七話 復讐
なんの罪もない二人が、この国で死んだ。風の無い、静かな夜だった。
「ローズ…メアリー……どうして」
彼女たちは恐怖を顔に宿したまま死んでいた。傍らには王国騎士団の紋章が彫られた剣が落ちている。
「騎士団…ロバートか…やったのはロバートだな……」
オルタスの心に、醜く歪んだ炎が宿った。
「よくも…よくもやりやがったな!!」
力任せに壁を殴る。拳に血が滲んだ。
「許さねえ…ぜってぇ許さねえぞロバート!必ず殺してやる。ローズ、メアリー待っていてくれ。必ず仇はとる」
風の無い静かな夜に、一匹の鬼が生まれた。
「金、どうしようか?」
俺たちは宿の残骸の上で、1日寝泊まりした。おかげで体中痛い。野宿の方がましかもしれない。
「兵士たちが壊したんだし、兵士たちに払わせない?」
「いや、ロザリンドお前ばっちり燃やしたじゃねえかよ」
「シーッ!言わないの!」
「とにかく、オルタスを探してあいつに払わせよう。元はといえばあいつらが仕掛けてきたんだし」
「そうだな、そうしようか」
ハルはまだ寝てる。もう夜ですよ。いくら徹夜で後片付けしたといっても、もう十時間は寝ている。寝過ぎだぞハル。
「よし、二手に別れてオルタスを探そう」
「1人づつでいいんじゃない?」
「いや、また襲撃されたらまずい。せめて二人だ」
「わかったじゃあ…」
「私マイケルといくね!」
あ、はいやっぱりですねロザリンドさん。
「じゃあマイケル、ロザは任せた。俺はハルと行く」
「了解」
「おっけー!」
まあ、最適かな。これが。
二人はもう出て行った。
「おーい、ハル起きろー」
「うーまだ眠いー」
「もう夜だぞー」
「夜は寝る時間」
「いいから起きろ!」
「後五分ー」
クッ!手ごわいぜ!!
「起きろよー!!」
「後三分ー」
もういいや脱がしちまおうぜ。
「ハル、明日俺の分のご飯やるからさ」
「ホント!?」
「う、うん」
けっ、急に元気になりやがって!可愛いからいいけど!!
「みんなは?」
「オルタスを探しに行った。金を払わせるのだ」
「おっ!楽しそう!!早く行こうぜ!!」
そう言うなり颯爽と外へ躍り出た。
「早く早くー!!」
はいはい。今行きますよー。はぁ。
まさかこの剣を引っ張り出してくることになるとはな。
オルタスは一振りの巨大な剣を握る。
クレイモアなんて副団長やってた頃以来だ。
横に一薙。ずるりと全てが両断される。
ナイフは二本。片腕が使えなくなったときのために。
こうして鬼は準備をする。もう一匹の鬼を殺すために。
しかし、どこに居るんだ?詰め所みたいな所に行っても居ない。第七部隊とか書いてた気がするんだが、そこには居なかった。
しばらく探したが、見当たらない。城に行ってみるか。
俺たち二人が城へ着くと、マイケルたちも来ていた。
「あれ?見つからなかったのかい?」
「ああ、どこに居るんだか」
城だ。奴は城に居る。性懲りもなく権力に縋っている。奴は俺だけを殺す気だ。だから俺の家族を殺した。なぜやったかはわからん。もしかしたらあいつらがまずかったのか?何かの要人?だとしたら第七部隊そのものに危害が及ぶかもしれない。そうか、ローズとメアリーを殺したのは、俺に独りでここに来させる為か。なる程、あのロバートならやりそうだ。あいつはここまで変わってしまった。いい加減殺してやろう。もうあいつは騎士の器ではない。
城の門番の目を避け、裏から回った。ここは警備も手薄。
城壁を登り、飛び降りる。受け身、上手く着地できた。
騎士を1人発見、後ろから息を殺して近づいて、ナイフで首を斬る。
しかし、そこで気づいていなかったもう一人に見つかった。
「敵だ!!敵がいるぞ!!」
警鐘が鳴らされる。叫んだ兵士は殺したが、もう人が集まってくるだろう。戦う他にない。
「なんか、鐘鳴ってるぞ」
「なんかあったのかな?」
「侵入者じゃない?」
「いえーい!リズムに乗って踊ろうぜっ!!」
なにがあったんだろう?
ドン!という音がした。分厚い城門が壊れ、破片が飛んでくる。
「何だ!?」
土煙の中に、立ち上がった者がいた。
「オルタス!おいお前金よこせ!!」
「なんでお前らがここに…?」
兵士が騒いでいる。
反逆者だ!
反逆者を捕らえろ!
城門を壊された!
野郎!!
殺せ!反逆者を殺せ!!
敵は一人だ!
それを聞いていたオルタスがこちらを振り向いて言う。
「まあいい、丁度良い所へ来てくれた」
ああ、なんか、嫌な予感がするぜ。
オルタスが兵士に向かって言う。
「聞け!貴様ら!俺の仲間がやってきたぞ!これで貴様らも終わりだ!俺たち5人は皆百戦錬磨の強者達だ!王国騎士団?誇り高き王の守護者?そんな肩書き意味は無い!ここに居るのは東方不敗!いくつもの戦場で、いくつもの屍の山を築いてきた東方最強の男とその一行!死にたいヤツから前へ出ろ!」
東方不敗という単語を聞いてから、兵士たちがどよめきだした。
東方不敗?
東方不敗だと!?
勝てるのかそんなヤツに
終わりだ…もうお終いだぁ!
てかやめてくれよ。戦う事になりそうだったじゃねえかよ。なんか東方不敗と聞いた瞬間戦意が無くなったように思える。しかし
「うろたえるな!」
敵の大将だろうか?金の鎧に身を包み、巨大な槍のような武器を持った、男が馬に乗ったまま叫んだ。
「敵が東方不敗と言うならば、それこそ好機!今こそ日頃の鍛錬の成果を見せつけるのだ!伝説など圧倒してやればよい!!行けぇ!!」
う、うおぉぉぉぉ!!!
ひとりが叫んだ。そうしたら
「「「「「うおぉぉぉぉ!!!」」」」」
兵士たちが一斉に戦意を取り戻した。
「見つけたぞロバート!必ずその首落としてやる」
おいおいおいおいおい!結局戦うのかよ!東方不敗ってなんなんだよ!!ああクソ!
「ハル!ロザを高台へ連れていけ!そうだな、あそこだ!」
櫓を指差す。
「ロザはそこで魔法で攻撃、ハルは登ってくる敵を片っ端から落とせ!マイケルは俺と来い!全員生き残るぞ!!」
「わかった!」
「死なないで!」
「ロザは任せて!」
わかってるさ、死ぬもんか。こうなった以上、戦う他に無い。ならば全力を尽くすまで。
「行くぞ!」
「「「おおー!!」」」
こうして戦いが始まった。
なんか人間同士でばっかり戦わせてるなぁ




