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三章二十四話 クシュナ四回目2

用語説明w


スサノヲ

見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人で、ラーズの装備の作成者


風の道化師

黒髪ショートカットのノーマン女性、Bランク。神らしきものの教団の戦闘員であり、風属性使い。あの大崩壊の裏で暗躍、魔属性装備である漆黒のボディスーツ、大鎌、手甲を使い、ピエロの仮面を好んでつけていたことから、風の道化師と呼ばれている


ミィ

魚人女性、ラーズの騎士学園の同期であり、龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


「スサノヲ」


「待たせたな。暑ぃーぜ」


スサノヲが汗を拭く


「スサノヲ、クシュナへようこそ」

マキ組長が微笑む


「マキ、クシュナに馴染んだなぁ」


スサノヲがベンチに座った



「スサノヲ、これを見ろ」


俺は、スサノヲに地図を送る


「ここは何だ?」


「ヴァヴェルをぶっ壊しやがった双剣野郎。錬金術師の件が終わったら、あの野郎を誘き出すポイントだ」


「あたしは何をすればいいんだよ」


「スサノヲの仕事は、見ておくことだ」


「あ?」


「奴を観察しろ。それ以外はやらなくていい」


「いや、いいけど…んー?」

スサノヲが首を捻る



「これで、仕込みは終わりです。錬金術師、仕留めましょう」


「…分かりました」


マキ組長が頷いた




深夜



錬金術師と風の道化師が接触する時間が近づいてきた


「ねぇ、これがうまくいったら、大丈夫なのよね?」


風の道化師が尋ねる


手術のことを言っている

本当に、教団を抜けるつもりなのか


「約束は守ります。逆に、これが失敗したら、あなたの価値は大きく下がります」


「わ、分かってるわよ」


マキ組長の冷たい目

風の道化師が目を逸らす



「…来た」


無線でルイの声



「ゲイル、人払いを」


「了解、配置完了」



風の道化師が、廃墟となったビルと工事現場の間の敷地に進み出る



「…風の道化師。時間通りだな」


フードを被った男

錬金術師が足を止める



「…約束は守って」


「お前と教団次第だ。そいつは?」


錬金術師がマキ組長に視線をやる


「教団の仲介人よ。正式契約を結んでもらうわ。闘氣(オーラ)使いじゃないから安心して」


マキ組長は、達人でも一般兵

闘氣(オーラ)の気配がない


錬金術師は、警戒度を下げる

脅威ではないと判断したようだ



「面倒なことを」


「厳戒態勢のクシュナからあんたを脱出させる。教団にとっても大きなリスクよ。簡単じゃない」


「…ふん、いいだろう」


「契約内容は、ウロボロスの欠片の情報提供。条件に応じた戦闘要請」


「…対価は、ナバテア密林を抜けて黒色への亡命」


「契約成立。もし次も裏切ったら、裏世界にこの契約書をばらまいてやる。信用を無くせばいい」


「貴様らこそ、亡命に失敗したら信用はガタ落ち……!!」


「…っ!?」



錬金術師と風の道化師の周囲に、四人の人影が現れた


全員が闘氣(オーラ)を纏っている



「あ、あんた!また裏切って…!」

「貴様っ…!」


風の道化師と錬金術師が同時に睨み合う


「お、落ち着いて下さい! つ、つけられたのかも…!」


マキ組長が動揺


忍って怖ぇーわ

いつもは冷たい怖さで満ちてるくせに、今日は儚く守ってあげたい感に変貌


全然、動揺してないくせに、本当に怖がっているように見える

悪女(ビッチ)がおる…



「…」


暗がりの中で、マキ組長が目を細めたように見えた



うむ、気のせいだ

心を読まれてたまるもんか

ごめんなさい


「ちっ…、巻き込まれるのはゴメンよ!」


「き、貴様…!」


「生きていたら、契約するわ」


風の道化師が、マキ組長を連れて脱出

風を纏って逃げる


これは、事前に打ち合わせ済みの動き


風の道化師の裏切りを隠し、万が一の失敗の時に使えるカードとして残すためだ



それを無視して、四人の騎士が錬金術師を囲む


「…何者だ」


「ウロボロスの欠片を捨てて投降しろ。命は保証する」


「信用できるか…!」



錬金術師が身体を波化

漆黒の靄と化し、波紋のように広がっていく


「お願いね!」


ミィが、オーシャンスライムのスーラを投げる



「キュイイッ!」


空中でイルカのような形となったスーラ



そのまま錬金術師の黒い波の中心付近に飛び込む


スーラの大容量の粘液が噴き出す

そして、黒い靄を絡め取りながら取り込んでいく



「こ、このっ…スライムは!」


「あんたの天敵よ。その黒い厄介な靄は封じたわ」



噴き出す黒い靄とスーラの粘液が拮抗

互いに消化し合う


脇には、錬金術師が微量の黒い靄を纏った状態で残された


靄の大部分をスーラに吸われ、波化ができていない

本体が丸見えだ



「スライムごときが…!」


錬金術師が、持っていた杖をスーラに向ける



「させるわけないやろー!」


そこにアテナが飛び込む



ズドドドドッ!


金属製投射魔法

無数の棘がアテナに向けて発射



バッシャァァァァァン!!


「うおぉぉっ!?」



斜め上ヘと振り上げた薙刀


水属性波浪の魔法が水を物質化

大波で棘の勢いを殺しながら錬金術師を押し流す




「…」


アテナが薙刀を構える



ほんの一瞬、張り詰めた空気



ズドォッ


「………!」



螺旋回転しながら、地面のアスファルトにミステリーサークルのようなヒビが穿たれる


その中心で、錬金術師が倒れていた



アテナの得意技

水流を纏う、水属性魔法と特技(スキル)の合わせ技


激流槍

…アテナが到達している、奥義だ



「がふっ…」


錬金術師が血を噴き出す



闘氣(オーラ)を纏っているとは思えないくらいのダメージ


更に、腕の中に仕込んでいた杖が折れて皮膚を突き破っている



「勝負はついたんよ。ウロボロスの欠片を渡しや」


「まだだ…、ウロボロスの力は…、こんなものではない……」


「最後の忠告やで」


アテナが構える



「スーラは、まだまだ余裕があるよ」


ミィが、黒い靄と食い合っているスーラに回復薬をかける

更に、毒消しのポーションも


ウロボロスの欠片の新機能

毒と呪いの同時付加を警戒してだ


錬金術師の黒い波化を完全に抑え込んでいる


スーラ、スゲーな…

今回の作戦で、一番活躍してる


あれ、騎士があんまり役に立ってないぞ



「私は…使いこなして見せる……!」


錬金術師が、何かを胸元から取り出す



ダァーーーーーン!


「ぎゃっ…!!」



その手が吹き飛ばされる


隣の廃墟で身を潜めている、ルイの狙撃だ



錬金術師が取り出したのは遺物

魔法を強化するアイテムだ



「うおぉぉっ!」


錬金術師が飛び起きる



そして、脱兎の如く走る


脚力となけなしの黒い靄を使って、アテナと真反対へ、一気に脱出を試みる



ゴキャッ…!


「…!?」



立ちふさがるのは俺


ヒノキの棒で殴りつけ、両手で掌打



アテナの前に押し戻す


「…ぐぅ…貴様は、竜の気配を持つ……」


「行かさねーよ。アテナ、止めだ」


「あいよー」


「錬金術師にドラゴンの素材は有益でな。竜狩りは私の得意分野だぁぁっ!」


錬金術師が金属製魔法を発動しながら飛び込む


…嫌な気配がする

ドラゴンキラー特性を持つ竜殺魔法だ



「解体して、竜の気配の原因を……!」



ズドォッッ!


「…っ…かっっ…はっ……!」



高速立体機動+

ホバーブーツと飛行能力

闘氣(オーラ)の身体強化作用と特技(スキル)風の羽衣


最高速度を乗せての突き



錬金術師が吹き飛ぶ


そこに待ち構えるのはアテナ



俺達が得た連携


更に、ダナンジャが警戒して待機している


絶対に逃さない布陣



チーム結成から、やっと形になった


終わりだ、仕留めた




ズッパァッッ




アテナが、薙刀で錬金術師を切り裂く


白目を剥いて、袈裟切りに裂ける身体



「あっがっあぁぁぁぁぁぁっ!!」


錬金術師が絶叫する



正気を失ったか

だが、死んでいない


身体からは、血ではなく黒い靄が噴き出す


そして、別れた身体をつなぎとめた



「な、何で死なんの!?」


「もう限界のはずだ、仕留めろ!」



ピピッ…ザザッ…

「すまん、何者かに抜かれた! 気をつけ……」


突然の無線

ゲイルの緊迫した声だ


「な、なんだこの化……ザザッ!」


焦っているのが伝わってくる

声が割れている




ホワァァァァ……!


「…っ!!」



錬金術師の身体を光が包む

聖属性回復魔法だ



「驚きましたねぇ。まさかぁ、こんな簡単にウロボロスの欠片がぁ…」


フードを目深に被った、小柄の影

長い、背の丈ほどもある杖を持っている



「…っ!!」


そして、俺が目を奪われたのは、もう一人の影



大理石のような質感の肌の巨体

背中には別の上半身が見え、特徴的な腹に空いた大穴


デスペア、串打ちだった


竜殺魔法 一章三十一話 闘氣の倍率

デスペア 一章十一話 クシュナ4

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