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序章

 放課後の教室。


男女四人が話している。


潤 「いやあ、しかし透にはいつも敵わなかったよなあ」


秋 「急にどうしたのよ」


綾 「あ、わかった。あのいつも自分のことを見透かされてる、ってやつ?」


潤 「そうそう! 『お前は人の背中を押せる奴だけど、自分のことはダメダメだな』とか言われるんだ

ぜ? いやあ、俺のことを的確に見抜いてるよね」


汐 「要するにへたれってことだろ」


潤 「違うだろ! まあ、俺ってサッカーでもアシストは出来てもゴール決めることが出来なかったからな

あ。やっぱりそう言うところにも出てくるんだろうな」


汐 「自分に決定力がなかっただけじゃねえのかよ」


秋 「確かに潤って自分ではシュート打つこと少なかったもんね」


潤 「うるせえよ」


綾 「透くんに見透かされてるって言ったら秋ちゃんもじゃなかった? ほら、あの竹を割った中身みたい

な性格みたいな」


秋 「なにそれ馬鹿って言いたいの?」


綾 「違うって! 言い間違えて!」


秋 「はいはい私は馬鹿ですよー」


潤 「そうだそうだー」


秋 「そこで便乗してんじゃないよ」


秋 「まあ、いいけど。透に言われたのって言うとあれよね、『割り切った性格に見えてまだ割り切れてな

い中途半端女』ってやつ」


汐 「確かにお前にはぴったしだな。へたれだし。あ、案外お前らお似合いなんじゃないのか? ヘタレ同

士」


澪 「はあ!?」


秋 「何言ってんだよお前!」


綾 「まあまあ、2人とも」


潤 「変なこと言うなよな汐。お前が俺らを見透かすなんて無理なんだからさ」


秋 「そうだぞー。適当言うなー」


綾 「あはは……。でも私はそう言うの言われたことなかったからなんか2人が羨ましいな」


秋 「え、そうなの? 綾こそわかりやすいような気がするのに意外ね」


綾 「わかりやすいのかなあ私……。ちょっとへこむかも」


潤 「俺達とは小学校のときからの付き合いだけど、綾と汐とは高校からだからなあ。それもあるのかも

な」


秋 「いやあ、あの完璧超人に限って期間は大きな問題じゃないでしょ」


綾 「人によっては見た瞬間に見抜いちゃうしね」


潤 「そうそう。1組の高本見た途端に見抜いて、『お前昨日振られただろ』って言った時は冷や汗ものだっ

たよなあ」


秋 「逆上して殴りかかってきたりしてね。……まあ、透の運動能力に勝てるわけもなくて返り討ちにされ

てたけど」


潤 「後日リベンジにバスケで勝負したときもボロ負けしてて……流石にあれは同情もんだよなあ」


綾 「透くんなんでも出来ちゃうからなあ」


潤 「その上頭脳明晰。テストも一年の時からずっと……。って汐? どした?」


汐 「どうしたもこうしたもねえよ」


潤 「なんか気に障る話でもあったか今?」


汐 「お前それ本気で言ってんのか? 本気でなにもおかしいと思ってないのか?」


潤 「いや、わかんねえよ! 普通に話してただけだろ!? お前も参加してたじゃねえか」


汐 「お前本当に馬鹿だな! お前らが普通に話してた内容が既におかしいんだよ!」


綾 「ちょっと汐くん……。やめなよ。言いたいことはわかるけど……さ」


汐 「このお人よしのへたれにはちゃんと言ってやんねえとわかんねえんじゃねえのか?」


潤 「いいから早く言えよ」


汐 「言われなくても言ってやるよ、いつまで透の話をしてんだお前は! あいつは死んだ! 事故に会っ

て死んだろ!? そんなこともわかんねえくらい馬鹿かお前は?」


綾 「ちょっと……ほんとやめよ……」


汐 「この馬鹿にはそのくらい言ってやんねえとわかんねえんだよこいつは! 今日まで我慢してきたけど

いい加減限界だ」


秋 「わかんないわけないでしょ!? 私たちが何年透と一緒にいたと思ってんのよ!」


汐 「さっきも聞いたよ小学校の頃からだろ? それがどうした。それがあいつの死を忘れるちょうどいい

口実になるのかよ」


秋 「口が過ぎるんじゃないの。いつもの口が悪いじゃ済まないわよそれ」


汐 「その口ぶりだとお前も透の亡霊から逃げれてないみたいだなあ。幼馴染だからか?」


潤 「お前にはわかんねえよ! 俺達の中からあいつがいなくなった喪失感が! 今の俺たちがどんな気持

ちかなんてなわかるわけもねえよなあ!」


汐 「痛……え……なあ! お前らにも俺がどう思ってるかなんてわかんねえだろ! 人がどんなこと思っ

てるのかなんてわかるわけねえんだよ……」


秋 「それこそ透じゃなきゃ……って?」 


汐 「言ってねえだろ」


綾 「ちょっとみんな! 落ち着いてよ!」




 静まり返る教室。


それぞれが自分の机の上の鞄を持ち帰ろうとする。




潤 「帰るか」


汐 「ああ、それがいい」


綾 「じゃ、じゃあ。また明日、ね」


汐 「おう」


 教室を後にしようとする汐。


しかしそれを止めるように携帯の着信音が鳴る。



秋 「携帯、忘れてる」


汐 「あ? ……チッ」


 自分の机に戻る汐。


その間に他の三人の携帯も鳴る。



汐 「全員に来てんのか。明日の行事連絡とかかよ」


秋 「いや……これ……」


汐 「なんだよその反応。グロ画像でも送られてきたか?」


潤 「いいから! お前も見ろって!」


汐 「なんだよ……。メッセージ? しかもグループが勝手に作られてやが……。おい、これもお前の仕業

か」


潤 「なわけないだろ。俺にも来てるんだから」


汐 「じゃあ誰がこんなことすんだよ! 誰が! 透の携帯からメッセージ送るって言うんだよ!」


秋 「『この空みたいに広く大きな男に俺はなるんだ。困っている人をすぐに助けられるような人間にな。

……って俺の言葉覚えてるか?』」


潤 「『これは俺自身に向けた言葉だ。じゃあお前ら、俺がお前らに向けて言った言葉忘れてないだろう

な?』」


汐 「ふざけやがって……」


潤 「言葉遣いとかは透っぽいな」


秋 「それくらいなら誰でも真似できるよ。けど、それぞれに向けた言葉……。送られてきてるでしょ? 

みんなにも」


綾 「これは……真似できないかも」


汐 「本当死んでからも俺らをかき回すな、あいつは……」


潤 「けど誰が何の目的でこんなことを……?」


汐 「あいつの携帯を触れると言えば家族が一番怪しいか?」


秋 「でも両親がわざわざこんなことする? 透が死んだことは私たちよりもショックを受けてるはずだ

し……」


汐 「じゃあ兄弟は? あいつから聞いたことないけどいるんじゃないのか?」


潤 「どうなんだろうな……。俺も聞いたことないよ」


秋 「私もない、かな」


汐 「じゃあ他にあいつが親しかった友人は?」


潤 「……」


汐 「はっ、お前らも全然あいつのこと知らないんじゃねえか」


秋 「だって透って秘密主義で自分のこと全然言わないから!」


汐 「わかったわかった。だから知らないんだろ?」


潤 「じゃ、じゃあ! お前はあいつのこと良く知ってるって言うのかよ」


汐 「……大して知らねえよ。けど、死んだことも忘れて話し続けるようなお前らはさぞかし知ってると思

ってたんだけどなあ」


潤 「お前!」


秋 「ちょっと。本当言いすぎだよ汐」


汐 「別に。ただ俺はそう思ったってだけだろ」


綾 「私も……ちょっと辛辣すぎると思うな……」


汐 「わかんねえかなあ……」


潤 「え?」


汐 「イライラするんだよお前ら見てるとなあ! 透が死んでから今日までお前らあいつの話をしない日が

あったか? それにお前ら自身も……」


潤 「……なんだよ」


汐 「お前ら2人は未だに汐に言われた言葉の意味、理解してないんだな。……頭冷やしてくる」


 教室を後にする汐。


潤 「いつにもまして機嫌悪いなあいつ」


秋 「どう見ても機嫌が悪いだけじゃないでしょうに……」


綾 「私、ちょっと追いかけてくる。なんか事情がありそうだし、さ」


秋 「お願い。放っておいたら物でも壊しかねないわあいつ」


綾 「帰るならメッセージ送っといてねー!」




 同じく教室を後にする綾。


残された二人。


気まずい雰囲気。

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