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序章二話 見習い騎士2

用語説明w


騎士

闘氣(オーラ)を使うBランク以上の戦闘員。国家が保有するモンスター対策と国防の最終兵器であり、英雄


セフィリア

龍神皇国騎士団の団長。皇国の英雄で高位の騎士。ラーズの遠い親戚で、憧れの竜人女性


「アテナ」


「はいな」


セフィリアが声をかけると、細目の女性騎士が武器を手にする

長い柄の先に湾曲した刃体…、あれは薙刀か



ズドッ!


アテナが薙刀を振り上げた



闘氣(オーラ)で強化、遠心力を乗せたことで、クラウドドラゴンの顎が跳ね上がる


その間に、セフィリアは上空に跳び上がり、純白の輝く双剣を抜いた



スッ…


静かに、でも確実に

百を超える斬撃が降り注ぐ



クラウドドラゴンの姿が血しぶきに染まる


今度こそ、確実にその巨体が地に伏した



「す、すげぇ…」

「あのドラゴン、下手するとAランクじゃないか?」

「金髪の龍神王…、英雄…」


訓練生達の口から感嘆の溜息がこぼれる



あのセフィリアに憧れて入団する騎士も多い、数々の伝説を持つ騎士

龍神皇国騎士団の長でもあり、序列二位の大貴族の当主

それが、セフィリアだ



「…お前達、準備をしろ。今回の討伐目標、キマイラを発見した」


教官の言葉で、見とれていた見習い達が慌てて動き出す


「ラーズ、ここで見させてもらうわ。訓練、頑張ってね」


「セフィ姉…、目立っちゃうから特別扱いはダメだって」


「はいはい」


分かったか分かってないんだか

セフィリアは、微笑みながら戻っていく



「ラーズ、セフィリアさんの知り合いなのか!?」

「なんでしゃべってるんだよ!」


見習い騎士たちが集まってくる



「…昔、ちょっとだけな」


「ちっ、外様騎士が調子乗りやがって」

「セフィリアさんのコネ入団かよ」


分かり安く嫉妬に晒される

まったく…


セフィ姉と俺は、遠い親戚関係にある

俺は一般家庭出身だが、ひい祖父ちゃんの世代で貴族に嫁いだ人がいるとかなんとか


そんなわけで、幼いころからの縁なのだ



「グルルルル……」


「こ、こいつがキマイラか…!」



見習い騎士達が動揺


キマイラとは、複数の動物が混ざった姿のBランクモンスター

ライオンの上半身と山羊の下半身

そして、ライオンの頭の後ろに山羊の頭がつき、尻尾は毒蛇だ



「グゴォォォォッ!」


ドゴォッ!



前衛の騎士が吹き飛ばされる



「うおぉぉぉっ!」


エドガーが突っ込む



「ま、待て!」



ヤギの頭が爆発魔法を発動

更に、ライオンが大きく口を開けた



ドッゴォォォォォン!

ボォォォーーーーーーーッ!



爆発と灼熱の炎がエドガーを襲う



「ぐあぁぁぁぁっ!?」


咄嗟に庇ったのはリュベン教官

だが、炎と爆発魔法が直撃


吹き飛ばされて、ゴロゴロと転がる



「ヒーラー!」


俺は、走りつつ回復薬を取り出して教官にぶっかける

更に、火傷に皮膚を補完するカプセルワームという人工細胞の塊を貼り付けた



闘氣(オーラ)で軽減している。回復魔法があれば大丈夫だ、頼む」


「は、はい!」



「うわぁぁぁっ!」

「ひぃぃぃっ!?」

「だ、ダメだぁぁ!」


見習い騎士達は総崩れ

エドガーも、爆発と灼熱に晒されて震えている



「落ち着け! ディフェンダーがキマイラを包囲、足を止めろ! ヒーラーはその後ろ、フォローに回れ!」


仕方がないので、俺は大声で指示を出す

このままじゃ、死人が出ちまう



「と、外様が仕切るんじゃねぇぇぇっ!」


「ば、バカ、エドガー!」


だが、エドガーが激昂、またキマイラに突っ込んでいく

それに反応して、ライオンが口から炎が噴き出した



「くっ…!」


俺は咄嗟に陸戦銃を向ける

この銃は、アサルトライフルと砲の二連装銃だ



ボシュッ…

ドッガァァァァン!


「うおぉぉぉぉっ!!」



グレネード弾をライオンの口に向けて発射

高熱で大爆発


キマイラの炎を途切れさせた



ザシュッ!


その隙に、後方の騎士が尻尾の毒蛇を切断

横の騎士がキマイラの足を斬りつける



アフリイェ達がうまく動いてくれている


「山羊を狙ってくれ」


「了解!」


俺はアフリイェを見送ると、ライオンと正面から対峙する



「ガァッ!」


ライオンの跳びかかり



巨体から繰り出される鋭い爪の振り下ろし

それを、左に半歩避ける


失敗していたら、俺の上半身は消えていただろう



そこから、闘氣(オーラ)の身体強化能力によってジャンプ

陸戦銃を握ったまま突き入れる



「グギャァァァァァァッ!!!」


悶えるキマイラ

銃身を目に突き込んでやったのだ



身体から離れる銃弾は、闘氣(オーラ)では包めない

だが、握った銃を闘氣(オーラ)で近接武器とすることはできる


更に…



ドガガガガガッ!


「…っ!!」



眼球の中から脳に向ってアサルトライフルのフルバースト


Bランクモンスターは毛皮や骨格が頑丈で、通常の銃弾では貫通できない

しかも、力学バリアという一定範囲外からの遠距離攻撃に対して運動エネルギーを奪うという能力も持つ

そのため、対物ライフル等の大型銃器の狙撃も封じられている


だが、体内の柔らかい部位からのゼロ距離射撃なら充分に体組織を破壊できるのだ



他の騎士達がヤギの頭も仕留めてくれていた

魔法を発動する厄介な部位だが、頑強さはない


「外様騎士の面目躍如だな」


「俺は、銃でそんな可哀そうな使い方をしたことはないぜ」


アフリイェが、俺の血の滴った陸戦銃を見る



エドガー達がうなだれている

そして、生き残った安堵を噛みしめている



外様騎士


騎士とは、闘氣(オーラ)という技能を身に付けた者

闘氣(オーラ)は、幼い頃から特殊な訓練を受け、早期に身に付けることが必要とされており、そのまま騎士となるのが王道、本流の騎士と呼ばれている


しかし、中には大人になってから、何らかのきっかけで闘氣(オーラ)に目覚める例外もいる

彼らは本流の騎士とは違うため、邪道の外様騎士と揶揄される


その理由は、幼いころから闘氣(オーラ)に目覚めた者よりも闘力が少なく、闘氣(オーラ)の性能が低いからだ



闘氣(オーラ)が強くても、やっぱりガキだな。動揺しすぎだぜ」

アフリイェが肩をすくめる


「俺達一般兵あがりは、もっとヤベー現場を知ってるからな」


闘氣(オーラ)があればそうそう死なねーってのに、わざわざ補助魔法も無しで突っ込むとは…」


「後で教官から死ぬほど怒られて覚えればいいだろ」


「違いねぇ」

アフリイェが笑う


外様騎士は少数派

少年の頃から闘氣(オーラ)の訓練をした者と違って、大人になってからは目覚める者は稀だかからだ


だが、その分、俺達外様騎士には様々は経験がある

闘氣(オーラ)が弱くとも、別の強みを持っているんだ



「ふぅ…、吸うか?」


アフリイェがタバコに火をつける


「俺は吸わないんだ」


「変わってるな」


アフリイェが言う通り、一般兵には喫煙者が多い


それは、いつ死ぬかもしれないという恐怖

それを紛らわせるための手段がタバコだからだ

飯を食えない時に、空腹を紛らわせることもできる



「そう言えば、ラーズは騎士学園を卒業したんだろ? 何で外様騎士になったんだ」

アフリイェが尋ねる


「…闘氣(オーラ)には目覚めたけど、俺は才能が無くてさ。一度捨てたんだ」


「お前、やっぱり変わってるな」

アフリイェが、俺の顔を見る



向こうから、セフィ姉達がやって来るのが見えた



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