第五話 「変化」
あれから半年が過ぎ
季節は夏から秋へまだまだ暖かい日もあるけど冬を思わせる日が多くなってきた。
ある日・・・
あれから俺は大河、剛とつるんでよく遊んだ。
剛は事件以来寄り付かなくなっていたクラスメイトともすぐに打ち解け
今ではクラスの人気ものだ。
それどころか、すでに2人の女の子から告白されていた。
だが、ほかに好きな人がいるからと剛はそれを断った。
もちろん好きな人とは香澄である。
ただあれから、剛は香澄に告白できずにいる。
どうもいざ告白となるとなかなかできないみたいだった。
大河と俺はいろいろ作戦を考えたが、ラブレターがいいとか、
やっぱり本人に直接言わないとダメだとか、悪い奴に襲われているところを
剛が助けて告白するとか、
でも俺らは、いい方法が思いつかないまま今に至る。
昼休み。
剛・大河・俺の3人で話をしていた。
「クリスマスまで2ヶ月切ったよな」
「そうだね」
「おれよぉ、クリスマスまでに香澄ちゃんに告白して
ラブラブなクリスマスを過ごすんだ!!」
「お!ついに告白する気になったか!!」
「今度こそ告白するぞ!!」
「おお!!本気だ」
大河が笑いながらいった。
「なぜ笑う!!」
実はこの会話幾度と無く繰り返された会話なのだ。
「1学期の終業式に告白する」「体育祭までに」とか「文化祭までに」とか
何かイベントがあるとそれまでに告白すると言っておきながら告白できないでいる
なんだかんだ言っても、告白って早々できるものじゃない。
その点女子ってだれだれに告白しただとかよく話してるけど、度胸あるよな・・・
俺も剛と一緒で好きな人ができても告白できないだろうな。
剛ほどの豪快な奴でも告白となると・・・
それどころか剛みたいにあからさまに友達に好きな人がいることを
言ったりできないだろうな・・・
本当に告白できなくてもこうやって友達に言える剛が羨ましいと思った。
そんなことを思っていると剛が・・・
「ところでよ。由悠に頼みがあるんだけど」
「ん?なに?」
「お前さ香澄ちゃんの幼馴染みだろ。好きな人がいるか
聞いてきてくれないか。それともしってる?」
「いや、知らない」
「だったら頼むよ!香澄ちゃんに聞いてくれ!!」
「それいいな!!もしこれで香澄ちゃんが剛のことスキだってことなら、
相思相愛だしな。そうなら告白成功間違いなし!!」
「そうなんだよ。それにさ。たとえ俺のことがスキとかそういうのでなくても
他に好きな人がいなければ、チャンスがあると思うんだよ」
「俺イケメンだしな。由悠頼むよ~」
「自分でイケメン言うな!!」
そう言われて俺は困ってしまった・・・
香澄とは世間話や冗談を言い合ったり普通に話はしていたけど、
今まで1度も恋愛の話をしたことがない。
というより・・・恥ずかしくてそんなこと聞けない・・・
「無理だよ・・・そんなこと聞いたことないし・・・」
「そんなこと言わずに聞いてやれよ。それとも聞けない理由でもあるのか?」
いま、大河が俺に向かってニヤっとしたように見えたが気のせいか?
なんだよ!!お前は!!何が言いたい!!
「特にないよ・・・」
「なら問題ないじゃん!!さらっとお前好きなやついるの?
とか聞けばいいんだからさぁ」
「でも・・・」
「頼むよ。な!な!」
そして剛の強引な押しに負けて結局引き受けることになった。
しかし、香澄になんて切りだせばいいんだ・・・
わかんねー・・・どうしよう・・・
数日後、俺は意を決して放課後、香澄のところに行った。
香澄は音楽室でフルート奏でていた。
黒い肩まで伸びた髪をゆっくりと揺らしながら綺麗な音が聞こえてきた。
いつも見ている香澄と違い、集中している真剣な姿につい・・・
それに見とれてぽつりと・・・
「かわいいかも・・・」と自然と俺はつぶやいていた。
えっ!!違う!違う!!あわてて周りを見回すさすがに
誰にも聞かれてないよな・・・何考えているのだ。
俺は・・・落ち着け・・・そうだ深呼吸だ。
気持ちを落ち着かせるために深呼吸していると
香澄が俺に気が付き、駆け寄ってきた
「どうしたの?今日は大河君や剛君とは一緒じゃないの?」
「二人とも今日は用事があるってもう帰った」
「そうなんだぁ。それは残念でしたね。で、なんで私のところに??」
う~ん・・・こまった・・・話を切り出せない・・・どうしよう・・・・
何をどう言えばいいのだろう・・・頭の中でぐるぐると考えが回って・・・
困った俺の・・・口から出た言葉は・・・
「久しぶりに一緒に帰らないか?」
あぁなんてこと口走っているんだ俺・・・ちがうだろ・・・
聞くのは、香澄に好きなやつがいるかどうかだろ・・・
あぁ・・・俺のバカバカ・・・
「え!どうしたの?急に!!」
こうなったらしょうがない・・・帰り道の中で聞くことにしよう・・・
「だめかな・・・」
「ううん」と顔を横に振り、香澄が
最近見たことないような笑顔でニコッと笑って
「いいわよ。ただし部活終わるまで待っていてね。もうちょっとで
終わるから、それまで待っていてくれるなら、一緒にかえろっ!!」
「わかった。待ってるよ。そしたら下駄箱ところで待ってるね。じゃー後で!!」
俺は香澄に手を振りながら音楽室をはなれた、
香澄もそれに合わせて胸元で小さく手をふってくれた。
久しぶりにあんな笑顔見た気がする。あんな笑顔見たのいつ以来だろ。
なんかちょっと嬉しくなりウキウキながら下駄箱に向かった。
向かう途中、
なんか香澄の奴は帰ろうって言った後、すげー笑顔だったよなぁ
あんな笑顔するの久しぶりに見た気がする。
ちょっとかわいいかったかも・・・
かわいい???なに考えている俺・・・てか・・・
なんで俺がウキウキしているんだ・・・
香澄と一緒に帰るだけだろ・・・
小学校のころはいつも一緒に通学しったじゃないか・・・・
それなのに・・・なに喜んでいるんだ俺は・・・
香澄はただの幼馴染じゃないか・・・
下駄箱でそんなことを悶々考えて待っていると・・・
階段を勢いよく降りてくる足音が聞こえてきた。
だんだんと近づいてくる。そして現れたのは香澄だった。
笑顔で俺の方に走ってきた。
「はぁはぁはぁ・・・」
走ってきた香澄は息が切れてその場に止まって呼吸を整えた。
「お待たせ!!部活終わったよ。帰っろか」
「どうしたのそんなに走ってくるなんて?」
「え!だってよしくんが一緒に帰ろって言ってくれたの
小学校の4年生2学期の終業式までだよ。」
「そうだったっけ?よく覚えてるなぁ・・・」
「そうだよ。それから私が何回か誘って帰ったことは
あったけど誘われたのはそれ以来ですよ」
「そっかぁそんなに前だったっけ。それは大変失礼しました」
英国紳士がするようなお辞儀をして見せた。
「何やってるのよ♪」
やっぱり香澄がすごくご機嫌な感じがする。
ただ一緒に帰るだけなのになんでだろう?そして、2人で歩き始めた。
そういえばこんな近くで香澄を見るの久しぶりだなぁ・・・
でもやっぱり香澄の方が背が高い・・・
俺は春に計った時は149cmしか背が無かった。
クラスの男子の中で一番背が低い。これでもだいぶ背が伸びた。
でもそれ以上に香澄も背が伸びた・・・
香澄は158cmあり10cm近く背が違う・・・
並ぶと一学年違う風に見えるぐらいの感じだった・・・
実はこれ・・・俺が香澄を一緒に帰ることを誘わなくなった原因だった。
そのことは香澄も知らないだろうけどね。
小学校の4年の2学期の終業式の日・・・
教室で通信簿が配られ、俺は香澄と一緒に通信簿を見ていた
香澄の通信簿はAがいっぱいついていた、ほとんどっていうのは体育がBになっていただけで後はみんなAだった。運動が苦手な香澄ならしかなないかけど、それ以外はAですごいと思った。
俺の通信簿というとBがちょっとであとはほとんどC・・・
A・・・は効かないで・・・
俺のいた小学校はABCの3段階評価でもちろんAが一番いい
頭の悪いことを自覚していた俺はそんなことは全く気にしていなかった。
しかし、この学校の通信簿は必ずその時の身長体重が記入されていた。
香澄の通信簿の身長の欄を見て俺は動きが止まった・・・
俺より1cmだけど背が高かった・・・
それまではずっと俺の方の背が高かったのに・・・
香澄の方の成長が速く追い越されてしまったのだ。
些細なことかもしれないけど・・・それを見た瞬間・・・
思いのほかショックだった・・・
俺は香澄と一緒に帰れないと思った。
やっぱり男は女より大きくなくちゃと思っていたからだ。
それからは香澄に誘われれば一緒に帰ったが誘われない限り自分から誘うことはなかった。
そして5年生になって大河と遊ぶようになって香澄と帰ることはほとんどなくなってしまった。
でも香澄のやつもよく俺が誘わなくなった日を理由も知らないのに覚えているなぁ
さて、歩き出したのはいいけど・・・
何を話す・・・もちろん好きなやつはいるか、
そいつは誰だとか聞かなきゃならないけど・・・
どうかって話を持っていけばいいかかわからない。
無言のまま香澄が俺の隣を肩が触れそうなぐらい近く歩いていた。
ふと・・・これって恋人同士みたいじゃん・・・いいのかなぁ
おれは幼馴染であって恋人じゃないましてや俺は香澄より背が低い・・・
こんな男と一緒じゃ迷惑だろうな・・・
なんて思いっきりネガティブな考え方している・・・
そんなことか考えて結局校門を出るまで何もしゃべらずに来てしまった。
校門を出ると・・・
「どうしたの?ずっとだまっているけど・・・」
「あ・・・そうだね・・・え・・・っと・・・ぶ・部活大変かい?」
「なに急にそんなこと聞いて・・・大変じゃないわよ。楽しいもの。」
「あのフルートを吹いている時とっても幸せな感じになるの。
だから大変だなんて思ったことない」
そういうとニコッと俺に向かって笑った。その時ドキッとした。
心の中で自然につぶやいた・・・「こいつやっぱり可愛いかも・・・」
それと同時に・・・「可愛い訳ないだろう。」とむりやり感情を押し込めた。
俺は剛と香澄を恋人同士にする剛に約束したじゃないか。
香澄は幼馴染であってそれ以上でもそれ以下でもない・・・
だから聞かなきゃ・・・好きなやつがいるどうか・・・
それから香澄とたわいもない話をしながら、家に向かって歩いた。
そして、香澄の家の前まで聞けないまま来てしまった。
「今日は誘ってくれてありがとう。よしくん、
ずっと誘ってくれなかったから、うれしかったよ。」
香澄にそんな風に言われて胸の奥が締め付けられるように痛みが走った。
俺の心内にも気がつかず、そういうと香澄が玄関方に歩きはじめた時に
このままでは聞けないまま終わってしまう。意を決して香澄に向かって声をかけた
「香澄!!」
香澄が立ち止まって振り向いた
「なに?」と不思議そうに俺の方を見た。
「え・・・っと・・・」
その顔をみるとなんか聞きづらいな・・・でも剛のためにも気かきゃ!!
ためらいつつ聞いてみた。
「・・・今、香澄って好きな人いる?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「ちょっと気になってさ・・・」
「知ってどうするの?」
「もしいれば、俺が協力してあげようかなって・・・」
そして香澄の顔が先ほど俺に向かってありがとうって言ってくれた顔から
みるみる笑顔が消えていった。
「だから、好きな奴とか気になる奴とかいないの?」
「協力ってなに・・・」
「相手の奴に俺が掛け合ってもいいし、二人になれる時間を大河たちとで
つくってもいいし俺のできることだったら何でもするよ」
「・・・・」
香澄と俺はしばらく黙っていた。
俺もなんて言っていのか分からなくなってしまって・・・
香澄がしゃべるのを待っていた。
しばらくの沈黙の後・・・
急に涙をぽろぽろと流し始めて・・・
「よしくんにそんなこと聞かれたくない!!!!忘れちゃったの!!」
「そんなこと聞いても答えない!!!!だって私は・・・」
「よしくんのばか!!!!!!」
え!だって私は・・・ってどういうことその先はなに???
バカってって・・・え、え、え、・・・なんで泣いてる・・・
どういうこと・・・
頭の中が混乱している間に香澄は走って玄関の中に入ってしまった。
俺は香澄を追いかけることもできずにその場に立ち尽くすしかなかった・・・
それから香澄が入って行った玄関をしばらく見つめていた・・・・
しかしそこから香澄は出てくることはなかった。
日が暮れた暗い道を・・・とぼとぼと歩き家に向かった。
家に着くまでの間なにも考えられなかった・・・部屋に入りベットに倒れこんだ。
そしてもう一度考え直してみた。今日の香澄がどうしたんだ?
俺が好きなやつはいるかって聞いて協力するよって言っただけなのに・・・
そして最も気になるのは・・・『だって私は・・・』
この言葉・・・その先はなにが言いたかった?
わからない・・・
ただわかっているのは俺の言った言葉がのどれだかわからないけど
香澄を深く傷つけてしまったことは確かだってこと・・・
謝りに行った方がいいかな・・・いや謝りに行かなきゃだめだ。
あした学校で香澄に謝ろう。
あと・・・剛や大河になんて説明しよう。
頭の中にいろいろなことが駆巡り・・・頭から煙が出るかと思うぐらい悩んだが・・・
どうしていいかわからないまま翌朝を迎える・・・




