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一章十八話 団長の密命

用語説明w


セフィリア

龍神皇国騎士団の団長。金髪の龍神王と呼ばれる英雄騎士であり、序列二位の貴族でもある。ラーズの恩人であり、雇い主でもある


アテナ

黒髪ノーマンの女性。薙刀を使う騎士であり、閉じているような糸目が特徴。セフィリア個人に忠誠を誓った隠密騎士。Bランクだが、格上のB+ランクを倒し切る腕を持つ薙刀使い。そして、シリアルキラー気質


龍神皇国 中央区

騎士団本部 団長室



「お疲れ様、二人共」


セフィ姉が暖かい紅茶を入れてくれた



俺は、アテナと一緒に今回のクシュナ遠征の結果を報告する


風の道化師にデスペア、ヴェーネルト家の用心棒

ウロボロスの欠片を持つ錬金術師


カオスな戦場、連戦

ウロボロスの欠片を発見したってのに、確保に失敗した



「錬金術…」


「うん、そう言っていた。錬金術の完成がなんとかって」


ウロボロスの欠片を持っていたノーマンの男

仙人として完成したB+ランクの戦闘員だ



「ウロボロスは、錬金術でいう永遠、完成を意味する象徴。狙う理由にはなるわね」


「それが、あの力…」

アテナが頷く



身体を液状化して、エネルギーを吸収する能力

理論上、周囲に生物がいれば無作為にエネルギーを得られる


そして、身体能力も跳ね上がっているように見えた

あのビルを簡単に跳びこえる、あれは闘氣(オーラ)だけでは説明がつかない



「ごめん、せっかく見つけたのに」


発見したのに、捕獲対象を確保できなかった


「…」


「言い訳はしない。俺が甘かったし、準備も足りなかった」


風の道化師

デスペアの個体名、串打ち

ヴェーネルト商会の双剣野郎

そして、仙人である錬金術師


連戦の結果、俺は武器を失った

装具と竜牙兵を壊されてしまい、手数が減ってしまったのだ

俺のミスだ



「反省はして、次に生かしましょう」


「うん…」


「まずは、ナイツオブラウンドの調査かしらね」


「…」


風の道化師が言った、ナイツオブラウンドという組織の名前

あの錬金術師に確認はできなかったが…

そっちの調査も必要となる



「ラーズは、そのナイツオブラウンドって組織を知ってたんよね?」

アテナが尋ねる


「知ってたと言うか、昔に襲われたことがあるんだ」


「え?」


「騎士学園の頃だ。プロの暗殺者が、そのナイツオブラウンドの一員だったとか言っていた」


「プロの暗殺者…」


「学生だった俺達は、パーティを組んでいた四人で挑んだ。でも、ガキだったし、歯が立たなくて先生たちに助けられたんだ」


「学園長先生とラングドン先生、ルノアール先生の事ね」

セフィ姉が微笑む



騎士学園がある学園島で発見された海底遺跡

それをラングドン先生が発掘していた


この遺跡は、世界的に有名な伝説、ナティビタスの箱に繋がる可能性があるものだった


ナティビタスの箱とは考古学界に伝わるお宝伝説


財宝なのか、歴史的な大発見なのか…

その正体が謎であるにも関わらず、世界中の人々を魅了してきた伝承だ


都市伝説に近い、この伝説を、ナイツオブラウンドという組織は本気で狙っていた

そして、発掘された海底遺跡を爆破し、情報を独占しようと画策したのだ



「ナイツオブラウンドは、龍神皇国でも調査対象になっている組織よ」

セフィ姉が教えてくれる



ナイツオブラウンド


正体不明の組織だが、実態は不明

あくまでも組織制が推察できるというだけにすぎない


その特徴は、Bランク戦闘員を多数取り揃えているということ

つまり、ミサイル以上に脅威となる戦闘員を複数抱えているのだ


テロ行為や破壊活動、遺跡の調査など、活動目的は不明で、一貫性がない

神らしきものの教団との関わりも指摘されており、複数の反社会的な組織とも連携している



「思ったよりも、危ない組織なんやなぁ…」


アテナが、糸目で悩んでいる


「アテナって、ときどき寝てると勘違いされない?」


「めっちゃ失礼、ムカつく」


「あ、さーせん」


糸目、気にしてたんだ



「それじゃあ、今後の方針を決めるわ」

セフィ姉が話を戻す


「うん」

「はい」


「しばらくは、チャンさんや他のスパイを使って情報収集。ラーズとアテナには、必要があればクシュナに飛んでもらう」


「了解」


「ラーズは、しばらくは見習い騎士として訓練に復帰。正式騎士を目指しなさい」


「わかった」


「アテナは通常通り。また、よろしくね」


「はいな」


「…アテナ、通常通りって何だ?」


「うちは、セフィリア様の隠密騎士やもん。いろいろあるんよ」


「…」



隠密騎士

それは、国家のためではなく個人のために動く名もなき騎士

つまりは、セフィ姉のために動く者だ



「セフィリア様はやらなあかんことが多すぎるんよ。龍神皇帝国やら、ドラゴンオーブと義体竜の入手やら…」


「龍神皇帝国って…」


大崩壊を引き起こした龍神皇国の貴族、ムタオロチ家

奴は、この龍神皇帝国の復活を狙ってシグノイアとハカルという二国を狙った


龍神皇帝国とは、龍神皇国の前身

約百年前に崩壊し、龍神皇国とシグノイアやハカル、クシュナなどの七つの国に別れた


そして、古い貴族たちは、この龍神皇帝国こそがあるべき姿と信じている

別れた六つの国を取り込んで、龍神皇帝国を復活させることを夢見ているのだ


そんな理由で大崩壊を起こしやがったムタオロチ家

俺にとっては、絶対に許せない存在だ



「私は、龍神皇帝国に興味はないわ。ただ、必要なら統合という方法を取る。それだけよ」

セフィ姉が肩をすくめる



セフィ姉は、大崩壊の首謀者であるムタオロチ家を特定した

そして、崩壊して国家機能を喪失したシグノイアとハカルを龍神皇国に統合した


さらに、同じく皇帝国から分離したクレハナというフィーナの祖国の内戦を終わらせた

そして、クレハナをも皇国に統合することとなったのだ


皇帝国の崩壊から百年

まったく進展が無かった皇帝国の復活という夢物語

それが、ここ数年の内に、六つの内三つが皇国に組み込まれた


この、貴族たちが歓喜する、結果的に皇帝国復活に近づく偉業を成し遂げて見せたセフィ姉

その功績で、若くして騎士団長という職を任せられたのだ



「ドラゴンオーブと義体竜って…」


「それも、貴族のわがままよ」

セフィ姉がため息をつく



龍神皇国は、ドラゴンを友とする国

神龍ランクも含め、多数のドラゴンと協力関係を結んでいる


そして、ドラゴンに関する全てのものを皇国が手に入れたいと考えている


ドラゴンオーブと義体竜

これは、古の魔大戦、終末戦争アポカリプスで使われた大いなる遺物

神龍を超える、伝説級のエンシェントドラゴンを使った禁忌の兵器だ


竜族の誇りを具現化した二つの宝を、貴族たちは皇国が手に入れることを代々命じている

今代は、その密命がセフィリアに下されているのだ



「セフィ姉の密命…」


「ドラゴンオーブは何千年も行方不明の、伝承の中の宝物。義体竜は惑星ギアのブリトンが、アポカリプス終焉の時から確保している。他国に攻め入るわけにもいかないし、実現不可能な妄想よ」


「セフィリア様のような、若くて有望な貴族は、こういう無理難題を押し付けられるんよ」


「ふーん…」


「私のことはいいわ。報告会は終わり。二人共、次の呼び出しに備えておいてね」


「了解です。ラーズ、さっさと見習い騎士を卒業しなあかんよ?」


「だったら、訓練に集中させてくれ」


俺とアテナは、セフィ姉に挨拶して団長室を出る



「セフィ姉、忙しそうだったな」


俺は、団長室のドアを振り返る


「知らんの? 今は大仲介プロジェクトの成功、異世界と宇宙の国交樹立記念! って、イベントやってるんよ」


「え?」



異世界とは、このペアのある座標からずれた世界

イグドラシルと呼ばれる異世界にある国家、ヨズヘイムのこと


そして、宇宙とは、太陽系第三惑星であるペアから七億キロも離れた第五惑星

この惑星の第二衛星に作られた宇宙拠点、ストラデ=イバリのこと


この二つの国家の国交が正式に樹立され、異世界技術と宇宙技術が交差

二つの技術によって、隔てられていた二つの世界の交流を龍神皇国を介して実現した

これが、大仲介プロジェクトだ


魔導法学の大魔法陣と宇宙戦艦の交換というカオスな取引が成されたおかげで、ストラデ=イバリへの何億キロメートルもの距離を空間魔法陣を使ってワープ

あっという間に行けるようになった


ヨズヘイムは、宇宙戦艦を使って異世界イグドラシルの戦争に利用している


龍神皇国では、この二つの世界から移民を受け入れ、カオスな街を作っている真っ最中

そして、この交流を主導しているのもセフィ姉なのだ



大仲介プロジェクトによって、ペアにも複数の技術が入ってきました

宇宙技術として、高分子ポリマーや自己生成技術

魔法技術として、空間魔法陣や霊、氣工学技術


ラーズが装具を具現化するのに使っているニーベルング腕輪や装備にもヨズヘイムの技術が使われています

宇宙技術を使った装備もあり、いずれ出てきます

魔法と科学は等価な関係ですw

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― 新着の感想 ―
おー、懐かしの大仲介プロジェクト。新たな段階に至ったのかな?宇宙技術と異世界魔法技術両方活用すればすぐにそれなりにデカい街を作れそう
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