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音の壁

作者: 実茂 譲
掲載日:2026/07/08

 最初は家から半径一キロだった。

 それが少しずつ狭まってきた。

 何もないはずなのに壁があるんだ。

 音の壁が。

 それに触ると、頭がおかしくなりそうな騒音が鳴るんだ。

 ――それでいまはどのくらいまで狭まってきているんだ?

 もう、この部屋から出られない。窓のあたりはもう音が迫ってる。

 ――おれには何もきこえんがな。

 でも、きこえるんだ! このままじゃおれは音に潰される。

 ――病院行けよ。頭の。

 行けるわけないだろ! 音に包囲されたんだ!

 ――帰ってもいいか?

 ダメだ! なあ、助けてくれ。このままじゃおれは音に潰される。

 ――それはさっきもきいた。

 もう、部屋のなかまで入ってきた。どんどん狭くなってる。いやだ! 助けてくれ! 音に包まれる! うるさい! やめろ! あっち行け! 頼むからやめてくれ!

 ――おい、ちょっと。


 友人は最後、発狂した。

 暴れてわめいたので、警察を呼ばれて、ちょっとした騒ぎになった。事情聴取で三時間あれこれきかれたから、友人の狂った話を何度もして、それでようやく解放された。

 家に帰ったのは夕方だった。

 ビールを切らしていた。

 仕方なく、コンビニへ出かけた。

 近所の角にあるコンビニが見えてきたとき、〈壁〉にぶつかった。

 とても耐えられない騒音が頭のなかに響いた。

 それは友人の叫び声だった。

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― 新着の感想 ―
どんな音だったら厭でしょうかってそりゃあもう、これほど怖しい、真に迫った腑に落ちた後悔と懺悔と呪詛をもよおす音はないだろう、ふははと負け惜しみするしかないですわねなにに?怪異に。抵抗?無理無理あっちは…
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