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二章三十四話 MEB

用語説明w


セフィリア

龍神皇国騎士団の団長。金髪の龍神王と呼ばれる英雄騎士であり、序列二位の貴族。ラーズの恩人であり、雇い主でもある


ミィ

魚人女性、ラーズの騎士学園の同期であり、龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


ピンク

竜人女性、燃えるような赤髪が印象的な、カイザードラゴンの血を引く貴族の令嬢。業火竜と呼ばれる期待の新人騎士で、火属性との親和性を持つ。ラーズからMEBを借りている。


「…」

「…」


ダナンジャとアテナの二人は、ミッションの全てを見守った



代議士と社長の密会場所であるマンション

その隣の部屋で、見て聞いていたのだ


「どう? 騎士としては未熟。それでも、兵士としての作戦遂行能力は圧倒的よ」


ミィが二人を見る


「…」


「ラーズの逸話、聞いたでしょう?」


「大崩壊の名もなき英雄、道化竜…」

アテナが答える


「そう。一般兵であり、所属部隊が壊滅しながらも、大崩壊の元凶を特定し、シグノイアとハカルの売国奴共を確保。セフィリア団長にムタオロチ家の情報を流した。そして、もう一つ…」


「…クレハナの内戦で暗躍した伝説の傭兵、トリッガードラゴン」


今度は、ダナンジャが口を開く


「正解。変異体の強化兵であり、クレハナで忍術を学んだ。そして、クレハナの内戦で騎士以上に貢献したと噂された一般兵の傭兵」


「…」

「…」


「あなたたちはライバル。でもね、三人で学び合うことがある。それがセフィリア団長の言葉よ」


「…」


「ちゃんと協力して。クシュナでの厳戒態勢レベルが上がった。三人で協力、かつ一般兵やスパイたちとの連携があって、初めてウロボロスの欠片を手に入れられる可能性がゼロじゃなくなるんだよ」



ラーズの性能評価


騎士としては未熟

闘氣(オーラ)の扱いはまだまだ

魔法や特技(スキル)は話にならない


だが、兵士としての技能

身についた武の呼吸

強化変異体という個性

呪印という至宝、スピリッツ装備となった武器防具

カイザードラゴンの血との融合


B+ランク…並みの騎士を凌駕する利点を持っている


一長一短

完成と未完成が混ざり合った歪な状態

そんなラーズを完成させるために、セフィリアはチーム・バイオスフィアを作ったのだ


アテナとダナンジャは強い

ラーズが参考とするべき点はいくらでもある


成長のカンフル剤とするのに、これ以上の人材はいない




龍神皇国中央区

騎士団本部 団長室



「ふぅ…、終わったよ。セフィ姉」


「お疲れ様、ミィ」


セフィリアは、紅茶を入れてミィを出迎えた


「わざわざ見学会だなんて、準備に疲れたよー…」


「あの三人には、そろそろチームになってもらわないと、ね」


「お互いにプライドが高すぎるんだよ」


「その自信は、武人に必要な物。でも、チームを組むのには正反対に働いちゃうわね」


「それなんだよ…。ダナンジャなんて、一般兵を全然認めてないし」


「ラーズとぶつかるところね。歩み寄りが必要ね、ゆっくりやっていくしかないわ」


「私、もうラーズ担当、嫌なんだけど…」


「ミィ以外に頼めないわ。ラーズもミィの話なら聞くし、アテナやダナンジャも、ね」


「気を使うし、あーもーーー…。分かってる、やるよ」


「ラーズは、手綱を握っておかないと危ない。暴走しないように、出て行かないように。今後も、ね」


「うん…」


ミィは、セフィリアの無茶振りにため息をついた




・・・・・・




龍神皇国ファブル地区



「ラー兄とフィー姉の実家、久しぶり!」


「冗談で言ったのに、本当に来るとは思わなかったよ」


昨日の隠密騎士のミッションを終え、俺達は解散した

マンションに帰って来ると、ピンクが泊りに来ていた


「フィー姉のおめでた、プレゼントをまだ渡してなかったから」


「わざわざ、ありがとな」


「でも、フィー姉がお酒飲めなくて残念。ご飯は美味しかったけど」


「私も、早くお酒飲みたいよ」

フィーナが残念そうに言う


フィーナは、こう見えて酒豪

酒がめちゃめちゃ強く、女子だけでワインを空けたりするのだ



「俺達、これからファブル地区の実家に帰るけど、ピンクも来るか?」


「え、いいの? 行く行くー!」


ピンクは、何度か俺の実家に遊びに来ていた

生粋の貴族だが、うちの両親とも仲が良い


そんなわけで、三人で実家へ向かっている



「お帰り。あら、ピンクちゃん、久しぶりねぇ」


「お久しぶりです! 遊びに来ちゃいました」


「どうぞ。ちょうどよかった、お義母さんが来て黄金パンを焼いてくれてるのよ」


「やったー。黄金パン大好き!」



「…ピンク、いつの間にかコミュ力お化けになってる」

俺は、フィーナに耳打ち


「知ってる人だけだと思うよ。知らない人は苦手だって」


「ふーん…」


ピンク、昔はおどおどしてるイメージだった

そういや、騎士学園でも俺達と話す時はニコニコしてたか



「フィーナ、ちょっとお腹が目立って来たんじゃない?」


ディード母さんがフィーナのお腹をさする


「そうかな?」


「足とか冷やしちゃダメよ。むくんだりもしてくるからね」


「うん…。あ、お祖母ちゃん、お祖父ちゃん」


「フィーナ、お帰りー」

「身体はどうだぁ?」


フィーナのお腹に皆が大注目

新たな命ってのは、それだけめでたいものなのだ



「帰ったか、ラーズ」


「あ、父さん」



パニン父さん

竜人のジャーナリスト


ディード母さん

ハーフエルフの教師


パニン父さんは、クレハナの内戦に取材に行き戦闘に巻き込まれて重傷を負った

その後、何年かは入院と手術、リハビリを繰り返し、今は元の生活に戻れた


母さんは、しばらくは教師をやめて父さんの介護をしていた

最近になって、ようやく仕事の復帰を考えているのだとか



「父さん、身体は?」


「大丈夫だ、もうピンピンだよ」


「そっか。もう、戦場なんて行かないでくれよ」


「…子供が戦争に行くなら。親だって考えるさ」


「…」


クレハナの内戦

凄惨な現場を、父さんはジャーナリストとして世に伝えた


これは、俺とは違う戦場の戦い方だ



「…あっち、凄い工事しているな」

俺は、ビル群が立っている広い建設現場を指す


「商業地区と、新たなベッドタウンの開発だってさ」


「ミドリ町もかわりそうだね」


「タケル君が、あそこで働いてるぞ」


「へー」


タケルとは、俺とフィーナの小学校時代の同級生だ

久しぶりに会いたい…



「大変だー!」


「え?」


「そこのビルの解体現場で事故だ! 倒壊しかけてて作業員が…」


「…」


俺は、立ち上がる


「ラー兄、私も行く! フィー姉は待ってて!」


「ちょっ、気を付けて!」

身重のフィーナに見送られて、俺とピンクは走って現場に向った




「うわ…」


解体工事現場では、四階建てのビルの壁面が傾いている



それを、クレーンが無理矢理押し込んで支えている状態

いつ倒れて来てもおかしくない


足元には、倒れたショベルカーに運転手が取り残されている



「壁が大きすぎて、闘氣(オーラ)を使っても支えるのはきついな。破壊するか?」


「隣のビルが近すぎて危ないよ。任せて」



ピンクが、何かをする



ブウゥゥゥーーーーーン



ピンクの背後の空間が歪み、青空のような塗装のMEBが出現

封印空間から質量を呼び出す、オーバーラップ技術だ


MEBは様々なタイプとサイズがあり、小型から十メートルを超える大型サイズもある

ピンクのMEBは三.五メートル程だ


シノダ製野外活動タイプ、カントリーマン

対モンスターハンター仕様カスタムだ



ウィィ…


軽快なモーター音で、青空色のMEBが動き出す

そして、クレーンに変わって倒れそうなビル壁を両手で支える



MEBは、人類にサイズを提供する兵器

巨体があることによって、大きな壁を支えられる


人体サイズでは、怪力があってもバランス的に無理がある



「…固定できそうです! クレーンは下がって! ラー兄、今のうちに!」


「了解」


俺は、闘氣(オーラ)で倒れたショベルカーを引き起こす

重いが、なんとか起こすことができた


「下がれるか?」


「だ、大丈夫…、ありがとう!」


ショベルカーが、後ろに下がっていく



「ラー兄、壁を壊しちゃおうか」

「そうだな…」


いつまでも、MEBで押さえておくわけにはいなかい


ちなみに、MEBは本来、乗り込んで操縦する

だが、これは思念操作を導入した金喰い虫仕様で遠隔操作も可能


…俺が、セフィ姉から大崩壊の報酬で貰った十億ゴルドを突っ込んだ高級機


ピンクには貸してるだけだ


操縦、上手くなりやがったな…





ズパッ…


「ほい」



ズバァッ!


「ほい」



バシュッ!


「ほい」




ピンクが壁を、上から真横に斬っていく

それを、俺が一つづつ下に下ろしていく


半分くらいになれば、後は雑に壊してOKだ



「いやー、助かったよ! まさか、騎士が近くにいてくれるなんて!」

「しかも、MEBまで持ってるなんてね。おかげで、被害はゼロ。隣の敷地に破片も飛ばなかったし」

「命と会社の恩人だ。本当にありがとう!」



俺達は、お礼を言われながら家に帰る


「ラー兄。私、MEB上手になったでしょ」


「ピンク、そろそろ返してくれ。俺もMEBの免許を取る」


「えー…。でも、しょうがないかぁ。私も自分のMEB買わないとなぁ」


ピンクは、オーバーラップタイプのMEBを気に入っている

どこでも出し入れができる巨体は、本当に便利だ


だが、費用は十億ゴルド

更に、メンテナンス代やエネルギー代など、維持費もバカ高い


騎士団の補助が無ければ、とてもじゃないけど運用できない兵器なんだよな





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― 新着の感想 ―
技術的にも免許的にもそのまま流れでMEBはピンクの物に…みたいな感じになりそうだと思ってたけど帰ってくるのなら嬉しいな。ラーズにとっちゃ価値がつけられない物が搭載されてるし。 どう使っていくのかが気…
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