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三章十八話 ホワイト村3

用語説明w


タルヤ

エスパータイプの変異体で、ノーマンの女性。過去には、実験施設での悲惨な実験で精神を病んだが、ドミオール院で守るべき子供達と出会い払拭。現在は、マキ組に所属してモンスターハンターを手伝っている。サンダーエスパーの二つ名を持ち、雷属性魔法が得意


クシナダ

獣人男性、Cランクの元ハカル兵。刀鍛冶で、刀による近接戦闘、デバフ系の特技(スキル)と魔法を使う


ルイ

クレハナの忍者衆マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている


森の中から、獣臭い空気が流れてくる


「…」


近づくにつれて、威圧感が強まる

俺達の接近に気が付いているのだろうか



「作戦通りに行きます」


「了解です」


俺は、マキ組長に答えると、後ろの三人、タルヤ、ルイ、クシナダに頷く



そして、風の羽衣を発動

マキ組長と共に、破壊目標の元へと疾走する


マキ組長の遁術、風遁風の道

風の流れを制御する風属性の特技(スキル)であり、マキ組長の太腿に文様が浮かび上がっている



「ヴモォォォウッッ!」


「…!」



しばらく森を進むと、巨大な獣道に到着

大きな何かが走り抜けた跡だと分かる


そして、その道の先で威嚇するように、巨大な水牛が仁王立ち

その頭には、うねりながらも切っ先が前を向く凶悪な角が輝いている


バインシャースラだ



「…嫌な感じのする角ですね」


「霊的構造を持つ…、霊剣と同種の角。気を付けなさい」


「了解、先に行きます!」


俺は、大剣1991を担ぐ



ボゥッ!



風の羽衣の出力を切り替え、空気の抵抗を下げることに集中

ホバーブーツと背中の触手による飛行能力


高速立体機動のバージョンアップ、高速立体機動+で勝負だ!



ブォン!


牛角の一閃



急降下から、地面を蹴って跳ね返る



「うおぉぉぉっ!」


ボゥッ… ズドォッ!


「ヴォォーーーーム!!」



バインシャースラが、仰け反るように吠える


顔面を抉ってやった



「…っ!!」


ふり上がった角

見下ろす視線



ズドォッ!!


「がっ…!?」



角の振り下ろし


予想のはるか上を行く速度


1991の柄を両手持ちで盾に使う


身体が、重力を無視して吹き飛び、地面にたたきつけられて跳ね返る



「がっ…はっ……!!」


血を滴らせながら、水牛野郎が身を屈める

突進の構えだ



くそが…、俺の鎧、ヴァヴェルが無い時にこれかよ…


闘氣(オーラ)物理作用(バリア)があるとはいえ、内臓が揺れる


吐き気が身体の悲鳴となって込み上げて来やがる



「ヴモモーーーッ!」


「おらぁぁぁっ!!」



バインシャースラの噛みつき


水牛のくせに雑食


しっかりと、俺を喰う牙も持っている



龍族の呪印を発動


全力のフル機構突き


引いたらやられる、生き残れ…!




「うおぁぁぁっ…!」


ボゥッッ… ズッガァァァァァァァン!




ザックリと牙が突き刺さる


左肩とわき腹に喰いつかれて抉られた


あまりに早い踏み込み、俺が速度を見誤るとは…



ドシャッ……


「がふっ…」



地面に叩きつけられる


噛みつかれた一瞬の後、フル機構攻撃が突き刺さる


バインシャースラの目と目と間を通り、左の角を根元から砕いた



「ぐぅ…」


血がぼたぼたと零れ落ちる

肩とわき腹、そして、口と鼻から血液が逆流して来る



フル機構攻撃の衝撃で口から放り出された


あと少しでも遅れていたら、噛みつかれて攻撃を封じられて詰んでいた



「この野郎…」


「ヴゥォォ……」



自慢の角を叩き折られて、怒りに燃える水牛


小さい生物と舐めんなよ


こっちには1991があるんだよ




「…凄ぇ。ラーズ、一人であんな……」

クシナダが呟く


「なかなかやりますね。モンスターハンターにおいては、私よりも上でしょう」

マキ組長が一人と一匹を見据える


「マキ組長。ラーズ、負傷してますが大丈夫ですか?」

ルイが無線で尋ねる


「大丈夫ではないでしょう。しかし、ここで呑まれれば確実に喰われます」


「…!」

タルヤが息を飲む



「ラーズなら大丈夫です。さぁ、配置に着いたら作戦開始です」


ボロボロになって、ぎりぎりを生き抜いてきた

それは、経験を積み上げて来たということ


積み上げたものは、時に奇跡を起こす


あのバインシャースラは、キングと呼ばれるネームド

体中に刻まれた傷は、歴戦の勝利の証だ


覚悟と自信という精神の力、どちらの積み重ねが上か


自然界でも稀に起こる、プライドのぶつかり合いだ



ドンッ!


ドンッ!



ブオォォォッ!



「…!!」


バインシャースラが動揺



銃弾が突き刺さり、黒い波動に襲われたからだ



「行きなさい、グー、チョキ、パー」


ヒュンヒュンヒューーーン!



三つの風の渦がバインシャースラを切りつける


マキ組長の使役対象、三位一体の妖怪、鎌鼬だ



「ヴボォォォォッ!」


バインシャースラが怒り狂う



ズドォッ!


バキィッ!


ドゴォッ!



角を振り回し、樹木を切り裂きなぎ倒す



「うわぁぁぁっ!!」


クシナダが逃げ惑う



「任せて!」


バチバチバチ―――ッ!



タルヤが、魔力を溜めた雷属性範囲魔法(中)


魔法陣から雷が迸る




「ブモ―――ッ!」



ズドドドドドッッ!




バインシャースラが、右の角を地面に突き刺し、抉るように突進


周囲に土砂や石が飛散



「きゃぁぁぁっ!!」

「うわぁぁぁっ!」


クシナダとタルヤが吹き飛ばされた



ダァーーーン!


ダァーーーン!



ルイが、気配を隠しながら狙撃を続ける


だが、銃弾のダメージでは巨体のバインシャースラは動きを止めない



「ど、ど、どうするんだ!? こんなデカいの、どうしようも…!!」


「一般兵が無理しなかったことがあるか? 歯を食いしばって、泣きながら止めるのが仕事だろうが!」



ようやく、ナノマシン群が血を塞いでくれた


なんとか動ける


「お、おい…、お前、そんな重傷で…」


「クシナダは自分の仕事をし続けろ。どうやって、このレベルを殺せるのか。考え出した作戦だぞ」



マキ組長の超貫通砲

俺の1991と同様、騎士の闘氣(オーラ)さえも貫く大口径対物ライフル

衝撃が大きすぎて、地面で支えないと打てないやべー砲だ


だが、バインシャースラの巨体相手だと不向き

破壊面積が大きい俺の1991の方が向いている



「マキ組長、代わります。フォローと、後衛の防御を」


「…いいでしょう」


マキ組長が、風に乗って戻ってくる


高速移動と美しい体術

マキ組長は俺の目標の一人だ


だが、モンスター相手は俺の専門


これは、防衛軍出身の俺の仕事だ



「ヴロロロロロ…」


「…来いよ」




俺は、わざとバインシャースラの目の前に立つ


姿を見せる


ヘイトを独占、俺に集中させるためだ



バインシャースラが少しだけ屈む


突進の予兆か



ブオォォォォッ!



ホバーブーツの初速に、飛行能力の推進力を上乗せ

風の羽衣で空気抵抗を軽減


高速立体機動+


理論上最速、一直線で突っ込む




ボゥッ… ズガァッ!



ガギィィィィン!




バインシャースラが、ジェット突きを角の突きで弾いた



ブオォォォッ!


着地と同時に、風属性の特技(スキル)旋風(つむじかぜ)



高速竜巻が一瞬だけ巻き起こる


本来は、相手の足止めやバランスを崩す牽制技


しかし、この巨体相手には驚かすだけだろう


騎士学園時代の得意技なのに…、ショボく感じちまう



「ヴモモーーーーーッ!!」


バインシャースラが突進



雄叫びが、俺の肉体だけじゃない、霊体や精神にまでビリビリと響いてくる


獣の、生死をかけた気迫、闘争心


なれていない一般人なら、これだけで地面にへたり込む



「うおぉぉぉぉぉっ!!」



気迫には気迫を


大崩壊…、あの地獄から、俺は生き残った


あれに比べれば、ここは平凡な戦場だ



体内から響くかのような雄叫び


その力強さに、俺は少し驚く


ノッている



「ふっ…」


思わず笑みがこぼれる



キングと呼ばれるほどのバインシャースラ


その気迫と強さに、俺は引っ張られている


これで決める



「ヴゥゥゥ……!!」


バインシャースラも、俺を視線で射貫く



あのヤベー角


巨大な霊剣で貫く気満々だ


行くぞ…



「………っ!!」



「ラ、ラーズ!?」


遠くで聞こえた、クシナダの声


歪む視界


こぼれる暖かいもの



ポタっ…


「な…?」



地面に落ちた染み


よく見ると、真っ赤だ


俺の鼻から垂れている



「ごふっ…」


そして、吐血



膝から崩れ落ちる


立っていられない


な…、これは……



カイザードラゴンの因子が暴れ、神鉄が無理矢理抑え込む

神鉄のドラゴンキラー要素が身体を傷つけるって奴か…


これ…、今かよ……



「ヴゴォォォォッ!!」



バインシャースラは、チャンスと見たのか全力突進を開始した





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ドラゴン因子「闘争か?闘争か!!!???」 神鉄「うるせぇ」 ラーズ「いまかよ...(絶句)」 次回:ラーズ死す!?
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