一話 これから
まず俺たちは、魔王オーディンを倒すことにした。強そうな魔王であるが、たぶんみんなそんな感じであろうと。どうせ対して変わらんだろうと言うことで決まった。
オーディンの住むアースガルドに行くため、まずは入り口であるイグドラシルを目指すことにした。だがかなり遠い。これでも一番近い所にいる魔王なのだが。
おそらく1ヶ月はかかるであろう。というわけで、隣国のマウロイに向かう。とにかく金が欲しかった。それに装備も。みんなはそれぞれ装備を持っていた。ロザリンドはひねくれた形の杖と魔法衣。マイケルは武器は無いが、大量の薬草を持っている。あとプロテインも。ハルは両刃の短剣、30cmくらい。弓も背負っている。矢は十数本。あといろんな宝石のアクセサリーをジャラジャラ付けている。俺は防具無しの魔法剣二振と銃一丁。まだまだこれでは足りないだろう。
マウロイへはおそらく半日もあればたどり着くだろう。そう思って出発した。しかし道中山賊に襲われたのだ。
「よぉ!そこのねぇーちゃん!良いもん持ってんじゃねぇかー!?」
男が5人、俺達を取り囲んだ。
「よぉし、男2人は殺せ!女は連れ帰る」
後ろの2人が剣を抜いた。俺は長い方の刀を抜く。重い。かまえられない。仕方なく肩で支えるように持つ。
「おお!?でっけぇ剣だな?」
「マイケル、2人を守れ!」
マイケルは二人を連れて、男にタックルした。そしてそこから逃げ出すことに成功。俺は初めての戦闘だ。怖くてたまらない。このバカでかい刀で満足に戦えるだろうか?ただてさえ剣術なんかしたこと無いのに。しかし体が自然と動いた。
まず切りかかってきたひとりの剣を受け止める。止めるはずだったのだが、男の振るう剣と俺の刀がぶつかり合った瞬間、男の剣が刀をすり抜けた。
「はぁ!?」
すり抜けた訳じゃない!斬れた!あいつの剣が!斬れた刃が飛んでくる。それを間一髪でかわし、反撃する。横に薙いだ。男は真っ二つになった。返り血が飛ぶ。斬った感触はなかった。ただすり抜けた。そしたら男は真っ二つになっていた。
「なんだこれ?」
「お、おおおおい!何しやがったてめぇ!」
もう一人斬りかかってきた。俺はそれをかわし、刀を振りかぶった。男はガードの姿勢をとる。構わず俺は刀を振り下ろした。するり。鉄の塊がぶつかり合う感触は一切無く、刀は剣ごと男を斬った。真っ二つ。
「な、なんだお前?なんだその剣?」
「さぁな。俺にも分からん」
一気に近づいて、勢いを殺さずに斬りつけた。するり。また真っ二つ。刀が通った所が抵抗無く切り裂かれた。
「ぼ、ボス!」
「に、逃げろぉ!」
残った二人は逃げ去った。
マイケルが戻ってきた。
「お前、どこで剣術を習った?」
「俺は生まれてこの方剣など触ったこともない。これが初めてだ」
マイケルは驚いた表情をする。
「なんたる才能だ。恐ろしいくらいだよ、ハジメ」
「少しかっこよかったぞハジメよ」
と、ロザリンドが言った。
「すげぇ!真っ二つじゃん!怖っ!」
なんだこの刀?これが魔法剣の効果なのか?触れるもの全てを一切の抵抗を許さず切断する魔法。強くないか?これ。
「たぶんこの刀のおかげなのかな?」
「さっすが勇者様!振るう剣も一流だね!」
ハルが大げさに褒め称える。いや、俺はなりたくてなった訳じゃないのだが、剣だって急に渡されたものだし。恐ろしいのは俺自身だよ全くさ。
そんなこんなでマウロイへ向かうのであった。