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二章十二話 裏仕事の指南2

用語説明w


アテナ

黒髪ノーマンの女性。薙刀を使う騎士であり、閉じているような糸目が特徴。セフィリア個人に忠誠を誓った隠密騎士であり黄渦竜と呼ばれる。Bランクだが、格上のB+ランクを倒し切る腕を持つ薙刀使い。そして、シリアルキラー気質


ダナンジャ

龍人男性、循環器系が強く、興奮すると血管が浮かび上がる超人体質。チーム・バイオスフィアの一人で赤山竜と呼ばれ、長巻という武器を使う武人


ルイ

クレハナの忍者衆マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている


小さな一軒家

少し古いが、何の変哲もない民家


俺達、チームバイオスフィア

そして、助っ人のルイがそれぞれ到着した



「なぁ、本当にここなん?」


「そうみたいだな。夜になったら踏み込む。それまでに調べよう」


「何をするのだ?」


「この家にいる人数、人物の特定、武装。家の構造、狙撃ポイントの選定。いろいろあるだろ」


「めんどくさぁ」


「知ってるか? お前らが荒事に従事する前に、誰かがこういう準備をやってたんだ」


「…我ら騎士にしかできないことがある。代わりに、一般兵が下準備くらい…」


「それなら、セフィリア団長の秘匿任務は受けられないな。一般兵がいないと完結できない、ただの一般騎士に隠密騎士の仕事は無理だ」


「…」

「…」



アテナとダナンジャ

この二人は強いが、騎士の経験しかない


おそらく武芸者のように、武器の切合いくらいしてきている

だが、潜入ミッションや調査任務など、戦闘以外が目的の任務は経験がない


セフィ姉も、何を考えてるんだか

隠密騎士に、戦闘しかできない素人を選ぶなんてリスクにしかならないのに




深夜



「…あの家の敷地内はセンサーだらけだ。防犯カメラに、おそらくだがガードスケルトンまで設置している」


ルイと俺で下調べ

更に、家の名義や戸籍、契約関係などをオリハが送って来た

あっという間に情報は集まった



「宅配業者のフリして、お隣さんに聞いた。男が一人、去年から住んでいる。他の出入りは見たことないってよ」


ルイと、襲撃前の最後の打ち合わせだ


「…了解。教団の本部的なものに繋がるといいけどな。狙撃ポイントは?」


「南南東百八十メートル地点のアパートの屋上だ。二階部分なら窓が狙える」


「了解。…不法侵入だよな?」


「当たり前だ。一発撃ったら、住人に銃声で見つかる。撃てて二発だな」


「無理しなくていい。撃ったら離れてくれ」


俺は、アテナとダナンジャに頷く

今回は闘氣(オーラ)解禁


全員で突入、確保を目指す


なぜなら、こいつは教団の工作員

ミスリル鉱石を手に入れようとした目的を吐かせる必要がある


ついでに、教団のゴキブリ共を芋づる式が理想だ



ズドォッ!


俺は、闘氣(オーラ)で包んだヒノキの棒で玄関のドアをぶっ叩く



強化変異体の筋力と闘氣(オーラ)の身体強化

そして、武術による身体操作による威力で民家のドアくらい一発だ


だが、吹き飛ばしたドアの内側に、追加で南京錠が二十個くらい付けられていた

病的な防犯意識だ



玄関には、二階へと続く階段

そこにおいてあったのは頭蓋骨


アンデッドであるスケルトンをガードマンとして利用、そのために手を加えて商品化したガードスケルトンだ



ゴシャッ!



頭蓋骨からスケルトンへと身体を構築する一瞬の間に、頭蓋骨をヒノキの棒で貫く


引き抜きながらの持ち変え

ヒノキの棒の尻部分を振り下ろす



ゴキャッ!



階段ごと叩き壊す振り下ろし


その勢いのまま、階段を駆け上がる



二回は二部屋

右に気配がある


俺は、ヒノキの棒の先にゴムひもを撒いてきた

これは、抵抗が強く引っかかりやすい


ドアノブに添えて、押してやるとドアノブが回転

ドアが開いた瞬間に押し開ける


ヒノキの棒は、長さを効果的に使える

侵入道具にもなるのだ




左腕をナノマシンシステムで銃化

肘を曲げで、腕先だけをドアの中に入れる


銃化した腕の先にはデータの有線アバターを取り付けている

身体を見せずに部屋の中の状態を確認できるのだ



ドガガガガッ!


男の姿を発見、すぐに発砲



だが、あらかじめ作られていた土属性土壁の魔法によって防がれる


男の手には魔法使いの長い杖が握られている



「魔法使いか、投降しろ」


「何者だ! 何が目的だ!」


「…神らしきものの教団のクソ工作員を捕まえに来た」


「…っ!!」



データのアバターが見る、カメラの映像


そこでは、男が魔法発動の準備をする様子が確認できた



「アテナ、やれ。殺すなよ」


「こんな簡単なこと、間違うわけないやろー」



ズッパァァァァン!



「な、な、な………!?」


小気味いい音と、水しぶきが室内に降り注ぐ


その直後、部屋の壁に直線が入る


斜めに入った一直線


その線に沿って、天井が動き始めた



ズズズズ………


ズッドォォォォォォン!!!



一軒家の壁を斜めに一刀両断


庭側に、部屋の上部と屋根が滑って落下した


斜めに切れた壁

男には言わないが、ルイが狙撃しやすい方向の壁を落としたのだ



これは、アテナの水属性魔法と特技(スキル)の合わせ技

全力水流斬り


高圧の水流を斬撃に合わせて噴射し、広範囲を斬り裂く技…、らしい


くそっ、いい技持ってやがるな



「投降しろ。囲んでる、もう逃がさない」


「…なめるなぁぁぁっ!」



教団の工作員が叫ぶ


急激に膨れ上がる魔力


炎が渦巻き、男の杖の周囲を回り始める



「炎の蛇…?」


「くくく…、そんな壁一枚で防げる炎だと思うなよ。お前こそ投降しろ。仲間を引き上げさせろ」



工作員の男が俺に向って言う


確かに、奴の炎は凄まじい


通常の投射魔法とは比較にならない熱量と巨大さだ



「我が道士の術、ホウオシオ。ただの投射魔法と一緒にするな。さぁ、さっさと仲間を離れさせろぉっ!」


工作員が叫ぶ



呪符のようなものを燃やしたように見えた

道士と言っていたから、道教の技法を使って蛇のような何かを召喚、己の火属性魔法と交わらせた?


いや、それだけにしては炎が強すぎる



「…そうか、魔法陣か」


「…!」



奴の足元に光る術式が見える


魔石か、電力を変換して得る魔力を使える、設置型の魔法ブースト装置


あそこにいる限り、奴は高威力の魔法を発動できるってわけか


軍事用の魔法陣

多層ルーン型魔法陣や増幅型魔法陣が有名で、術者が強力な魔法を使うための設置型魔導法学兵器だ



「仕方ない、勝負と行くか」

俺は、工作員に呼びかける


「な、何?」


「強力な投射魔法がどれだけ無力か、教えてやるよ」


「我が術を愚弄する気……」



ダァーーーーン!


「ぎゃぁっ!」



工作員の肩から血が噴き出て吹き飛ぶ

ルイの狙撃だ


戦場で、強力な投射魔法がない理由

それは、直線軌道の攻撃では銃が強すぎるから


目視できない距離からのスナイプ

戦車の装甲を貫通する対物ライフル弾


狙撃を防ぐためには、風属性蜃気楼魔法、力学属性防御魔法などがあるが、投射魔法にもほぼ同種の防御策が存在する

つまり、単純な狙撃においては魔法より銃に軍配が上がる上位互換となる


魔法の真価は、空間と障害物を超える範囲魔法だ

範囲も広い、範囲魔法(中)は、銃と並ぶ戦場の主役となっている


この工作員の炎の蛇は強力な投射魔法だが、これならクシュナで会った錬金術師の金属性魔法の方が強い

なぜなら、鋭い棘を複数飛ばして避けづらい上に、チャージもほぼ無い


儀式を準備をしておいて、見える範囲しか攻撃できない技など、対策方法が腐るほどある



「ルイ、充分だ」


「グッドラック」



ルイは、このまま姿を消してもらう


おれは、倒れた工作員にヒノキの棒を向ける

闘氣(オーラ)はない、このまま拘束する



「…くそっ、くそっ!」


「終わりだ、クソテロリスト」



ゴッ!


「がっ…!」



顔面を蹴り上げ、杖を後ろに飛ばす

そして、魔法陣から引き擦り出してやった


「………」


「あ?」


工作員が何かを言っている

俺は、耳をすませる


「か、か、神らしきものよ…、この狂った社会を灰に……、あるべき姿に……」


「狂っているのはテメーだ。大崩壊のツケを払うまで死ぬな…、なっ!?」



ボボボ―――――ッ!



魔法陣から吹き出す炎

さっきの炎の蛇が顕現し、さっきよりも巨大な炎の柱となっている



「くくく…、この周囲三十メートルを炎に包む。全てを神らしきものへの供物としてやる…!」


「…自爆なら一人でやれ」


「全て道連れだ! 来るべき…来たるべき世界への礎に…!」


教団の常套手段、道連れ

目的のためには何を犠牲にしようが構わない


それが、教団の狂信者だ



周囲の住人だろうが関係ない

敵ごと巻き込む


…クソ野郎が


純潔のカルト野郎


大崩壊の時、闘氣(オーラ)に匹敵する力を得るために量産型Bランクと呼ばれる化物になった信者たちがいた


奴らは、身体の改造手術を行い、成功すれば一時的に騎士に迫る超人になる

だが、所詮は使い捨て

その後、長くても数日で命が尽きてしまう


自分の命さえもを使い捨てる、その目的は…

今の社会をぶっ壊すことだった



「赤山龍、行けるか?」


「余裕だな」


直撃したら、俺は生き残る自信がない

そんな炎の前に、何の気負いもない、自然体のダナンジャが立った





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― 新着の感想 ―
前半戦は隠密とそこそこの戦闘力が必要になるけど、こういう後を顧みない最後っ屁に対抗するには純粋な戦力が必要になるよなぁ。
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