第二話 「転校生」
午後の授業が終わりホームルームの終わり際、担任の先生から
「そうだ、そうだ!忘れていた。」
「来週から転校生が来る」
「一人新しい仲間が増えるから楽しみにしていてな」
と話した。クラス全体にどよめきが起こる、そこでつかさず大河が先生に対して
「先生!!転校生は男子ですか?女子ですか?」
「ん?みんないま聞きたいか?」
一斉に「聞きた~い!!」
「そうか、内緒にしておこうかと思ったけど、それなら教えよう」
「男子だ!!なかなかかっこいいぞ」
その瞬間、クラスが真っ二つに意見が分かれた。
もちろん・・・
男子はブーイング
女子は期待を膨らまして話していた。
香澄も前後の女子と「楽しみだねぇ」と笑顔で話していたのが見えた。
楽しみって・・・その姿を見た俺は、なぜかちょっと胸の奥の辺りがちくりとする感覚がおきた。
何だ・・・この感覚・・・香澄の顔を見ただけなのに・・・
最後に先生が
「転校生とは早くこの学校になじめるように、みんな仲良くするのように!!」
クラス全員を見渡しながらいい、みんなも返事をした。
「では、ホームルーム終わり」
と言って先生は教室を出て行った。
転校生かぁ、どんな奴だろうと想像していると後ろから肩を軽く叩かれた。
後ろを振り向くと大河が
「さぁ帰ろうぜ!!家に帰っていつもの格ゲーやろうぜ!!」
「よっしゃー今日は負けないぜ!!」
「ははっ!返り討ちにしてくれるは!!」
とゲームの話をしながら大河と二人で席を立った。
香澄は女の子たちとまだ教室でお喋りしていた。
チラッと香澄の後姿を見ていつもの香澄だと確認して教室をでる。
香澄とは小学校の四年生ぐらいまでは時々一緒帰ることがあったけど
五・六学年になるころには一緒に帰ることはほとんどなくなったなぁ。
それと正反対に大河と一緒に帰ることが増え、今日のように学校が終わると
一緒に帰り毎日のように遊びまわっていた。
部活は大河と俺はやっておらず、それより遊びたかった。
先生には部活に入れ!!とか言われていたけど、やりたいスポーツないし、
興味のわくような、それ以外の部活も無かった。
興味がわかないだから勉強も部活もできないのだよな・・・
ちなみに香澄は吹奏楽部に所属している。
翌週、朝のホームルームの時間
先生がチャイムとともに教室に入ってきた。
「おはよう」
「「「「「「「おはようございます」」」」」」」」
「さーて、さっそくだけど先週の言っていた転校生を紹介する」
廊下に待たせてあった転校生を招き入れる
「この子が新しい仲間だ」
入ってきた男子は背が高く百七十センチ超えてそうな感じその上、
笑顔がさわやかな、男の俺からみてもイケメンだった。
背の低い俺はちょっと羨ましく感じた。ちなみに俺は百四十九センチしかない。
俺もあれくらいでかけりゃ・・・
香澄の隣立っても違和感無いのだけどなぁ・・・
って、なに考えている・・・俺・・・香澄の隣に立つ必要ないじゃん・・・
馬鹿だ。俺・・・やっぱり背の低いことがコンプレックスだよなぁ・・・
切実に思う。背が高くなりたい。
そんな卑屈な俺をよそに女子たちは一斉にかっこいいとか素敵~とか盛り上がっていた。
それに反して男子たちは・・・なんか憮然としない感じだった。
少なからず、俺と同じ気持ちなのだろうな
「先生の言った通りイケメンだろ」
「じゃーさっそく自己紹介してもらおうかな」
転校生の肩を軽く叩いてそういった。そうして転校生は一歩前に出て話し始めました。
「五十嵐剛といいます。」
趣味だとかなんかいろいろ言っていたけど俺の興味がわかず、頭には入ってこなかった。
自己紹介も終わり
「みんな仲良くしてやれよ。五十嵐君の席は・・・」
先生がきょろきょろしながら、教室を見渡し・・・
「五十嵐の席は佐々木の隣だ。佐々木!五十嵐にいろいろ教えてやってくれ」
そうすると香澄が立ち上がり「はーい。わかりました」というと、五十嵐を手招きして席を教えた。
五十嵐は香澄を見た瞬間、笑顔がこぼれたように見えた。
ん?なんだの笑顔は???さっきの挨拶の時の笑顔と違って
なんかやさしさが溢れてくるような感じだった。
香澄の隣の席に転校生・・・なんだこの感覚・・・俺何を考えている・・・
考えを押し込めて、そ・そんなわけない!!ただの腐れ縁の幼馴染じゃないか・・・
あわてて首を左右に振った。
どうも先週の事件からちょっと変だ・・・
妙に香澄が気になる・・・俺ってもしかして殴られてMに目覚めたのか・・・
いやいやそんなことはない。俺はいたって正常だ!!
などと頭の中で考えているといつのまにかホームルームが終わっていた。
休み時間になると転校生の周りに人だかりができ、質問の嵐を受けていた。
俺はというとなんだかそこに行って一緒に聞くような気にはなれなかった。
それに気がついた大河が
「どうした?」
「みんなと一緒に転校生のとこに行かないのかい?」
「興味無いね。男だし」
「実は俺も興味なし」
「俺と一緒か」
「じゃー適当にいつも通りってことで!」
「だな」
俺たち二人はいつものようにくだらない話をしていた。
転校生の五十嵐が昼休みにちょっとした事件を起こす。
休み時間のたびにクラス中から質面攻めにあうものだから最初のうちは笑顔で答えていたが、
途中から妙に落ち着かない様子。そして突然立ち上がり
「いい加減にしてくれ!!答えることはもう何もない。頼むから一人にしてくれ!!」
と、声を上げた。一瞬教室中が静まりかえった。
質問をしていたクラスメイトはびっくりして五十嵐から後ずさりして行った。
五十嵐はそこやっと静かになったといわんばかりに大きなため息をひとつつき、
そして五十嵐は教室を飛び出していった。
クラスは一致団結して五十嵐にたいして囲って話をしていた。
こんなこともで団結して質問しなくてもと思ったが・・・五十嵐がついにキレたようだった。
確かにあの状態は俺もヤダな。まぁ最も俺はあんなふうにキレること出来ないけどね。
よく吠えたよ。五十嵐ってやつは気が強いのかな、俺とは正反対だな。
こんなちょっとした事件が起こったけど、忘れるのも早いわがクラスは、
その後は何もなかったようにいつのも学校だった。