意味がわかると怖い話 食料難
意味が分かってもあんまり怖くない話
略して意味怖
食料難
俺は親友と二人で世界を旅している。
ある日俺たちが乗っていた車が草原のど真ん中で動かなくなった。
どうやらバッテリー切れのようだ。
しょうがないから歩くことにした。
俺は長い間親友以外の人間と会話していない。
会話どころか人間、いや生物すら見かけない。
一体地球はどうしてしまったのだろうか。
なにもない草原をひたすらに歩く。
景色は変わらない。
もう夕暮れが近い。
「見ろ!家だ!」
親友が突然叫ぶ。
こんなところに家があるはずない。ついに幻覚症状が出始めたか。
そう思って親友が指さしている方向を見る。
・・・たしかに家がある。木造建築の家がぽつんと立っている。
「人がいないか見に行こう!」
親友はすっかり元気を取り戻したようだ。
家の前まで着いた。
さっきは見えなかったが、横に大きな牧場らしきものがある。
しかし、荒れ果てており、生物がいる様子はない。
「すいませーん、誰かいますかー」
返事はない。やはりいないか・・・。
「帰るか、人はいなさそうだ。」
そう言った矢先だった。
ギギー・・・
今にも外れそうな音を立てて扉がゆっくりと開いた。
そこには中年の女性が1人立っていた。
「驚いたわ、まだこの近くに私達以外の生存者がいたとは。」
「・・・?」
「まあ、来客なんて何年ぶりでしょう。さあさあ、中にはいって。」
「いいんですか?」
「ええ、どうぞ。」
予想外の返事に俺たちは驚いた。
「じゃあ・・・上がらせてもらいます。」
聞きたいことはたくさんある。
まずはどれから聞こうか・・・。
中に入ると女性と同じくらいの年代の男性が一人いた。
おそらく夫婦なのだろう。
「おお、本当に生きている。なんということだ。」
「あの、それはどういう意味ですか?」
「・・・?そのままの意味だが。」
「いや、そうですが、その・・・生きているとか」
「まさか、君たち何も知らないのか?」
「・・・はい。地球に何があったのですか?」
「地球上の生物はほとんど滅亡したと言われている。」
「!?・・・はあ・・・。」
「俺たちはその生き残りってわけだな!はっはっは!」
「はあ・・・。」
「まあ生き残り同士、仲良くやろうじゃないか!でも今夜だけだ。特別に今夜は泊めてやる。しかし、明日からはそういうわけにはいかない。成人した男二人の世話なんてごめんだ、それに食料だってもうパンと少しの干し肉しかない。すまないが、出て行ってくれ。」
「・・・しょうがないですね、分かりました。」
「ああ、分かってくれて嬉しいよ、でもその代わりに今夜はごちそうにするぞ!」
「え、いいんですか!?ありがとうございます。」
「ああ、そこでだ。少し手伝ってほしいことがある。頼めるか?」
「ええ、もちろん!」
「それじゃあそっちの君は・・・そうだな、近くに川がある。そこから水を汲んできてくれ。
それじゃあこっちの君は、こっちに来て晩飯の準備を手伝ってくれ。」
「はい!」
俺は川に水を汲みに行った。
「ああ、重いな。でもこの後は夕飯だ!楽しみだなあ。」
そして俺は家に向かって歩き出した。
「戻りましたー。」
「おお、ご苦労だった。そこにおいてくれ。夕飯の準備は出来てるぞ。」
食卓に向かう。
「おお!」
そこにはたくさんの肉料理、そしてパンがあった。
ローストビーフに、ステーキ、ハンバーグ。
「やったー!あれ?でもあいつはどこいったんですか?」
「ああ、あの子なら先に食べていおいてくれって言って散歩にいったぞ。
なんでも星が綺麗らしい。まあ俺たちは先に食べるとしよう。」
「なんだ、こんなに美味しそうなのに。帰ってきたらあいつの分なくなってるんじゃないか な。」
「はっはっは、まあ遠慮せず食え。くれぐれも最後の晩餐にならないようにな!」
「ははは・・・」
まったく、笑えない冗談だ。
そう思いながらも、俺は料理を楽しんだ。
「はー、とっても美味しかったです。」
「そうか、それはよかった。頑張って作ったかいがあったよ。」
「何言ってるのあなた、作ったのはほとんど私でしょう?」
「はっはっは、そうだったな。」
「それにしてもあいつ遅いですねえ。本当に全部食べちゃいましたよ。」
「ああ、心配するな。あの子にはまたあとでちゃんと食わせてやる。」
「なーんだ、作り置きがあったんですねー。それでは僕は休ませてもらいます。」
「ああ、しっかり疲れを取れよ」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
あー、とってもいい人たちだなあ、本当に出会えてよかった。
明日には出て行かないと行けないから、早く寝よう。
そして俺は、深い眠りに落ちた。
解説
食料はもうパンと少しの干し肉しか無いといっている。
しかし夕飯にはたくさんの肉料理がでている。
これはきっと親友の肉なのだろう。
そして明日の夕飯は・・・。




