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二章九話 ピンクの力

用語説明w


ホバーブーツ

圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ


装具メメント・モリ

手甲型前腕装甲の装具で、自在に物質化が可能。手刀型の刃物、指先に鉤爪、硬質のナックル、手の平に吸着構造、仕込みニードルの五つの武器が特徴


ピンク

竜人女性、燃えるような赤髪が印象的な、カイザードラゴンの血を引く貴族の令嬢。業火竜と呼ばれる期待の新人騎士で、火属性との親和性を持つ。ラーズからMEBを借りている。


エマが自信無げに話を続ける

俺をチラ見しながら


不安になるからやめてほしい


「ラーズに…、ドラゴンの因子が…目覚めてる…」


「ドラゴンの因子?」


「ピンクやセフィリア様のように、ドラゴンの力が発現するための因子…」



セフィ姉とピンクはドラゴンエリート

ドラゴンの力を使う


ピンクの皇竜化など、強力な性能を持つ技だ



「それじゃあ、俺にもカイザードラゴンの力が宿ったってこと?」


契りの効果がついに出るのか


「いえ…」


「え?」


「今は、ラーズの体内でドラゴンの因子が暴れてる…、人体からするとドラゴンの因子は異物で毒…」


「…」


不穏すぎる話だ



「これから…、徐々にダメージを受けることに加えて、ドラゴンキラーが…」


「まさか…」


「そうだよ。ラーズは、あの錬金術師の竜殺魔法で想定外のダメージを受けちゃったの」


ミィが説明を引き継ぐ



「…ドラゴンの力は身につかない。それどころか、体内で悪影響を及ぼしている。しかも、ドラゴンキラーのダメージを受けるだと?」


「言語化しちゃうと…、そんな感じ…」


最悪じゃねーか!

ピンクと手術してまで得たカイザードラゴンの心臓


マイナス効果しかないだと!?



「やっぱり、ドラゴンの中でも最高峰のカイザードラゴンの血は、生まれ持った身体でないと悪影響が出ちゃうわね」


セフィ姉がため息


「エマ、どうにかならないかしら。せっかく、カイザードラゴンと変異体がセットになった超低確率な成功例なのに」


キリエさんが尋ねる



「ラーズは…、ストレスへの高い順応性が一番の特徴です…。身体への負荷を減らして徐々に…慣れさせる…。同時に…ドラゴンキラー対策を…」


「そんな都合のいい方法があるの?」


「はい…。ドアゴンキラー特性のある金属…神鉄の輪を背骨に付ける…。ドラゴンの因子の動きを抑え…同時に……ドラゴンキラーへの耐性もつけていく…」


「背骨に輪っかって、どうやって付けるの?」


「外科手術…」


「マジか」


手術で入れるのかよ…

身体に悪そうなんだけど



「ラーズ、神鉄の埋め込みは私もやったわ。ドラゴンの因子は、力も得られるけどドラゴンキラーという弱点も増える。対策はした方がいいわ」


「わ、分かったよ…」


「エマ、手術はすぐにできる?」


「神鉄があれば…。手術は私がするので…」


「分かった、すぐに用意する。それじゃあ、ラーズはその間に、もう一つ、隠密騎士として仕事をお願いするわ。今度の相棒はピンクよ」


「ピンクと?」


「ピンクも隠密騎士について理解する必要がある。お願いね」




・・・・・・




「はぁ…、また手術で入院かよ…」


「ラー兄、大変だね」


ピンクが困ったように言う


「ピンクと同じ条件なはずなのにさ、ずるくないか」


「うーん?」


俺とピンクは契り…、お互いの心臓の移植手術を行った

それなのに、どうして俺だけ手術が必要なんだ


ピンクは最初からカイザードラゴンの血を持って生まれてきた

それだけの才能の受け皿があったんだ



「そろそろかな」


「そうだな」


ホフマンさんとやった、裏仕事


あれは、カエサリル家の不祥事の情報を掴んだ新聞記者の始末の任務だった

ついでに、その新聞記者を狙ったマフィア共も全滅させたのだ


そして、その新聞記者が情報を持ち込もうとした先

それが、これから接触する相手、始末するべき目標だ



「カエサリル家とドルグネル家は一蓮托生。カエサリル家の悪い噂は立てられない」


「悪い噂?」


「公共事業の業者が、カエサリル家に寄付を行ったのよ。でも、その業者が公共事業を請け負えたのが、カエサリル家の後ろ盾を得たって周囲に言いふらして、半ば脅すような形で他の業者に手を引かせたからだった」


「…」


「ここまで、話しが上がって来ていなかったのよ。今後は調査を徹底するわ」


キリエさんがため息をつく


「一つ貸しですよ、キリエさん」


「分かってるわ」


貴族のトップワ1と2の貴族が話していた




龍神皇国東区

ある街の外れ



「…それで、カエサリル家の弱みを握りたかった野郎はどこの誰なんだ?」


「ゲルニト連邦のセルデビッチ。Bランクだよ」


ミィが平然と答える

おいおい、もう正体が分かってるのかよ



ゲル二ト連邦


龍神皇国の北に位置する広大な面積を持つ国

大国であり、多くの資源を持つ

社会主義的な思想を持ち、資本力の格差を嫌い、国家が国民を管理することで真の平等を実現しようとする国風

他国に多数のスパイを派遣し、情報収集を行っていることでも有名だ



「…待ってろ」


「気を付けてね」



ボゥッ!


ホバーブーツで跳ぶ



更に、変異体の飛行能力を発動

小型杖による力学属性引き寄せの魔法弾によって、不規則に速度と方向を変えながら突っ込む



「…な、何!?」



ズドォォッ!


姿を現した男に拳を叩きつける



不意打ち成功

吹き飛んだ男を、そのままのスピードで追いかける


ホバーブーツと飛行能力、アイテムを使っての高速立体機動

これは、俺が変異体としての完成させたユニーク能力だ



「…!」


ゲルニト連邦のスパイ、セルデビッチ



騎士でありながら、他国に潜入する

闘氣(オーラ)の痕跡を隠しながらの活動


…俺やアテナ、ダナンジャと同じ、隠密騎士

表には出せない仕事をする騎士だ



セルデビッチが、斧を手にする


取り出したんじゃない、具現化しやがった



「装具か…!」


「…!」



俺は、セルデビッチと同じように手甲を纏う

装具メメントモリだ



ズッパァッ!


「くっ…!!」



斧の斬撃が、俺の真横を通り過ぎる


Bランクの攻撃は、近接武器を使う

その理由は、身体から離れると霧散してしまう闘氣(オーラ)の特性を乗せるため


だが、銃や魔法ほどではないが、Bランクの攻撃は飛ぶ

特技(スキル)や魔法を併用しながら攻撃をしているからだ

Bランク以上の騎士の一振りは、ただの通常攻撃ではない



凍てついた冷気を纏った斬撃


セルデビッチの一撃は重い



「ラー兄、どいて!」


「お、おい!」



真後ろから、凄まじい高熱を感じる


ピンクが、炎を吹き出しながら突進していく


それは、まるでミサイルのようだった




ガキィッ!


ボボボォォォォン!



「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」




ピンクが炎を纏った片手剣を振り下ろす


ギリギリ斧で受けたセルデビッチ



だが、斧は攻撃力が高い分、攻撃を受けるのは不向き


ピンクはただの巨乳に見えて怪力


しかも、火属性との親和性を持つやべードラゴエリートだ



今のピンクの姿は、頭角が大きく発達、手足を甲殻化し、更に翼と尻尾が現れている


皇竜化と呼ばれる、竜の力を具現化した姿


この状態で放つ、カイザードラゴンのブレスを纏った必殺剣、その名を竜皇剣(りゅうおうけん)という



冷気を斬り裂かれ、高熱で火だるまと化したセルデビッチがゴロゴロと転がる


俺は、慌てて小型杖を取り出す

水属性水球の魔法弾で炎を消し、回復薬をぶっかける



大丈夫かな、こいつ…


火傷の範囲が広いと、感染症とかですぐに死んじまうんだよなぁ




「ご、ごめんなさい、ミィさん! やりすぎちゃった…!」


「ちょっと実力差がありすぎたわね。もしもし、エマ? 急患連れて行くから準備お願い!」

ミィが電話をかけている



ピンクの皇竜化…

人体の構造を変えてしまうような変化のことを、トランス・アドバンスと呼ぶ


獣化や霊体の神格化など複数の種類が存在する

この能力は先天的な素質が必要なことが多い


ちなみに、変異体や仙人はトランス・アドバンスとは言わない

あくまでも、肉体や霊体を強化したという位置づけであり、変身とは違うからだ


このトランス・アドバンスは、トランスレベルに換算すると4になる



トランスレベル


1 トランス

2 紋章などの外部エネルギー

3 トランスと外部エネルギーの併用

4 トランス・アドバンス、変身などの構造変化



トランスとは、超えるという意味

人体の限界を超えるための能力だ


そして、トランス・アドバンスとは、変身などによって物理的に人体を超越する

まさに、トランスの上位という意味だ



…俺は、強化変異体


変異体のドラゴンタイプであり、ナノマシンシステムと融合

呪印と霊体も融合し、普通の人体を超越した


スピリッツ装備も手に入れた

この装備は、どんな金持ちや貴族にだって手にできない

何ども死線(デッドライン)を潜り抜けて完成した、俺だけの武器


俺は、これだけの物を持っている

俺は、手に入れた

強くなった


何も持っていなかった、才能に嫉妬していた、ガキの頃の俺ではない


それなのに…、まだ足りない


ダナンジャ、アテナ、ホフマンさん、ピンク…

セフィ姉にフィーナ、ミィにヤマト


上には上だ


キリがない



…俺はまだまだだ


ピンクの皇竜化を見て、それだけは分かった




ゲルニト連邦 一章八話 クシュナ1 の地図を参照してね

スピリッツ装備 二章六話 闘氣(オーラ)

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