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一章二十二話 セフィ姉と紅茶

用語説明w


PIT

個人用情報端末、要はスマホ。多目的多層メモリを搭載している


セフィリア

龍神皇国騎士団の団長。金髪の龍神王と呼ばれる英雄騎士であり、序列二位の貴族。ラーズの恩人であり、雇い主でもある


ミィ

魚人女性、ラーズの騎士学園の同期であり、龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


龍神皇国中央区

騎士団本部 団長室



「座って。紅茶を入れるから」


セフィ姉が、茶葉にお湯を注ぐ



俺は知っている

このとき、セフィ姉は集中していることを


殺気に似た話しかけるなオーラ

そして、集中を遮断した時の悲しそうな顔


話しかけてはいけない


俺はセフィ姉から目を離し、ソファーにいるミィに目をやる



「…」


ポチポチと、PITを操作している


「暇なんだな、経済対策団って」


「ふざけんな! なんか見てくると思ったら!」


「だって、いつもセフィ姉の部屋で遊んでるじゃん」


「仕事中なの! 私も!」


めちゃくちゃ睨んでくるじゃん



経済対策団とは、騎士団の組織の一つ

騎士達が討伐、狩猟を行うモンスターの素材は大きな利益となる


その利益を運用すべく、金融へと投資する

それがミィ達の仕事なのだ



「はい、お待たせ」


「ありがとう」


セフィ姉が紅茶を入れてくれた


とても香りが良い

そして、その香りがとんでもなく広がる



「スコーンも美味しい」


「うん」


俺とミィは紅茶を楽しむ



「それで、セフィ姉。今日はどうしてお茶に誘ってくれたの?」


「あら、用が無いと誘っちゃダメだったかしら」


「今じゃないでしょ。ラーズなんて、まだ見習い騎士なんだよ」


「そうねぇ。早く見習い期間が終わらないかしら」


「ラーズの騎士団はどうするの?」


「ふふ…、それはね」


「ちょっと待って。本人の目の前で人事の話とかやめて欲しい」

俺は、二人を止める


新人は騎士団に入り、見習い騎士として訓練を行う

そして、見習い騎士の期間が終われば、騎士団内の人事異動が行われるのだ


見習い騎士は正式に騎士として認められ、正式に階級が与えられ、五階級中一番下の騎士となる

これは分かり安くするため正騎士と呼ばれる


その後、六つの騎士団に振り分けられる

赤、青、黄、緑、白、黒の色と竜を冠する、赤竜騎士団などだ



「それで、セフィリア団長。ラーズの人事は?」


「やめろって、ミィ」


「人事は、発表前は幹部しか知ってちゃいけないの」


「ほら」


「だから、内緒よ?」


「言っちゃうんだ…」


セフィ姉が、身内に甘すぎる

団長なのに…



「ラーズは…」


「待ってって。進路なんて興味ないから。俺は、与えられた場所で頑張るだけだから」


「そう?」


「それよりも、隠密騎士の仕事の話をしよう。ウロボロスの欠片の、あの錬金術師の足取りは?」


「チャンさん達がクシュナで頑張ってくれてるけど、しばらく探すの無理かもね」

ミィが答える


「何でだよ」


「クシュナの国軍がブチ切れたみたい。厳戒態勢で国中警戒されていて、調査なんてしたら一瞬でスパイとして捕まっちゃうよ」



町中で現れたウロボロスの欠片を持った錬金術師

俺とやり合って逃がしてしまった


このことで、クシュナ軍がウロボロスの欠片を先に見つけた勢力がいることを把握

警戒感を示して、じゅうたん爆撃のように人海戦術で錬金術師を探しているとか



「あの時、捕まえておければ…」


「まぁ、それは仕方ないわ」


「ラーズ。今回のウロボロスの欠片の件が終わったら、あなたはアイオーンに正式に加入してもらおうと思ってるの」


「…それは、願ってもないね」



アイオーンとは、セフィ姉が集めている私設戦闘集団


その目的は、たった一つ

神らしきものの教団の消滅だ


俺は、あの大崩壊を起こした教団を許さない

絶対に消す


だが、一人ではできない

そのため、目的を同じくするセフィ姉のアイオーンに入れてもらうことを希望した


その実力の査定のため

そして、セフィ姉への恩返しのため、俺は隠密騎士となった



「ラーズ、いいこと教えてあげようか」


「何?」


ミィがニヤニヤする

すげーイラッとする



「私、クロノスに入ったんだ」


「は?」



セフィ姉の作り上げたアイオーン

この組織は、クロノスという意思決定機関と、ケイオスという、その他の実働部隊から成っている


クロノスは、錚々たるメンバー


・竜騎士の里出身の竜騎士ソル

・鉄腕の名を持つ宇宙産サイボーグ、ヴァイツ

・異世界の騎士ヴァルキュリアの一人、ヒルデ

・バルドル教の聖女テレーズ

・電脳の申し子オリハ

・クレハナ最強の忍者ジライヤ

・最強の霊能力者カンナ


などなど

ここに、ミィが加わるだと!?


俺もいつか、クロノス入りを狙っていたのに…

ま、実力的にいつ入れるかなんて分からねーどな!



「そんなわけで、私を敬いなさい」


「だったら、ミィだけでウロボロスの欠片を見つけて確保しろよ」


「もー、怒らないでよ。ウロボロスの欠片を確保できれば大手柄でしょ。そうしたら、クロノス入りも間違いなしなんだから」


「…」


「ラーズ、教団は力を入れつつあるわ」


「え?」


俺はセフィ姉を見る



教団は、大崩壊が起こってからテロ組織としてのイメージが定着

各国で排除の動きが出ている


龍神皇国、シグノイア、ハカル、クレハナ…

各地で信者が激減、撤退している


クシュナではまだ布教所が残っていたが、徐々に減っていくと見込まれている



「…惑星ウルからは撤退の方針よ。でも、惑星ギアでは違う」


「惑星ギア…」


「そして、大崩壊で発生した膨大な魔力。これを教団は持ち出している。方法は不明だけどね」


「…」


「もちろん、この魔力を持ち出した目的も不明。ただ、惑星ギアで何らかの動きがある可能性がある。こっちも調査しないと、ね」


「…俺は、ウロボロスに集中でいい?」


「ウロボロスも、もちろんやってもらうわ」


「も?」


「やってもらいたいことはたくさんあるわ、隠密騎士として」


「それって何なの」


「…汚れ仕事よ。一人、隠密騎士が壊れちゃったから人が足りなくて」


「…え?」


隠密騎士が壊れた?



「ヤフヤっていう騎士なんだけど、覚えてる?」


「…いや、知らないな」


「ラーズが大学生の頃だったかしら。私の表彰式で、闘氣(オーラ)のないラーズを殴った元貴族」


「…」


「そして、遺跡発掘に来たラーズとフィーナを襲った騎士よ」


「…思い出した」


闘氣(オーラ)を持たない俺は、騎士だったヤフヤに一発で顎を割られた

その後、逆恨みで襲ってきやがったんだ



「彼は、私の隠密騎士になってもらっていたの」


「そ、そうだったんだ」


「ただ、やっぱり仕事が、ね。心が壊れて自殺したわ」


「…」


「隠密騎士の仕事は、心が擦り減る。辛い、汚い、そんな仕事。長く続かず、壊れるか辞めるかのどちらかよ」


「…」


「ラーズ。私は、やらなければいけないことがたくさんある。あなたは部下では足りない、私のパートナーになって欲しい。どこまでも付いて来てくれる。そこが、仮に地獄だったとしても…」


「望むところだよ、セフィ姉。俺は一緒にいる、絶対にね」


「…」


「…」


俺の夢

それは、憧れの女性だったセフィ姉の力になれる男になることだった


セフィ姉は、何度も俺を助けてくれた

今度は、俺が恩を返す番だ


俺は止まらない

大崩壊のツケを払わせるために


そのために、俺はセフィ姉の下で力をつける



「ラーズ。まずはウロボロスをなんとかしようよ」

ミィが口を挟む


「分かってる」


「そう言えば、まだダナンジャには会ってなかったわね」

セフィ姉が、思い出したように言う


「それって…」


「アテナと一緒に、三人でチームを組んでもらう一人よ。隠密騎士の、ね」


「チームね…」


アテナは強い

けど、シリアルキラーのバトルジャンキーだ



「見習い期間が終わったら、正式にチームを結成。ウロボロスを始めとして、動いてもらうつもりよ」


「分かってる、何でもやるよ」


「そう言えば、ナイツオブラウンドのことだけど。今度、ラングドン先生に話を聞きに行こうと思ってるの。決まったら教えるわね」


「ら、ラングドン先生!?」


ラングドン先生とは、俺とミィ、フィーナの騎士学園時代の担任の先生

とてもお世話になった恩師だ


ナイツオブラウンドとは、風の道化師が口走ったウロボロスの欠片を奪った組織

Bランク戦闘員を多数持っている、危険すぎる謎の組織だ



「ラングドン先生、騎士学園でのテロでナイツオブラウンドと接しているから。他にも、学園長先生にも聞いてみようと思って」


「さすが、団長だね…」


俺とミィは、騎士学園の頃を懐かしく思い出した


ラングドン先生…、最後に会ったのは、俺とフィーナの結婚式の時か

また会いたいな



騎士の階級 一章七話 密命

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― 新着の感想 ―
まさか彼が隠密騎士になっていたとは。まあ汚れ仕事とか貴族生まれのボンボンには耐えられないよね、むしろ良く持った方かも
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