした。
いやー怖いなー怖いなー。現代社会って本当に怖いなー。
ここで俺は気付く。
大地(正しくはボロアパートの床)を揺らすほどの大きな音が近づいていることに。
ま、まさかの魔術が発動するのか??
結論から申し上げますと魔術は発動しなかった。
あの音は俺の大声に激怒した暴徒と化した住民たちの足音だった。
「黙れ」と九浪に殴られ、「ウザい」と厨二病な兄妹にラリアットされ、「朝早くから………」と大家さんからドロップキックからのジャイアントスイングのフルコンボを食らった。
すったもんだで俺は全治5週間ほどの重傷を負ったのだった。
そして俺を殴る・蹴る 等の行為をした暴徒たちが各々の部屋に帰った後、大家さんだけが俺の部屋に残っていた。
大家さんの目の先にあるのはこの【203号室】の入り口。
正しくは床に転がっている元ドア(今は押し寄せた暴徒の影響で木の残骸と化した。)
「………あ。」
俺の体温が恐ろしいスピードで下がるのがわかる。
恐怖で全く頭が働かない。
恐れていたことが起きてしまった。 不覚。
大家さんがこちらをゆっくり振り向く。
その顔は表情筋が死滅したかというほど無表情だった。
………この日、オフリッド中に男の泣き叫ぶ声が響き渡ったという。
9/18 AM10:00 【203号室】
【203号室】で大家さんから事情聴取を受ける。
「今朝の騒動というかてめえの近所迷惑のの原因は?さっさと言えや。」
どこぞの不良ですかというほどの口調ですな。
大家さんの俺に対する扱いがひどくなっている気がする。
「気じゃねぇよ。ひどくしてんだよ。」
「俺の心、読まないでくださいます!?」
大家さんマジいったい何者……
「あー実は魔術が発動しなくて………。」
「え?魔術が発動しない?それは体質によるもの?そうしかありえないよね……でもそんなはずないよね……」
………なんだろう。大家さんが急に取り乱し始めたぞ。
というか体質によって魔術が使えるとかあるんだ。
まぁそりゃそうですよね。
誰でも使えたら魔術士という誰でもできそうな簡単なお仕事誰でもしたがりますもんね。
「………いやーなんか………その………魔術発動って難しいのね。」
「………ん??その言い方から察するにお前って学校とかって行ってない組??」
馬鹿にしないでいただきたい。
「いやー毎日行きましたよ。行くだけで寝てましたけど。」
睡眠学習というやつだ。(睡眠学習が実際できていたらエリートのはずだがテストで赤点撮りまくっていたから多分睡眠学習はできないと思う。)
「なるほど。なるほど。じゃあ魔術について勉強しに行こうよ。」
「………え??」
なんで??そうなるの??あと意外と大家さんってノリがいいのかそれとも頭が少しばかりアホなんかようわからんな。まあ確かに魔術士で魔術使えないのはやばいかもしれないけど………。
というかこれ一見は美少女と勉強会という夢にまで見た素晴らしいイベントだったりしますな。(一見は。)
大家さん曰はく、魔術とは昔のえらーい人たちが考案したものらしい。
現在の生活もこの魔術がなければ送ることができない。魔術が職業面でも活用されているためだ。
そんな魔術は学校で教科の一つとして学習するほどである。
さて、それじゃあ魔術は誰でも使えるんだったら魔術士はなぜ存在するかという問いが浮上してくるだろう。
その答えとしては魔術士は緊急時に限り対人使用できることが法で許可されているが、一般人の場合、対人使用したら、基本死刑。よくて無期懲役である。
「魔術」と呼ばれる武器を使うのは一般的に禁止されていると考えたほうが分かりやすいかもしれない。
それに法律によって魔術士以外の一般人は徴兵されないと決められている。 ………らしい。
このスタンスは先の大戦の「七年戦争」でも変化しなかったらしい。
9/18 AM10:30 オフリッド国立図書館
魔術のお勉強をするため『オフリッド国立図書館』にやって来た。
魔術は一般人も勉強しないといけない必須科目として様々な参考書などが発行されている。
そんな訳でわたくしはオフリッド国立図書館の前で突っ立っているのです。
「………………でけーなー………………。」
『オフリッド国立図書館』とは蔵書を約4000万冊を誇り、職員数は約900人。国内で最大の図書館である。(らしい。)』
これは大家さんが話してくれました。
大家さんマジ万能。(いろいろな意味で。)
どうやらこの国で一般的に魔術といわれるものは3種類であるらしい。
・赤魔術 炎に関連する魔術
・青魔術 水に関連する魔術
・黄魔術 電気に関する魔術 (なかなか安直だと思います。)
……思ったより魔術の種類少なくない?
話を魔術に関する説明に戻すが、各魔術の会得は体質に関係せず、どの魔術でも勝手に決められるらしい。
そして、一度決めた魔術以外は生きている限り二度と変える事ができないらしい。
つまり、赤魔術に決定 ⇒青魔術に変更 というのはできないということだ。
まさに魔術は最初の路線決定が重要なのだ、
………金とか食事は魔術によって作り出すことができないらしい。(火と水と電気しか操れないからそれも当然か。)
………思ったほど魔術って使えないかもしれない。
あと、国内での各魔術使用者は約5%・35%・60%であるらしい。つまり、赤魔術使用者は少なく、黄魔術使用者はかなり多く、5人に3人が黄魔術使用者ということになる。
………いいこと知っちゃいました。
ここで赤魔術を会得して結構レアな魔術を駆使する魔術士として華々しくデビューするのです。
俺は赤魔術に関する本を探すために席を立つ。
対して大家さんはボケーっと窓の外に広がる風景を眺めていた。
9/18 AM11:30 オフリッド国立図書館
技を覚えるために本をぱらぱらとめくる。
………………あ、これがいいわ。『ファイヤーボール』
説明文を見ると、『手のひらから炎を放出する魔術。赤魔術の基本的な魔術であり、汎用性が高い。
速度・火力はマナの込め方で変えられる。ふつうの速度は大体時速60キロくらい。
某ちょび髭はやした水道管おじさんが白い帽子をかぶって投げているやつとほぼ同じ。
ただ、バウンドはしない。』
………大丈夫なんだろうか。この本。いろいろと。
発動方法は、
『マナを手のひらに集めて一気に放出するイメージ。』 ………かなり簡単。僅か23文字。
………マナって何よ??
『マナとは、人の体内で、生命エネルギーが脳に送られて生成されるもの。』
………生命エネルギーってなんだよ………。堂々巡りである。
『生命エネルギーとは人が活動するときに必要とされているエネルギーの総称。生物ごとに生命エネルギーの総量は違うが、同種族間ではあまり違いは出ない。一般的に男性より女性のほうが若干エネルギーの総量が高いといわれている。』
………へ~~~
うむ。訳が分からん。
横を見ると大家さんは熟睡していた。
9/18 PM12:30 オフリッド魔術中央センター
説明が遅れたが俺がいるこの石造りの建物、オフリッド中央センターはあのボロアパート(時々笑顔が絶え莊)から徒歩でわずか7分くらいのところに立っている。この近くには、このオフリッドを治めている王が住む城があったりとする。意外と時々笑顔が絶え莊の立地はいいのだ。ただぼろいだけただなのだ。今にも崩れそうなだけなのだ。
ここは魔術士になるために必要な試験をしたり、魔術士が魔術の練習をするときに使える魔術練習場がある。そのほかにも、自分の使う魔術の種類を申告する場所がある。
今日俺が来たのは俺が赤魔術を使用することを申告するため。そして、さっき図書館で見た「ファイヤーボール」を練習するためだ。
ちなみに居眠りしている大家さんは置いてきた。
9/18 PM3:00 オフリッド魔術中央センター
申告は無事済み、魔術の練習場に入る。
えーっと………。確かマナを手のひらに集めて一気に放出するイメージだよな??
というかマナを集める感覚ってなんだよ。
見よう見まねで他の魔術士をまねしてやってみる。
横の人は手から水を出している。青魔術士だろう。
水を噴出する際目を閉じて集中しているように見える。
マナを体の一点に集めるためにかなり集中しないといけないのだろう。
俺も目をつぶって集中して……みたのだが何も出る気配がない。
結局俺は練習場に入ったのはいいが、一回もファイヤーボールを撃つこともできずに外に出た。
わざわざ読んでいただきありがとうございます。言いたいことはやまやまでしょうが、(登場人物名は日本語か外国語のどちらかに統一しろ とか)そこらへんはご容赦ください。