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旅立ち

 我が家のテーブルを囲んでいるメンバーは、小さな少女の魔法使いと、かわいいさすらいのギャンブラーで謎の男と、筋肉。彼らはなんだかんだ言って俺を勇者と認めているらしい。ちなみになんで3人が勇者の仲間に選ばれたのかについては

「なんかかっこいいおじさんについて行ったらいつの間にかあの酒場にいた」

「教会でお祈りのついでにトレーニングしてたらこの国の兵士がやってきて連れてこられた」

「通りすがりの男とギャンブルして負けたらこうなっていたぜ」

だそうだ。ロザリンドお前危ないな。マイケルはたぶんお祈りがついでだと思う。ハルはかわいい。

 とりあえず料理を振る舞った。皆美味しいと食べてくれた。

「一人暮らしなのか?」

食後、くつろいでいるとマイケルが聞いてきた。

「そうだ。物心ついた頃にはもう親は居なくなっていた。死んだとも行方不明とも聞いていない。ただ、居なくなっていた」

「そうか、大変だったろう。だがもう大丈夫だ。これでも神父なんだ。何か悩んでいるなら相談してくれ。僕を親代わりにでも思ってくれていい」

「ありがとう。でも今は良いんだ。別に困ってない」

悩みはある。まず魔王討伐。とりあえずいろんな悩みが吹っ飛んだ。

「そうか、強いんだな」

「別にそうでもないさ。まだ魔王なんて怖くてたまらない。これからを考えると足が震える」

「それでも強いよ。歴史上のどの勇者だって、初めはお前みたいに臆病者だった。勇者に選ばれたことを嘆いていた。でもな、勇者とは選ばれるものじゃない。なるものなんだ。誰だって勇者の素質を持っている。お前にだってなれるさ」

「さすが神父だな、なんだか体が軽くなったような気がするよ」

「それはいけない!筋肉が衰えて軽くなっているんだ!」

マイケルてめぇ!せっかく良い奴だなとか思ってたのに!!筋肉バカの脳筋神父め!

「マイケル!おやすみ!」

「ああおやすみロザリンド」

ロザリンドが俺のベットを占領した。マイケルはソファで寝るらしい。ハルはもう床に転がって寝てる。俺は?みんな自分の家みたいにしやがって!とりあえず椅子を3つ並べて眠った。

 朝、目を覚ました所は床の上だった。痛い。

「やあ、おはよう」

マイケルはトレーニングしながら言った。

「おはようマイケル。朝からトレーニングなんて大変ね」

「はっはっは!別にこんなトレーニングじゃ全然足りないくらいだ」

ああそう。別にどうでもいいや。ロザリンドはまだ寝てる。

「おはよー!」

意外にも一番早く起きていたのはハルだった。

「おはようハル。体は痛くないかい?」

「あぁん、痛い。どこもかしこも!なんでだろ!?」

そりゃ床で寝てるからだ。さっき体験して知ってる。

「さて、朝食にしようか」

「はー、よく寝た」

ロザリンドも起きてきた。

「おはようマイケル!ハル!あ、あと勇者も」

ひどい扱いだ。これから一緒に旅立つってのに!

「あ、朝ご飯?作るの?これから?私がやる!」

「ロザリンドお前料理できるの?」

「バカにしないでよ!できるわそれくらい」

ロザリンドは保存室にあった適当な食材を使って、手慣れた手付きで料理を作り始めた。俺たちは魔法使いの服よりエプロンが似合いそうな小さな後ろ姿をボケッと眺めていた。相変わらず帽子を深く被っている。

「はい!出来上がりー!」

「「「おおー!」」」

それはそれは美味しそうであった。実際は美味しくなかった。

「……こ、これ美味しいな!」

「う……うん!すごい!旨いぞこれ!」

「お、おお……僕の筋肉が喜んでいる!!」

そんな俺たちを見てロザリンドは満足げに笑っていた。

 決心はまだついていない。魔王討伐なんて俺にできるとは思えない。でも行くしかないんだ。逃げれば殺される。きっと逃げなくても別の何かに殺される。なら、逃げて死ぬより、戦って死んだ方がマシだ。行こう。魔王討伐の旅に。

「みんな、ついてきてくれるかい?」

「おう!なんだかうまくやれそうな気がするぜ」

「とりあえず一緒に行ってあげるわ」

「いえーい!!当たり前だろー!!」

ありがとうみんな。一人じゃない。きっと。だからそんなに怖くない。

「よし!さぁ!行くぞ!!」

 腰に刀を二本と銃ぶら下げて、俺は旅立つ。目指すは魔王。生まれ故郷を捨て去って、殺すか殺されるかの過酷な世界に身を投じる。行き着く先はどこなのか。それは俺にはわからない。


 勇者一行はこうして、故郷アルトニアを旅立った。



あ、国の名前考えてなかった!ってことで最後に取って付けたように足しといた。

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