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第四話

お久しぶりの更新です!




 ……地獄のような6日間が終わり、ついにクラスマッチ本番がやってきた。


 湊くんは練習中、ずっとスパルタで、帰りに肉まんをおごってくれた時以外は、本当に鬼のようだった。

 それほどバレー好きなのはわかるけど、もうちょっと優しくしてくれても良かったんじゃ……はぁ……

 バレーにトラウマ抱いたら、体育の授業、どうすればいいの~!?


 私が頭を抱えて悶々としていると、さゆちゃんがスポーツドリンクを持ってきてくれた。


 「ほい。いよいよ、特訓の成果を出す時が来たね~。」


 「ありがと。でも、バレーがトラウマになりそうだったよ……」


 素直な気持ちを述べる。


 「でもまぁ、おかげで動きが軽くなったんじゃないの?たまに様子見てたけど、昨日は香久山のスパイクに対応できてたじゃん?」


 「あんなの、たまたまだよ~。既に昨日の疲れでヘトヘトだから、今日も動けないと思うよ。」


 「特訓の成果、出せなかったらお仕置きな!」


 「だから、そんなこと言われても……って、湊くん!?い、いつからそこに!?」


 「ついさっきだよ。せっかく俺が今日は頑張ろうぜって言いに来たのに、何だよ、それは。」


 「ご、ごめんなさい……。」


 「まぁ、俺も練習中、本気出し過ぎたことに関しては悪かったと思ってる。けどさ、藍川はちゃんとついてきてくれたじゃん?それだけで、十分、力がついてきていると思うから、自分を信じてやってみなよ?今日の試合は楽しめると思うよ?」


 「……わかった。もう、やれるだけやってみるよ!」






 ……こうして、私たちは気が付けば決勝戦まで来ていた。


 「それにしても、特訓の成果、凄かったね。まゆみ、全部のスパイク拾うんだから。まるで金属と磁石みたいに吸いついていく様は、なんか、かっこよかったよ!」


 さゆちゃんは満面の笑みで親指を立てたポーズをして見せた。


 「……それって、嫌味?こっちはへとへとなのに、なぜか体が反応しちゃうんだよっ!?磁石じゃないし!!」


 「まぁまぁ。でも、本当に藍川はかっこよかったよ!バレーの素質ありまくりだね!バレー部に入ったら、絶対レギュラーだよ!」


 ――きゅんっ///――


 「香久山、その笑顔は反則だな。周りの女子が私以外ときめいてるよ?……天然ってこわっ。」


 「え?あ、藍川も……///」


 私は固まったまま声が出せなかった。

 そのまま眺めていると、さゆちゃんが湊くんに声をかけて、その後なぜか湊くんも顔を赤らめたようだった。

 なぜだろう、湊くんの笑顔を見ると、胸がきゅってなって、とにかく叫びだしたくなる。まるで、羅希くんが甘い言葉セリフをささやいているシーンを見た時のように……。

 まさか、そんなはずはないよね?

 たぶん、湊くんが王子様スマイルを解き放ったから、周りの女子たちにつられただけなんだと思う。

 だって、私は羅希くん一筋って決めているんだから……


 「さ、まゆみも呆けてないで、そろそろ試合に集中してよね?決勝戦では三年生を相手にしなきゃいけないんだから。バレー部キャプテンもいるけど、下剋上果たすんだからね!」


 さゆちゃんの声かけに我に返る。


 「……そうだね!ところで、さゆちゃんは何でそんなにやる気なの?もしかして……」


 「そうだよ!優勝グループには文化祭で使える食券、一人20枚もらえるんだよ!!食券といっても、食べ物以外のところでも使える万能券なんだから、お金を使わずに文化祭をまわれるんだよ!?そりゃ、やる気にもなるでしょ?ここまで来たら、絶対取ってやるんだから!!!」


 ……私と湊くんに任せきりにしないで、そのやる気を初めから出してほしいとは言えず、とりあえず苦笑いを浮かべる。


 「……万能券……藍川と文化祭……ふふふ……」


 ふと湊くんを見ると、なんか恐ろしい表情でぶつぶつと呟いていた。

 やはり、さっきの胸がときめいたように感じたのは気のせいだったのだろう……


 結局、私も二、三回ほどギリギリのボールを拾ったけど、狂気に包まれた二人の活躍で、決勝戦はあっけなく終わった。もちろん、私たちの優勝である。

 ……対戦相手の三年生たちは終始怯えていた。欲にまみれた人間ほど恐ろしいものはないと改めて感じた瞬間だっただろう。


 「……いつもなら、私がさゆちゃんになだめられる役なんだけどな。」


 周りが興奮しているほど、どこか他人事のように、自分は冷静でいられるものである。

 放課後も、さゆちゃんに何十回目かわからない食券の自慢話を聞きながら帰宅したのだった――。






 私は帰るなり、ベッドにダイブした。


 「羅希きゅ~ん、へとへとだよ~」


 ――ピロリン――


 「……メール?あ、湊くんからだ。そう言えば、特訓中に連絡先交換したんだっけ。でも、なんだかんだで連絡来るの初めてかも。特に急用とかなかったから、メールする必要もなくて、私からも送ってなかったし……。」


 私はメール画面を開き、受信ボックスから最新のメールを開く。


 『藍川へ。今日はお疲れさま。特訓以上の成果が出てたな(笑)……それで、もしよければ、今度の土曜日に一緒に出掛けないか?クラスマッチ優勝のお祝いと、お疲れさま会と、特訓を厳しすぎたお詫びを兼ねて、何か美味しい物でもごちそうできればと思うんだが……』


 ……湊くんとお出掛けなんて、初めてだな。

 というか、土曜日って『君ダン』の新刊発売日じゃん!!


 『湊くんへ。お疲れさま。お誘い、ありがとう。できれば、土曜日に本屋に行きたいんだけど、寄ってもらえないかな?実は君ダンの新刊発売日で……』


 『……マジで羅希くんしか見えてねぇんだな。まぁ、藍川らしくていいけど。じゃあ、土曜は9時に駅前集合な!その後、本屋寄ってから、昼に俺の行きつけの店に連れていってやるよ。』


 『ありがとう!土曜日、楽しみにしてるね。』


 『おうっ!んじゃ、おやすみ。』


 『おやすみ~。』


 ……よし、メール完了。

 次の土曜日、楽しみだな。さゆちゃん以外の人とお出掛けなんてしたことないから、何着て行こうかな…………って、これ、よく考えたら、デートなんじゃ///……ど、どうしよう!?

 でも、お疲れさま会とか兼ねてるって言ってたし、大丈夫だよね……。

 明日、さゆちゃんに相談してみよう!!


 そして、着る服もさゆちゃん任せにしようと企んだ私は、クラスマッチの疲れを取るために眠りについたのだった――――




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