音の壁
最初は家から半径一キロだった。
それが少しずつ狭まってきた。
何もないはずなのに壁があるんだ。
音の壁が。
それに触ると、頭がおかしくなりそうな騒音が鳴るんだ。
――それでいまはどのくらいまで狭まってきているんだ?
もう、この部屋から出られない。窓のあたりはもう音が迫ってる。
――おれには何もきこえんがな。
でも、きこえるんだ! このままじゃおれは音に潰される。
――病院行けよ。頭の。
行けるわけないだろ! 音に包囲されたんだ!
――帰ってもいいか?
ダメだ! なあ、助けてくれ。このままじゃおれは音に潰される。
――それはさっきもきいた。
もう、部屋のなかまで入ってきた。どんどん狭くなってる。いやだ! 助けてくれ! 音に包まれる! うるさい! やめろ! あっち行け! 頼むからやめてくれ!
――おい、ちょっと。
友人は最後、発狂した。
暴れてわめいたので、警察を呼ばれて、ちょっとした騒ぎになった。事情聴取で三時間あれこれきかれたから、友人の狂った話を何度もして、それでようやく解放された。
家に帰ったのは夕方だった。
ビールを切らしていた。
仕方なく、コンビニへ出かけた。
近所の角にあるコンビニが見えてきたとき、〈壁〉にぶつかった。
とても耐えられない騒音が頭のなかに響いた。
それは友人の叫び声だった。




