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お手紙を書きます

 旦那様が夕食も忘れて、仲良く時間を過ごして結局夜中システィアに用意してもらった夜食を恥ずかしがりながら一緒に食べて、翌日。当然ながら昼過ぎに目を覚ました。


「うーん」

「まだ眠いですか?」

「そうだけど、昼寝までしたら夜寝れなくなっちゃうから」


 朝食兼昼食を食べ終わり、部屋に戻る。今日は疲れたので、部屋でごろごろしよう。

 ベッドに寝転がる。真横だと逆流しそうな気がしてしんどいので、クッションにもたれるように上半身をあげている。ベッドわきの椅子にシスティアは座った。システィアは他に代役がいなくて、俺が起きてる間中傍にいなくちゃいけないので、座ってもらうことにしている。

 というか、労働基準法とかどうなっているんだろう。どうせ大したものないだろうし、どうでもいいけど。


「ねぇ、システィア、昨日はごめんね」

「はい、どうされました?」

「いや、せっかく色々教えてもらったのに、めちゃくちゃになったから」

「私は構いません。アンジェリカ様が暴走されるまでは、大きな問題もなく、よくできていましたよ」

「本当? ありがとう」

「はい。ですので謝れるのでしたら、クリフォード様にされるのがよろしいかと」

「……そう言えば、まだ謝ってない、かも?」


 昨日のあのやり取りでは、なんか旦那様は無粋なことはしないとか言って、うやむやになったけど、考えたらそうだよね。アンジェリカのせいとはいえ、俺が取り乱して猫かぶるどころか大泣きして大恥晒したのは間違いない。

 ……う、今更ながら、やばいかも。元々気心知れた相手で、練習だって言ってあったし、話が漏れたりして大きな問題にはなってないはずだ。でも、旦那様の顔に泥を塗ったことは間違いない。


 それに、旦那様は俺に信頼されるよう示してくれたけど、旦那様自身も嫉妬していたことを忘れていた。それは、昨日とは逆で、俺が旦那様に信頼されるための行動をして示さないといけないんだ。俺の愛が届いていないから、嫉妬していたんだ。

 もっと伝わるよう、愛を込めて接しよう。昨日の今日で言葉にすると完全に真似だし、急かされてるわけじゃないし、じっくりと実感してもらえるよう、日々に愛情をこめよう。うん。そうしよう。


「……システィア、今夜謝るよ」

「そうですね。それがよろしいかと存じます」

「ね、ねぇ。謝るときに、なんかこういう感じにしたら気持ち伝わるっての、ない?」

「そうですね。では、お手紙を書くのはいかがですか?」

「手紙?」

「はい。もちろん勝手に出すことはできませんが、反省が伝わるかと」

「いいね。じゃあ、早速用意して」

「はい」


 手紙ね。普通に会うけど、あえて手紙で書いて手渡すっていうのも、確かにいいかもしれない。古来では恋歌とかラブレターとかってあったし、奥ゆかしい感あるもんね。


「あ、ちなみに宛先ですが、ジミー様よりアンジェリカ様宛ての方がよろしいかと。それなら場合によっては、実際に出すこともあり得ますし」

「え、あ、ああ! そうだね!」

「え、はい。急に元気になられましたね」

「うん! まぁねー」


 やばい。手紙って、旦那様への恋文じゃなくて、アンジェリカへの謝罪文だった。マジで勘違いしてた。は、ハズっ!!

 うわー、ど、どんだけ旦那様しか見えてないんだよ。ちょっとマジで、恥ずかしい。ああ……そうだよね。アンジェリカも困ってたもんね。年上なのに号泣して、泣かないでとか言われてたよね。あああ、本当にごめんなさい。


 用意してもらった筆記具で、とにかく下書きをする。今は旦那様のことは置いといて、真面目に昨日のことを反省して手紙を書こう。

 さすがにもう旦那様のことは諦めただろうし、普通に謝ろう。だいたい、子供相手にムキになり過ぎたよね。旦那様がロリコンだから悪いんだけど、アンジェリカには関係ないしね。


「うーん。まずは下書きしよう。で、最初は時候の挨拶から、だよね」


 さすがに友達感覚でアンジェリカへ。昨日はごめんね。なんて書くのは駄目ってくらいはわかる。前世でも、祖父母からちゃんとした手紙をもらったことはあるから、何となくわかる。しかし、考えたらこっちの手紙のマナーなんて知らないぞ。

 ちらっとシスティアを見る。


「……」


 おや。いつもならすぐに気づいて助けてくれるのに、露骨に目をそらされている。……自分で考えろってこと? あれ? 実は結構、昨日の結果に怒ってるの?


「う、うーん。どうしようかなぁ。迷うなー」

「……。あの、まずは適当でいいので、書いてみませんか?」

「はい……」


 困った感じで言われたのが、辛い。そんなに頼ってた? うざかった? はー。システィアにも、こっそり手紙書こうかな。









「旦那様、こちらをご覧ください」

「なんだ。そうそうに」


 夜、お仕事を終えて入浴を済ませて戻ってきた旦那様に手紙を差し出す。さすがに休憩なしだと申し訳ないから、先に入浴してもらった。

 旦那様をベッドに座らせ、肩をもんであげながら見てもらう。システィアは結局、あんまりアドバイスくれなかった。なんでだろう。


「ふむ。いいぞ。後は文面を整えるだけだな」

「うん。あのね、システィアが時候の挨拶の書き方とか、全然教えてくれなかったんだよ。ひどくない?」

「お前には、俺の許可なく教育をしないよう指示している」

「えっ、なんで?」

「何でも何も……まぁ、いいだろう」


 何もよくないですけど。て言うか、手紙ぐらいで教育になるの? そんで、俺の教育制限して旦那様は何を考えているんですか? 旦那様のしたいことはよくわからん。まぁ、旦那様なので、俺に不利なことはしないだろうし、いいけど。


「で、具体的にどういう感じの言葉を入れればいいの?」


 ベッドわきの机を引っ張り込んで、旦那様にアドバイスを受けながら下書き手紙に書きこんでいく。明日清書しよっと。

 ついでに、システィア宛ての、いつもありがとう的な手紙も書く。旦那様の指示で教えてくれなかったから、いらないかなって思ったけど、これも練習だ。手紙くらい書けないとね。


「ありがとう、旦那様。これで手紙は完璧だよ」

「まぁ、そうだな。手紙くらいは書けて損はないだろう」


 明日になったら、ラミとか、アイリーンにも手紙を書いてみよう。とここまで考えてからはっとする。


 そうだ、旦那様に愛を示すのを忘れていた。旦那様にも書かなくちゃ。でも、旦那様に出す手紙を、旦那様に検品してもらう訳にはいかないよね。よし、他の人のをいっぱい練習しよう。

 あとは、あ、そうだ。愛と言えば、愛妻弁当! これだ。やっぱり人間、胃をつかまれたらイチコロだよね。は! 思い出した。来週から各地の視察に連れて行ってくれる約束……あ、あれ? もしかして、失敗したからなし?


「あの、旦那様、そのー、来週のお出かけなんですけど」

「ん? ああ、心配するな。アンジェリカ嬢が言い出すまでは猫をかぶれていたと聞いている。ちゃんと連れて行ってやる」

「やった! 旦那様大好き!」


 わーい。デートだ。これで、ついでに愛妻弁当も作れば一石二鳥だ。完璧な作戦だ。


「ふん。おい、そろそろ寝るぞ」

「あ、はいはい。ん? あれ、旦那様」

「な、なんだ。何か文句があるのか」

「いやないけど」


 昨日いっぱいしたから今日はないかと思ったんだけど、今日もするんだ。い、嫌じゃないけど、さりげなくするっと服を脱がせるの止めてほしい。早すぎて反応遅れるし。


「あの、旦那様、その……俺も、旦那様のこと好きだし、好きだなって思うほどに、その、気持ちいいかなって思うし、そのー……嫌じゃないって言うか、むしろ、最近はありだなって感じなんだけど……」

「そ、そうか」


 う、は、恥ずかしい! でも、こうやってなぁなぁな感じで無理やり始まるのって、そろそろ嫌だっていうか。だって、いつまでも嫌がってるみたいだし。そんな、私だって、別に、いいのに。

 旦那様までつられてように照れているので、ますます恥ずかしいけど、何とか頑張って伝える。最初にすごく嫌がっちゃったから、そうじゃないよって、伝えなきゃ。


「あの、だから、私、その、は、始める時はわかりやすくしてほしいって言うか、こう、き、キスしてほしい、です」

「そ、そう、か」

「う、うん。私も、心の準備とか、したいし」

「ああ……それは、悪かったな。じゃあ、す、するぞ?」

「う、うん」


 旦那様がどこか緊張したように固い声でそう言って、顔を寄せてきたので私も目を閉じる。キスをされながら、とても幸せだなって、思った。この幸せを手放したくないから、もっと、頑張ろうって思った。


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