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三章十九話 ホワイト村4

用語説明w


大剣1991

ジェットの推進力、超震動装置の切れ味、パイルバンカー機構、ドラゴンキラー特性を持つ大剣。蒼い強化紋章で硬度を高められる。スピリッツ化を成し遂げ、ラーズと霊的に接続している


ヴァヴェル

魔属性装備である外骨格型ウェアラブルアーマー。身体の状態チェックと内部触手による接骨機能、聖・風属性軽減効果、魔属性による認識阻害効果を持つ


スサノヲ

見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人で、ラーズの装備の作成者


クシナダ

獣人男性、Cランクの元ハカル兵。刀鍛冶で、刀による近接戦闘、デバフ系の特技(スキル)と魔法を使う


ドシュッ…


ズバッ!


ザクザクッッッ!



突進モーションのバインシャースラに割り込む人影


マキ組長だ

三匹の鎌鼬と共に、得物の二丁鎌で切りまくる



「ヴモーーー!」


ドッガァァン!



叩きつける角


そして、振り上げ

マキ組長たちを土砂で吹っ飛ばす



「…やれ」


…俺はいい、頼む……



インカムと絆の腕輪で同時通信


データ2が魔石の魔法弾連発

更に、リィが巻物の範囲魔法(小)を発動



「ラーズ、大丈夫か!?」


「クシナダ…、デバフを…」


「だって、お前!」


「ここで仕留めなきゃ、人里に行かれちまう…!」


「うっ…!」


クシナダが気を取り直す

そして、黒い波動を放つ


あれは、魔属性特技(スキル)

魔法効果を引き上げる弱体化効果(デバフ)


クシナダの得意技、防衛軍時代も頼りになった



俺は、小型杖を振る



パァァァァッ!


「ヴモォォッ!?」



火属性照明の魔法弾


閃光によって目が眩み、バインシャースラが悶える



ズボボッッ!


「ヴォッヴゴーーー!?」



動揺するバインシャースラ


足元が泥のようになり、沈み込む

バランスを大きく崩した


リィの巻物

土属性範囲魔法、泥化魔法だ


土属性魔法は、魔力を物質化して固体生み出す魔法

だが、この魔法は地面を柔らかくする

珍しい、自然物の固体を操作する魔法だ


他に、物質に干渉する土属性魔法は地震魔法くらいしかない



「ラーズ、行けますか?」


「…大丈夫です」


「一撃で仕留めなさい」


「はい。これをお願いします」


俺は、マキ組長にハンドグレネードを渡す



普段は、俺が投げつける

だが、今は体の様子がおかしい


俺は、この一撃に集中させてもらう


バインシャースラが足を泥化した所から引き抜いた



ドバババババババッ



突然の激しい閃光と破裂音

マキ組長がスタンスモークグレネードを投げてくれた


動揺するバインシャースラ



ボゥッ…!



俺は、一気に飛び込む

高速立体機動+で肉薄



サイキックの力を1991の精神感応金属にたっぷりと込める

準備はバッチリだ


刃体の硬化、ジェット、超振動機構、霊剣、パイルバンカー

五つの機能を重ねる、フル機構攻撃


これを、闘氣(オーラ)で補強



外せばやられる

それだけじゃない、仲間も殺される


そして、この先の集落の住人もだ



1991が仄かに光る


まるで、一体となった感覚


数々の戦いで得た自信



バインシャースラは、俺に気がついていない


無防備な状態で貫く




ゴォォッ……!



ジェットブースターが火を吹く




クシナダの魔属性の弱体化(デバフ)


タルヤとデータ2で、拘束と軟化の魔法弾を当て続ける


ルイがモンスター用の強力麻酔弾を撃ち込む


マキ組長とリィで足止め




「うおぉぉぉぉっ!」



俺は吠える




戦いが楽しい


条件がそろった


全てを懸けて放つ技




この一瞬に、人生の全てを注ぎ込む


俺の目指す、至高の一撃


求道者としての目標



俺のスピリッツ装備、大剣1991


俺と武器との絆が威力を底上げする


理論上最高打点、サイキックや闘氣(オーラ)を上乗せした、真・フル機構攻撃だ






ズッガァァァァァァァァァァァン!!




左目から右後頭部まで刃が通る


頭蓋骨を斜めに両断


勢いで吹き飛んでいく




ビチャビチャビチャビチャ……



バインシャースラの身体は、立ったまま硬直


失った頭部から、噴水のように体液が噴き出している




「ふっ…」


笑みがこぼれる



やり切った、つかみ取った勝利


こいつは強かった


人里を守るという任務がなければ、俺一人で戦ってみたかった



久々に…


至高の一撃、理想的な状況下での最高の一撃を決められた




「ラーズ、よくやりました」


「…マキ組長の作戦と、皆のおかげですよ」


「身体は?」


「何とか収まりました」



実戦での吐血は焦った


だが、この達成感…


たまらない



「ラーズは、モンスターハンターが合っていますね」


「え?」


「純粋な生存競争。相手を認めることはあっても、仕留めることに躊躇はない。単純な戦いです」


「…」


「倫理も、後悔も、気まずさも。あなたは全て感じてしまう。人間ということです」


「え…」


そう言うと、マキ組長は行ってしまった




バタバタと、帰る準備をする


「ラーズ!」


ミィが走って来る


「おー、どうなった?」


「もうすぐ、クレハナの自治軍が到着するよ。それと、援軍が到着」


「援軍?」


「私が、すぐに動かせる二人の騎士」


「いや、いらねーよ」


「冷たいこと言うなよ。いきなり呼ばれて、馳せ参じたんだぜ」


アフリイェがタバコに火をつける


「…」


そして、エドガーがバインシャースラの死体を眺めている



「もう終わったっての。あ、そうだ、頭を探して来てくれよ」


「何で騎士の俺達がそんなこと…」

エドガーが睨んでくる


「来たのに、何もせずに帰るのか?」


「…」


「騎士だって、モンスターの解体処理を手伝っていいだろうが。あいつを倒せたのは、一般兵のマキ組がいたからだぞ」


俺は、向こうで撤収の準備をしている頼もしい一般兵の(しのび)達を示す


「こいつ、B+ランクだったんだろ? 一般兵が役に立つのかよ」

アフリイェが驚く


言いながら、煙で輪っかを作って遊んでんじゃねーよ


「一般兵だけで戦うわけじゃない。そして、騎士になった俺は死にかけた。連携のおかげで勝てたんだ」



危なかった

あのタイミングで吐血とか…


身体の中で雄叫びが響いて、その直後に動かなくなった

テンション上がりすぎたのだろうか


今後、気を付けなきゃな…



「それじゃあ、後は頼むぞ」


「分かってる、任せて」


ミィがいろいろと手配してくれた

俺達は、一足先にホワイト村へと戻る


疲れたぜ…




ホワイト村



「よくやってくれた!」

「ラーズ、よかった無事で…!」


村長のオズマと嫁さんのメイルが待っていてくれた


「ラーズ!」


「サクラちゃん。ただいま」


「悪いモンスターをやっつけたの?」


オズマとメイルの娘、サクラちゃんが走ってくる


軍時代は、まだ三歳にもなっていなかった

大きくなったなぁ…、もう小学生か


「…」


「コウメちゃん。こんにちは」


「ん」


妹のコウメちゃんは、すぐにサクラちゃんの後ろに隠れてしまう

人見知りが始まっちゃったかな



「サクラちゃん。今日、倒したモンスターは、悪くないよ。ただ、人里に近づいちゃっただけだ」


「それなのに、倒しちゃったの?」


「そうだね。近づいたら、人を襲ってしまう。それを止めるには、倒すしかない。人もモンスターも、一生懸命なだけだ」


「ふーん…」


サクラちゃんが、首を捻る

まだ、小学生には難しいよな



「ラーズ…」


「エマ。体調は大丈夫?」


「私は…平気…。ラーズ…吐血したって…」


「う…」


「見せて…」


「…世話になります」


エマが、俺を診察

妊婦さんに面倒かけるなぁ…



「ラーズ、よかったじゃねーか!」


赤ずきんのスサノヲがタブレットを見せて来る


「何が? あ、クシナダ、大活躍だったぞ」


「お、おう…。もう、ごめんだよ。俺は刀鍛冶の方が向いてる」


「そんなことより、これ!」


「イテテテっ、スサノヲ! タブレットを押し付けるな!」


「この仄かな光! スピリッツ装備!」


「いや、分かってるっての! 俺が発動したんだぞ!」


「凄いよなぁ…、スピリッツ装備」


クシナダが感心する


伝説の装備、スピリッツ装備

使い続け、危機を乗り越え、装備に持ち主の勢力(じんりょく)が蓄積することで、付喪神のような状態になる


そんな装備に、氣力と霊力を通すことで、疑似的な魂を囲む生命の殻となる

装備との絆が出来上がることで、その装備は仄かな光を発するのだ



「もっと光らせろ。スピリッツの光を!」


「こっちも、覚悟を決めないと光らないんだよ」


「決めればいいだろ」


「毎回、そんな覚悟ができるか。戦いってのは駆け引きがあるんだぞ」


「それと、早くヴァヴェルと絆の腕輪! スピリッツ化させろ!」


「だったら、さっさとヴァヴェルの修理をしてくれ。危なくて、戦いに出れねーよ」


双剣野郎に壊された、俺の自慢の属性装備

おかげで、修理代もかなり痛かった


あの野郎…

次はリベンジだ



「スピリッツ…!」


「旦那のクシナダが頑張って来たってのに、自分の事ばっかだな」


「だ、旦那じゃねーよ! それに、クシナダは頑張れる男だ。そんな…」


「あー、はいはい」


スサノヲとクシナダが真っ赤に

それを、俺はエマと一緒に眺めた




スピリッツ 二章六話 闘氣(オーラ)

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