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一章十六話 クシュナ9

用語説明w


魔石装填型小型杖

使いきり魔石の魔法を発動できる


リィ

霊属性である東洋型ドラゴンの式神。空中浮遊と霊体化、そして巻物の魔法を発動することが可能


クシュナ

イスルタブ市 街中



わざわざ裏路地に入り、俺の前を歩いていた男が立ち止まった

そして、振り返る


ノーマンの優男

人当たりの良さそうな顔だ



「…何か用ですか?」


「喧嘩を売りたいんだ」



俺は構えを取る


「なぜ、そんなことを…」


芝居がかった、困った顔をする男


「いいから、さっさとやろうぜ。もう少し、素人の振りを練習するんだな」


「…」


男の表情が消える

小芝居は終わりってことか



「腹立たしい。竜人がノーマンに対して…」


男が言う


「なんだ、ノーマン至上主義の勘違い野郎か」



ノーマン至上主義


ペアには、大きく分けて二種類の人種が存在する

惑星ギア由来のノーマン

そして、惑星ウル由来の七人種

ドワーフ、エルフ、獣人、竜人、魚人、魔族、神族だ


数は、二つの惑星でそれぞれ五対五

つまり、ノーマンは全体の半分を占める

それ故に生まれた思想

ノーマンは、最も優れた人種であるという差別思想だ


今ではかなり廃れたが、まだまだこの思想を持っている者はいる


ちなみに、二つの惑星の人類は交配が可能

それぞれの惑星で進化した人類にも関わらず、同一の種のごとく交配できるという不思議


この謎は、人類学上最大の謎と言われている

…豆知識だ



「後悔させてやる。ノーマンに楯突くとどうなるかをな」


「勉強させてもらいますよ。数が多いだけのノーマンさん」




ズドドッ!

ドドドドド!


俺が言った瞬間、男が手をかざす



その途端、金属の棘が射出

更に、俺の足元からも棘が飛び出した




「…金属性魔法か」


俺は、側転するように回転

棘の切っ先から逃れる



「よく避けたな」


「当たってやれるほど、のろまじゃない」



言いながら、背中を冷たいものが流れる


こいつは何も持っていない

それなのに、何でこんな強力な魔法を使えたんだ?


魔法強化機能がなければ、さすがに今の威力は出せないはずだ

発動速度もかなりのものだった



…金属性とは土属性の一種

土属性は魔力を物質化して固体を生み出す属性だ


作り出された固体は、柔らかかったり脆かったりと、術者の力量が問われる

そして、熟練度が上がると、硬さだけでなく粘性を持ち、導電性を持つ材質…、金属としての特徴を持つ場合がある


これを特別に金属性と呼んでいるのだ



ズドドッ!


また、金属の棘の射出



こいつは遠距離特化

魔法でペースを握ってくる


仕方がない、俺も奥の手を使う



ズドッッ!


飛んで来る金属の棘



右に一歩避ける


同時に左腕を突き出す



ドガガガガガッ!


「何っ!?」



ノーマンの男が闘氣(オーラ)を纏う


発射された弾丸がパラパラと落ちる



「な、なんだ、その腕は…!?」


「お前の腕と同じ。俺もちょっとだけ、人間をやめただけだ」


「…」


「お前も仕込んでるんだろ? 腕の中に杖を」


「ふん…」



恐らく、奴の腕には柔らかくしなる材質の魔法使いの杖を仕込んでいる

魔玉と杖の長さを確保し、関節の可動域を確保しながら、全てを腕の体組織の中に隠した


火力、利便性、意外性、全てが厄介な身体改造だ



ちなみに、俺の腕も特別性

左腕の前腕が肥大化し、手首から左拳の上に銃身が飛び出している


ナノマシンシステム2.1

人体を強化する能力を、完全な変形能力へと昇華させた能力


俺のバージョン2.1は銃化能力

銃身やチャンバーの部品を体組織内に仕込み、アサルトライフルを左腕に再現する能力


治癒力向上、身体強化能力と共に、俺が戦場を生き残れた力

必死に育て上げた能力


本当は隠しておきたい能力だが、装具を双剣野郎にぶっ壊されたため解禁だ



闘氣(オーラ)使いに、銃なんかが効くかぁぁぁっ!」


ノーマンが突っ込んでくる

また、左腕を突き出す



ズガガガッ!


金属性範囲魔法

棘が広範囲に地面から突き出す



俺は、風属性の特技(スキル)、風の羽衣を発動

同時に、背中に触手を展開

翼のように、ナノマシン群で膜を作り出す



ドシュッ!


ドシュッ!


ドシュッ!



棘の連射に射撃を返す


螺旋軌道で突進、壁を使って三角蹴り


一気に進行方向を変える



「なっ…!?」


ゴギャッッ!!



全力のハイキック

反応できずに、ノーマン野郎が吹き飛んだ


どうせ、こいつは魔法使い系

格闘の技なんて知らねーだろう


闘氣(オーラ)があろうが、こっちも闘氣(オーラ)の攻撃だったらしっかり効く



「こ、こ、この……!」


顔面に足の跡、もうすぐ腫れあがるだろう

怒りに歪んでいる



「殺してやる…後悔しろ!! この劣等種がぁぁぁっ!!」


ノーマンが力を放出

魔力が全身にいきわたり、霊体が明らかに活性化



「…!」


凄まじい出力

な、なんだ、こいつ…!



ズドドドドドドドドッ!


「うおぉぉぉっ!?」



とんでもない数の棘を発射

は、ハリネズミかよ!



咄嗟に小型杖を振る

土属性土壁の魔法弾だ


土壁が一瞬でぶっ壊されたが、それでもないよりはまし

地面に伏せて、何とか被弾を免れた



「ま、まさか、仙人…!」


「くくく…、お前みたいな劣等種が知ってるとはなぁ」


ノーマンがニヤリとする



仙人


変異体と双璧を成す、人体強化術の最高峰

霊体を神格化することで、膨大な魔力、輪力、そして、仙氣と呼ばれる特殊な氣力を得る

肉体ではなく、霊体を進化させた人類の到達点の一つだ


ちなみに、フィーナやセフィ姉も仙人として完成している

こいつも、それに近い強さを持っているということだ



俺は、すぐに倉デバイスから大剣1991を取り出す


強化兵のBランク戦闘員は強い

普通の騎士じゃ手に負えないほどの力を持つ


仙人の域に達した闘氣(オーラ)使いは、もはやBランクではない

一つ上のB+ランク、文字通りランクが違うのだ



ドスドスドスッッ!


ぶっとい棘が三つ発射される



「おいおい、少し騒ぎ過ぎだ」


「逃げ足だけは早いな。よく避けるもんだ」


「お前がノーコンなだけだ。下手くそ」


「…とことん腹が立つ。誰彼構わず喧嘩を売って来る野蛮人が」


「バカだな、そんなわけねーだろ。お前を探してたんだよ」


「…!」



闘氣(オーラ)相手に銃は効果が薄い

手持ちで使える近接武器は、この大剣1991だけ


だが、こんなデカい武器は対人戦に不向きだ

それなら、隙を突かないとダメだ



「お前、何者だ?」

ノーマンが怪訝な顔をする


「もう逃がさない。やっと見つけたんだからな」


「…」


よし、食いついた

カマをかけたら、疑心暗鬼になりやがった


あとは、少しでも情報を引き出す

もう一押ししてみるか



「まもなくクシュナ軍が到着する。諦めろ」


「…!」



これだけ騒いでいれば、勝手に通報されているだろう

警察や軍が来る前に勝負をつける…


B+ランクがホイホイいるわけがない

こいつも二刀流野郎と同じ、ウロボロスを狙っている組織の可能性が高い


下手すると、カルノデアや別の組織の戦闘員か…



「私は、錬金術を極めるという使命がある。こんなところで邪魔をさせるかぁぁぁぁっ!」



ノーマンが、金属性投射魔法

棘を発射



だが、分かっていた

こいつは、金属性魔法に絶対の自信を持っている


そのタイミングに合わせる



絶対に避けられない


攻撃に意識が寄る


カウンターに反応ができない


そのタイミングで貫く



それが、俺の武の目指す境地


至高の一撃だ



棘を潜る


ダッキングからの追い足



「なっ…!?」


ノーマンが驚愕




ボゥッ…ズッガァァァァン!!




カウンターで叩き込んだ、1991のフル機構突き


ジェットとパイルバンカー、超振動機構など、全てのギミックをフル動員した突き


サイキックの力を乗せるのは諦めた


その分、速さを重視した闘氣(オーラ)の一撃だ



「ごふっ……」


1991がノーマン野郎の身体を貫通



魔法使い系、後衛タイプの闘氣(オーラ)は近接に比べて弱い

打たれ弱いのだ


これは仙人…、強化兵だったとしても同じだ



俺は、小型杖を振る

力学属性拘束の魔法弾


「さぁ、洗いざらい吐いてもらおうか。どこの組織…」



「ぐおぉぉぉぉっ! こんな所でやられてたまるかぁぁぁぁぁ!!」


ノーマンの身体に浮かび上がる紋様

同時に、膨大な力



な、なんだ?


魔力…だけじゃない

特技(スキル)の源、輪力までが増大して…




ゴガッ


「…っ!!」



とんでもない速さの、男のフルスイングフック


男の拳を粉砕しながら、俺を吹き飛ばす




「ラーズ!」


アテナが走ってくる



「気をつけろ、闘氣(オーラ)使いの戦闘員だ!」


「あれ、ウロボロスの欠片…」


「何っ!?」


「暴走かも…、止めんとまずい…」



あれがウロボロスの欠片…


俺は、リィを出す

データ2もだ



「…アテナ、切り札を斬る。後は頼む」



ナノマシン集積統合システムのバージョン


体内においてナノマシンやマイクロマシン、ケイ素系細胞…、ナノマシン群を埋め込まれたコアによって制御、運用する人体強化システム

このナノマシン群は自己増殖し、レベルが上がっていく


1.0 治癒力向上

デフォルトの能力であり、損傷した体組織、血管などをナノマシン群が埋めることで、致命的な出血などから生還しやすくなる


2.0 身体強化能力

ナノマシン群が筋肉や骨格を補強して運動能力が上がる

強化中はナノマシン群が電力を消費するため、ON/OFFのスイッチがある


2.1 変身能力

身体強化能力から一歩進み、肉体に新たな機能を生み出す(育て方は人によって違う)

ラーズの場合はアサルトライフルの部品を左腕に取り込み、銃化する


また、変異体の背中の触手に膜を作り、グライダーのような滑空能力を得る


※ラーズは変異体であり、筋密度が高いためナノマシン群の量が多く、治癒力や身体強化が通常のナノマシンシステムや変異体よりも格段に上

考えようによっては、バージョン2.2とも言える

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― 新着の感想 ―
まさかの大当たり、逃げられる前に捕捉できて良かったがこれクシュナ軍来る前には終わらなさそうですね……
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