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癒してあげる

 朝起きて、旦那様を見送ってからそそくさとベッドに戻る。今日頑張ろうと思ってたけど、昨日は何だかんだで疲れたので、昼過ぎまではのんびりしよう。

 寝転がってだらだらしている横で、ふとシスティアが横の椅子に座って控えているのが視界に入り、ぴんときた。


「システィア」

「なんでしょうか」

「膝枕して」

「……」

「何で無言なの? 嫌なの?」

「いえ……嫌ですけど、わかりました」

「わーい」


 嫌がられてるけど無視する。確かに、普通に考えたらセクハラだよね。でも大丈夫。下心はないから。ただ確かめたいんだ。女の子の膝の良さを。

 ベッドに上がらせて、女の子座りさせたシスティアの膝に頭を乗せる。


「おー、いいね。柔らかくて、ちょうどいい。旦那様は固くて、ちょっと高いから、長い時間するとつかれるんだよね」

「お気に召されたようで、光栄です」

「長い時間したら疲れそう?」

「いえ、ベッドの上なので、少しくらいなら眠られても構いませんよ。……あの、触るのはやめてほしいのですが」


 膝頭を右手でなでなでしてたら注意された。何だかつい、目に入るし、撫で心地もいいから。

 手を離す。体勢を変えて上を向くと、システィアのおっぱいが視界に入る。ふむ。ちょちょいと指先で下からつつく。ぷにっとして若干の重量を感じる。

 腕をついて体を持ちあげ、そっとおっぱいに顔を押し当てる。おー。なんか柔らかくて気持ちいい。いい匂いがして、なんだかほっとする。


「シャーリー様、怒りますよ」

「気持ちいいとか、痛いとかってある?」

「いいえ。ただ普通に押されるだけの圧迫があるだけです。何をなさりたいのですか?」

「うん。旦那様忙しそうだし、膝枕してあげたら、疲れもとれるかなって」

「それはよいことですね」

「でしょ? で、膝枕した旦那様が何をするかなって思って、実際にシスティアにしてみたってわけ。特に不快だったりしないみたいで、安心した」

「ご安心ください。膝を撫でるくだりからしていりませんから」

「なんで。わかんないじゃん。旦那様が膝が大好きだったり、おっぱい枕に憧れてるかも知れないじゃん」

「そうだとしても私で試さないでください。そしてその結果は決して教えないでください」


 強く言われた。わざわざ報告しないけどさ。でも俺、システィアよりおっぱいあるし、絶対旦那様が下から見たら興味持つと思うんだけど。でも、むっつりな感じだしなぁ。


「わかったよ。じゃあ、自分から押し付けた方がいいかな? できる? 試してみて」

「……念のためにお尋ねしますが、シャーリー様は同性愛についてどのようなお考えなのでしょうか?」

「え? 何で? 愛に性別なんて関係ない……あ、あれ、下心とか疑われてる? 違うよ?」


 俺、男だけど、体が女だし、そもそも俺の方が可愛くて魅力的だし、そんな、システィアのおっぱいにいやらしい目を向けたりしない。全然興味ない。そもそも、


「女の人も恋愛対象だとしても、旦那様って言う相手がいるのに、他の人にそう言うの感じたりしないよ?」


 って言うね。これが普通でしょ。自分の体狙ってるのかって疑問は、俺が旦那様のこと本気で愛してないって疑ってるのと同じだし超絶失礼な話だ。

 と伝えたら、逆に呆れられた。解せない。ちなみに自分から押し付けるのは、うまくいかなかった。









「旦那様、膝枕してあげる」

「ん? どうしたんだ? と言うかまだ起きていたのか」

「だってこっちに来てから、もう一週間近く朝早くから夜遅くまで忙しそうだし。癒してあげる」


 いつもならもう寝る時間だけど、今日はちゃんとあの後、朝寝と昼寝をしておいたから、平気なのだ。旦那様をお風呂にさっさと入れてから、ベッドの上で膝枕してあげる。

 どことなく緊張したように固い態度でそっと俺の膝に頭を乗せた。だけどすぐに体の力を抜いて、そっと俺の膝に右手をかぶせた。


「……ふん、悪くない」

「遠慮せず、撫でてもいいんだよ?」

「……そうか」


 呟くように旦那様は応えて、そっと俺の膝を撫で……、なんか、段々内側にきてる。太もも側に頭があるから、別にきわどいとこ触られてるわけじゃないけど。なんか、エロスを感じる。

 いや、旦那様のためだ。旦那様の為だから。うん。ちょっとくらい許してあげよう。まったく旦那様ったら、私のこと大好きなんだから。


「旦那様、毎日お疲れさま。慣れない土地で大変でしょ」

「ふん。大したことはない。毎年のことだ。今週末には、もう落ち着く」

「え、まだ一週間も休みなしで働くの? ブラックなの?」

「よくわからんが、できるだけ早く確認を済ませた方がいいからな。例年より、来るのが遅かったからな」

「あれ、そうなの? なんで?」

「……別に、特に意味はない」


 え、怪しい。

 じーっと疑いの目を向けながら意味ありげに旦那様のおでこを撫でていると、旦那様は口の端をゆがめながら俺を見上げた。


「なんだ、その顔は。まさか、俺がお前と離れたくないから出発をずるずる引き延ばしたなどと馬鹿げた邪推をしているんじゃないだろうな」

「し、してない」

「ふん。ならいい」


 いや、よくないです……。そんな理由で出発引き延ばしたの? ほんとにこんなに口が滑る人が貴族社会でやっていけるんだ、とかも思うけど、それより、嬉しいって思ってしまう。何この人、可愛すぎかよ。8歳も上に見えない。ちょっと純情過ぎない?

 あ、そうだ。せっかくだしこの調子で、前から気になってたことについても口を滑らしてもらおう。


「そう言えば旦那様、結婚する前って、めっちゃ俺の悪口言ってたの何だったの? 昔から俺のこと好きだったんでしょ?」

「……お前には関係ない」

「その心は?」

「意味がわからん。二人きりだ、言うのは構わんが、何でも通じると思うなよ」

「で、なんでなの? 悪口言われて傷ついてたし、本人なんだから関係ないってことはないでしょ」

「……まぁ、悪かった」


 言う気はないらしい。まぁ、だいたい想像つくけどさ。さっきは言ったのに、今度はちゃんと口をつぐむって、さっきのわざとなの? 実は可愛さアピールなの?

 黙ると、旦那様は誤魔化すように俺の膝を熱心に撫でだした。あ、ちょっとくすぐったいんだけど。


「ねぇ、旦那様、そんなに、俺の膝気に入ったの?」

「き、気に入ったとか、そういう問題ではない。おかしな物言いをするな」

「あー、ごめんごめん。ていうか、そろそろいい? 癒された?」

「ふん……もう少し、やっていないとわからんな」


 どうやら気に入ったらしい。

 俺もこの間の馬車移動の時に初めて旦那様にしてもらって、なかなかいいぞと思ったんだけど、旦那様にもよかったらしい。まあ、旦那様のより俺の膝の方が気持ちいいんだし当然か。

 旦那様のはあれはあれで、しっかりしてて頼りがいある感じで、旦那様の匂いと温度を感じて落ち着くんだけどさ。でも本気で寝る枕としては、さすがに柔らかさとか足りない。


「しょうがないなぁ。もうちょっとだけだよ?」

「ああ……」


 それからぽつぽつとお話しながら膝枕を続けたんだけど、本当にお疲れだったようで、寝てしまった。仕方ない。このまま寝かせてあげよう。


「ふんぬっ」


 枕を横に引っ張ってきて、旦那様の頭をそこへ落とす。体ごと移動するから、ちと重い。


「いてて」


 そうしてようやく解放された俺の足は、しびれていた。


 やっぱりやりすぎてた。感覚なくなってきてたもん。あのあとシスティアにも練習したけど、旦那様は頭まで重いな。

 ま、旦那様のこと支えてる重さかって思うと悪くなかったけど、疲れるは疲れる。


 とりあえずそのまま掛け布団もひっぱってかける。いつのまにかよってた眉間の皺は、撫でてるとすぐ治った。よしよし。

 全く、寝ててもしかめっ面とは。旦那様らしいけど。


「可愛いなぁ」


 昼寝効果でまだ眠くないので、そのまま旦那様の寝顔を堪能する。

 耳たぶをふにふにしたり、顎のラインをなぞったり、前髪を整えたりしてると、ふと以前に旦那様の寝顔を見たときのことを思い出す。

 その時の旦那様ときたら、寝ている俺にキスしたりとやりたい放題だった。全く、困った人だ。


 でも、いつも旦那様からされてばかりだ。したいなって時は、旦那様に言うか察してもらってしてもらう。せっかくだし、旦那様の感覚を追体験してみようかな。深い意味はないけどね。寝てる旦那様見てたら愛おしさが溢れてきたとか、そんなことはないよ。

 と自分に言い訳しながら、そっと、旦那様の頬にキスしてみた。


「……ふふっ」


 どきどきするけど、同時に、凄く幸せなあったかい気持ちになる。これ、いいかも。


「おやすみなさい、旦那様」


 今日もいい夢見られそうだ。


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