2-1
お待たせしておりました。二部開始です。
初めて『彼』を見たのは、10歳の頃。
その国の貴族の一人が、飛獣を引き取った際の儀式の時だ。
同じ年の彼に目が惹かれて、じっと見つめてしまっていると、私が何かを感づいてしまったと思ったのだろう。
その視線を逸らさせるために、側仕えが囁いた。
――あのお方のご子息です、と。
知った瞬間、悲しみがこみ上げた。
あの方を守るためにも、私は口をつぐまなければならない。そのために私は、自分から彼に話しかけることも、親しくすることも禁じるしかなかった。
◇◇◇
高校生の合コンにホテルの広間を使用する。
それだけで十分にスケールが違いすぎると怖気づいていた私だが、ホテルの大扉が開かれた先には、まさに異世界な光景が待っていた。
「ひええええ」
小さく、ではあったけれど、私は思わず悲鳴を上げる。
白い円卓が幾つも並ぶ中、靴先しか見えない長い裾を揺らして歩く女性達。その衣装は袖のない襞を多くとって胸の下で切り替えを入れたエンパイアスタイルに似た内着に、長い袖のガウンドレスを纏ったものが多い。
それが異世界のお姫様の正装だ。
異世界との交流が始まって以来、こちらの世界のパーティードレスにも影響が出ている。とはいえ、それなりの質の布を高く使うお姫様衣装は、値段が跳ね上がる。
裾の長い、本家風の衣装は庶民が手を出し難い価格なので、膝丈ほどの物が最も流行っているらしい。
親戚の結婚式でも、そんな感じのドレスを着ている人が多かったのを覚えている。
……学生の私は否応なく制服なんだけどね。
でもいつかは異世界風衣装を着てみたかった。
お母さんに高いドレスを買ってもらうわけにもいかないので、いつか自分で買うために、夏休みや冬休みにバイトをした分は、多少は趣味に使っても、半分は貯金していた。
けれどその願いは、不意に叶ってしまった。
「ね、私のを借りて良かったでしょう? 沙桐さん」
満足そうな笑みを見せるのは、隣で暗い赤の美しい衣装を身につけたオディール王女だ。彼女の上着の縁の刺繍、本物の金糸なんですってよ! 聞いた時にはぶったまげました。
金にルビーの首飾りだってイミテーションなんかじゃありません。
ついでに最近の異世界の流行だとかいう、薔薇に金の茎やつぼみに小花が咲いているような繊細なヘッドドレスで髪を飾っていらっしゃる。
本人の綺麗さも相まって、まるで春の女神のごとき華やかさと美しさだ。
そんなオディール王女を見つめていられれば、私は満足だった。
決して自分が着飾りたいわけじゃない。
でもオディール王女は許してくれなかったのだ。
仕方なく、ドレスをお借りした私も、私はやや灰がかった青いものを着ていた。
逃げたかったが、オディール王女の侍女さんに、くすぐられて無抵抗にされた後で服をひんむかれた後、制服を隠されてしまったので選ばざるを得なかった。
そしてオディール王女のドレスの中から一番地味なのを選んだのだが、高級なのがわかる着心地が柔らかなドレス様に、私なんかが着て申し訳ない気分になってしまう。
オディール王女は、そんな私の戸惑いをきれいさっぱりと見ないふりをして言う。
「灰がかった青って私合わせるのが苦手な服だったのだけれど、沙桐さんにはぴったりね。髪飾りも色違いで、なんか姉妹みたいで楽しいわ!」
白い真珠のような髪飾り自体は、可愛いけれどおとなしめで素晴らしい品だ。
けれど色違いなだけに、美人のオディール王女と比べられそうで鬱だ。
しかしここまできたら諦めるしかない。足首丈のドレスを踏まないように歩いて、大人しく会場に入っていく。
中にいるのは五十名ほどだろうか。
お付きを連れている人もいるし、異世界人の友人を呼んでいる人もいるそうで、留学生の数そのものは半分以下というところだ。
基本的に異世界から留学してくるのが高校生から大学生くらいの年齢の若者だからか、付き添いや連れも十代が多いようだ。
合コン自体は立食形式で、部屋の壁際には座って休めるようにソファが幾つも並べられている。正直上流階級のパーティーみたいだなという感想を持った。
テーブルに近寄って話に混ざり、意気投合したら個別に話をしてね、という主旨らしいが、私は誰かと交流を持つ気はない。
なにせ異世界人の留学生な皆さまは、顔面偏差値上位ばかりなのだ。
その中に、イタチみたいだのと言われる私が入ったあげく、本気で相手を探したりしてみなさい。身の程知らずと思われてしまう。そもそも、容姿のことなど気にならないような、何かの技術を持っているわけでもないのだ。
なので私のことは、ゆるキャラが何かの企画で合コン気分を味わいに来たのだろう、ぐらいに認識してくれるとありがたいなと思っている。
だからこっそりオディール王女から逃げようとした。
最初は一緒にテーブルに連行された。
オディール王女は、三年生の異世界人を見つけて挨拶をしていたので、その間に逃れようと思った。
けれどオディール王女が彼に私を紹介してしまったので、愛想笑いを浮かべて挨拶をしつつ、いそいそとテーブルの食べ物を取る。
彼の方も、どうやら私が逃げ腰なのは察してくれたようで、苦笑いする姿に(ごめんなさい、ごめんなさい!)と小さく頭を下げて、皿を満たす。
そして先手必勝とばかりに宣言した。
「それじゃオディール様、私ちょっとお腹すいちゃったので、食べてきます!」
堂々と言えば、さすがのオディール王女も引き止められなかったようだ。なにせオディール王女は、私に眺めるだけでいいと言って、参加させたのだ。強制的に交流させるわけにもいかなかったのだろう。
私はそれっとばかりに壁際の空いているソファに腰かけた。
おなかが空いていたのは本当だったので、美味しくいただく。
「何このロースト美味しい。子羊肉の骨付きとか塩コショウとローズマリー以外に何のスパイス使ってるんだろ……。ミートパイとか肉汁たっぷりな上に、バターの香りで満腹になりそう。でももっと食べたい」
ちょっとずつとってきた食べ物は一瞬で無くなってしまう。口もつけずに話しこんでいる人は、もったいないことしてるなとと思うほどおいしかった。
おかわりしたかったが、テーブルに近よったらオディール王女に捕獲されそうで怖くて、しばらくはソファに座っていることにする。
代わりに、ホテルの人が通りがかったので飲み物をもらった。
喉も乾いていたので、一気に煽って微炭酸のほのかな甘みがあるレモン水に唸る。
「くーっ、美味しい! もう一杯欲しい!」
「うちの騎士団長に似た飲みっぷりですね師匠」
「むぐ……っ」
唐突に声をかけられて、危うく吹き出しそうになった。ぎりぎりで堪えた私は偉いと思う。
そして顔を上げた瞬間、今、口に食べ物を入れてなくて良かったと心底思った。
青い海の真ん中に、金の花を投げ込んだような印象を受けた。
内側の白いシャツや灰色のベストとズボンだけでも十分に洗練された服装だ。その上から裾の長い中近世のヨーロッパ貴族が着ていたような裾長のジャケットを羽織っている。それは深い青で、彼の金茶の髪がよく映えている。
その顔までもいつもより物静かな人のように錯覚して……なんだか目に毒な物を見た気がした。
無意識に凝視してしまう。目が他を見てくれない。
きっとこの青くてかっこいい上着が悪いんだ。いつもへんてこりんなことばかりしているエドに、目を奪われるなんてあり得ない。
何度かそう自分に言い聞かせて、どうしても離れてくれなかった視線を、苦労してそらした。
けれどまだ変な感じがしてしまうのは、エドの方が私の方をじっと見たまま何も言わないからかもしれない。
なんで見てるんだろう……と私は困惑する。
ご飯にがっつきすぎて、顔に何かついてるのだろうか。でもそういうことなら、デリカシーや配慮がすっぽ抜けたエドはあっさりと言うだろう。「師匠、頬に肉の破片が貼り付いてますよ」とか。
落ち着かない状況を変えるため、私は自分から話を振った。
「えっと……エド達は今ここに着いたの?」
「いいえ。師匠を発見する20分ほど前から居ります。むしろ師匠のお仕度が遅いことに驚きました」
「仕方ないわよ。王女が衣装の色もなかなかオーケー出してくれないし、装飾品をとっかえひっかえして色んなものを試させようとするし。これでも随分急いでもらったのよ」
言いながら私は思い出す。
確かエドって、私のこと騎士の同僚扱いしていなかったっけ。女だと思っていないから、支度に時間がかからないと思っているのではないだろうか。
なので思い違いを正そうとしたのだが、エドの思考はさらに上を通り抜けていた。
「師匠、着替えごときで遅れをとってはなりませんよ」
「遅れをとるって、私にどうしろと……」
「それが当然のことだと、幼少期から騎士団で団長に教えられました」
「私騎士じゃないし! あとその団長って誰よ。そもそもさっき、私の飲み方が似てるって……」
「団長は、ルーヴェステイン騎士団の団長です。御年53歳でしたか。仕事後にはエールを煽るのが一番だと仰っていたのですが、師匠の先ほどの飲みっぷりが、幸せそうにエールを煽る団長に似てるな、と」
「ちょっ……!」
抗議したかったが、あまりのことに声が出てこない。
いくらなんでも、十六歳の女性に、五十三歳のおじさんが晩酌のビールを煽るのと似てるネ♪ なんて言うとはどういうことだ!!
わなわなと肩が怒りで震えるが、口はぱくぱくと開け閉めを繰り返すばかり。
これでいつもだったらエドに説教するか、諦めて流せただろう。が、今の私はオディール王女に着飾らせてもらった上、さんざん「似合ってる! 可愛い!」とおだてられた後だったのだ。
ショックが強すぎた。
心の中で怒りに涙を流していた私だったが、そこへ救世主が現れた。
「女の子になんてことを言うんだよ、エド」
エドの肩を叩いてたしなめてくれたのは、アンドリューだ。
ルーヴェステイン組はそろって深い青い服を着てきたようだ。
エドは銀糸の飾りを施しているのに対し、王子のアンドリューは金だ。彼の透き通るような髪色にも青が良く似合う。彼の美少年っぷりに、感嘆のため息しか出てこない。
「こんばんはアンドリュー」
「お疲れ沙桐さん」
挨拶の前にねぎらわれてしまった。まぁ、この異世界人合コンに連れてこられてしまったのは、アンドリューのせいでもあるので、その意味を含めてのことだろう。
しかしアンドリューはさすが本職の王子様だった。
「それにしても綺麗だね沙桐さん。ドレスが良く似合ってる」
「あ……ありがと」
さらりと褒められて、照れてしまう。
「まぁ借りものだから、服が素晴らしすぎて着られてる気分というか、さすがオディール様だよねとか、地味な色を選んだつもりなんだけど、これでも私には華やかすぎて、落ち着かないと言うか」
とっさに返せず、なんでか言い訳がましいことを口に出してしまう。そもそも褒められることが多くないので仕方あるまい。
「そそ、そうだ。アンドリューもとても良く似合ってるね、その服。二人とも青ってことは、ルーヴェステイン王国のカラーとかそんな感じなの?」
「うんそうだよ。別に全部青ってわけじゃないんだけどね? 今日はエドがどうしても譲らなくて……」
「本日は、我が国の威信をかけて、殿下を売り込まなければならないのです!」
ずい、と身を乗り出すようにして、エドが力説する。
「威信ってそんな大げさな……エドは僕にお嫁さん探ししてほしいだけでしょ?」
「大げさではございません! これだけの結婚を望む人間がいる中、誰一人ともおつきあいをできなかった、などということがあってはいけないのです! 決して敗者になってはなりません!」
鼻息も荒く主張したエドは、鋭い目で会場内を見回し始める。獲物を探す鷹のようだ。
一方のアンドリューはため息をついていた。
「なんか、僕が今まで何度も合コンに参加していながら、誰にも振り返ってもらえなかった人みたいに聞こえるんだけど……酷くない?」
「確かに酷い言われようよね……」
アンドリューは非の付け所がないような人だ。顔よし、頭よし、騎士の馬鹿みたいな能力はないようだが人間としては充分な運動能力に、地位までセットで持っている。むしろすごすぎて嫉妬とか考えられない存在だ。
正直なところ、国元へ行けば黄色い声を上げてくれるお嬢さん方など沢山いるだろう。付き合ったことだってあるかもしれない。
……ただ、周囲が「ケッコン!」とシャウトしているのに、問題ないよと言い返さずにいるのはどうしてかと思う。アンドリューほどの人なら、さらっと「候補は沢山いるから、時期が来たら選ぶよ」なんて言ってもおかしくないだろうに。
と、そこで思いつく。
「ね、アンドリューって政略結婚する予定なの?」
「なんで?」
「エドが息巻いてるからよけいにそう思うのかもしれないけど、アンドリューの消極的な所とかって、結婚したくないとかじゃなくて、他人が勝手に決めちゃうから努力する気力がないって感じ」
どんな人を選んでも、他人の意見が優先されるのなら、自主的に努力しようとは思わないのではないか。
アンドリューは苦笑いする。
「まぁ、エドが一生懸命好みの相手を探してきてくれても、ふるいに掛けられるのは確かだし、一人も残らない上に、交流もしたことがない別な人に決定しましたって言われる可能性は高そうだね」
どうやら私の予想は当たったようだ。
「じゃ、どうしてエドはあんなにがんばってるの?」
「あ……うん。まぁ、なんというか」
言いにくそうにしながらも、アンドリューは教えてくれた。
「エドにそれを命じた人がね、ちょっとお節介だったというか。国内では派閥の力関係もあって、好みで選ぶとか難しいけど、異世界の人は別枠だからね。そこで、留学してるうちに恋愛ぐらいさせてやれ、ってエドに色々言ったみたいで。……後、エドのためでもあるかな」
「エドのため?」
「ほら、エドって僕より純粋培養で、融通聞かない人だから。僕のことを口実にして、女性と少し交流を持つようにしておいでって思ったらしいよ」
「なるほど納得」
エドは、故郷では見かけたら捕獲しろと思われるほどの良物件だ。幼い頃に頭角を現してしまったせいで、保護のため大人たちが飢えた婚活女性から隠す環境に置いていたら、見事に朴念仁になったという逸材である。
礼儀作法として貴族女性への対応を覚えても、若い女性には慣れていない彼のためと言われると、そう仕向けた気持ちは理解できた。
正直、ただ護衛の兼務で留学させたら、女子に近づかずに終わってしまうと思われたのだろう。
ただ、それが理由の全てではない、と思う。
もし自分が子供を留学させようという立場だったとしたら、恋愛のことだけで留学させるわけがない。
しかもエドは、バカみたいに強いらしいのだ。魔獣に対する国の防衛を考えたら、普通は留学などさせない。政治的な何らかの理由が絡んでの決定だろう。
でも私はしょせん部外者だ。深くは突っ込むまいと口をつぐむことにした。
するとそのタイミングで、あらかた目をつけたエドが、アンドリューに様々な人を指さし始めた。
「殿下、あのローナベルの花の側にいらっしゃる女性はいかがですか? 所在なさ気な風情が、とてもお淑やかそうです」
「うーん」
「ではあちらのソファにお座りの、黒髪の女性などいかがでしょう」
側にいたものの、先ほどまでの話は耳に入っていないのだろう。エドはがんがんアンドリューを押す。
しかしのべつまくなし…というわけではないようだ。
そのほとんどが壁の花、もしくは女の子と一緒にいる人ばかりだ。何か法則でもあるのだろうか。
「エドはどうして彼女達がアンドリュー向けだって思ったの?」
「結婚相手にするなら、お淑やかな女性が一番だと小耳にはさんだことがありましたので、壁際に立ったまま大人しくしている方を……」
「は……?」
私は思わず聞き返してしまう。
「大人しそうであればいいって……こう、なんかアンドリューにだって好みとかあるじゃない? ねぇ?」
アンドリューに話を振るが、彼は肩を落として言った。
「とりあえず僕もお腹が空いたから、料理とってくるよ」
ひらりと手を振ってアンドリューが離れていく。
きっと説明してもエドにはわからないと諦めているのだろう。
しかしエドはこの機に乗じて、アンドリューの嫁発掘計画を進める気満々で、アンドリューを追いかけようとした。
私は武士の情けだと思いながら、エドの袖を掴んで引き留める。
「あまりお節介焼いても苦手意識だけ大きくなっちゃうよ。誰かを好きになるのって、理性でどうこう出来ることじゃないんだからさ……ある程度人が集まる場所に来たなら、アンドリューの自主性に任せたら?」
そう言うと、エドが「理解不能」と言いたげな表情になる。
「そういえば、以前も師匠から殿下の好みを探るように言われましたが、結局分からなかったことを思い出しました。そもそも殿下の好みとはどんな女性なのでしょう」
「えーと、エドだって好きな食べ物とかあるでしょ? 口に入ればみんな同じとは思わないじゃない?」
「食べられれば問題は感じませんが……」
「くっ……」
食べ物なら、誰だって何かしら答えると考えての質問だったのだが、さすがエドは予想を外す男だった。
栄養になれば別に、みたいな返答に、どう対処していいのか困る。
きっと食べ物で例えたからいけないんだ。極端な例でわかりやすく……と思った末、私は思いつく。
「じゃあこれならどう? キースが差し出す飴と私が差し出す飴だと、どっちなら受け取ってもいいと思う?」
ようやくエドが思ったような答えを出してくれる。
「絶対的に師匠です。あの男は何を混入してるかわかりません」
「それよ! ああ、ようやく例え話が通じそうで嬉しいわ」
さすがに今の綺麗になったキース(+フェリシア)は混入事件は起こさないと思うけども。でも話がややこしくなるので、茶々は入れない。
ついでにエドに闘争本能以外が備わっているのかわからないので、一般的な男性の可愛い女性に惹かれることとか、肉感的な女性に惹かれるといった話も排除する。
大まかに、ずっと一緒に居たくなる相手について語ることにしたのだ。
……政略結婚が一番ありえそうなアンドリューの傍に居るのなら、そっちの方向性で女性を見る目を養ってもらった方がいいように思うし。
「えーと好きになれる、なれないって感じるのは、自分に良くしてくれる人の傍に居たいとか、そうしてくれそうな人だと感じることだと考えたら、エドにもわかる気がしない? 理由は人それぞれで、自分に優しくしてくれたとか、かばってくれたとか、その人だけは自分と向き合ってくれるとか、新しい知識を教えてくれるからとか、いろいろ理由があるけど」
「…………」
ようやく話が進むと思いながらそうしめくくるが、エドが何やら難しい表情になる。
「どうかした?」
「いえ……問題ありません」
問題ないと言いながら、さりげなくエドがちらちらと私の顔を見ている。
何か変なことを思いついてしまったんだろう。
私は話をそのまま終わらせた。
エドから渋面になる理由を聞くのはいいが、それが先ほどの話についてエドが勘違いしていた場合、また訂正して分かりやすい例を考えるのが面倒だったので。
早くアンドリューが帰ってこないかなと会場に視線を移した私だったが、視線の先で、厳しい表情をしているヴィラマインを見つけたのだった。