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第9話 姫騎士、迷う 前編

※姫騎士視点です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ポコニャンに関する聞き込みをしてから数日後。


「木剣による模擬戦闘、はじめ!!」


 今日は兵士たちの訓練に参加していた。

 隊長という肩書きではあるが、最近忙しくて鈍っているから。


「はあっ!!」


「うわっ!! さ、さすが姫様、お強い……」


「12連勝目。みんな、手加減は無礼だと思い遠慮せずに来い!! 私がお前たち全員の相手をしてやる!!」


「「「うおおおおお!!」」」


 相手は屈強な男たち。

 中には魔王軍との戦争を生き抜いた猛者もいる。


 だが私は誇り高き姫騎士。

 何人がかりだろうと、負けはしないっ!!





「ふぅ……」


 模擬戦闘が終わり、汗を拭っていると、


「姫様!!」


 執事がやってきた。

 かなり慌てている様子で。


「なんだセバスチャン、訓練中だぞ」


「も、申し訳ありません。大変です姫様、ケワシ地方に、勇者ルースが現れましたっ!!」


「なにぃ!?」





 急いで自室に戻り、新聞を確認する。

 た、確かに書いてある。勇者ルースがかつての仲間とサイクロプスを撃退した、と。


 嘘……ではないのか。


 魔王退治以降はじめて明かされた、勇者様の御活躍。


 勇者様。

 愛しのルース様♡♡

 毎夜毎晩想っては、胸がキューっと苦しくなる、あのルース様のお名前が!!


「あんっ♡♡」


「姫様?」


「すまん。ルースという文字を目にしただけで感度が3000倍になってしまうのだ」


「それはもはや病気でございます」


「えっとなになに、【魔法使いコロン氏はこう語る。この街で偶然再会して魔物を討伐することになったんです。ルースのやつ、まったく腕が落ちてなくてワロタ】だと……?」


 ワロタってなんだ?

 肝心の勇者様へのインタビューは……ないのか。

 まぁいい。


「セバスチャン、我が城の魔法使いを呼べ。ワープでケワシ地方に飛ぶぞ!!」


「かしこまりました」


 もし勇者様がポコニャンとして生きているなら、新聞に本名を出さないよう頼んでいるはずだ。

 ポコニャンとしてクエストに参加するだろう。


 そもそもポコニャンではなかった?

 うーん、わからん。


 とにかくまずはケワシ地方で情報収集だ。

 ふふ、ふひひひひ。

 ゆ、勇者様がいた場所へ訪れる。

 勇者様が吸った空気を、私も吸う。


 それって実質えっちなのではぁ!?


「姫様、もしかしたら会えるかもしれませんね」


「私は今でも覚えているぞセバスチャン。魔王に捕えられていた私を助けてくれた時の、あの眩しく凛々しく、かっこいいお顔を」


 会いたい♡♡

 会いたい♡♡


 会って、めちゃくちゃにされたい。

 逆にめちゃくちゃにするのも……アリッッ!!


「くくく、くきききききききき!!!! クゥゥケケケケケケケケケケケケケケケケケエェェ!!!! ケケケッッ!!」


「姫様、笑い声がだんだん化け物になっています……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ケワシ地方は冒険者ギルドが盛んで、世界各地から大勢の人間がやってくる。

 故に、ワープを邪魔する結界などは張られてはいなかった。


 集会所に到着し、当日働いていた受付嬢を呼んできてもらう。


「はい、確かに勇者様とコロン様でした。魔法使いコロン様は、よくお弟子さんとこの集会所をご利用なさっているのですが、そのコロン様がルース様の名前を口にしたり、思い出話をなさっていたので。間違いありません」


「キタアアアアアアッッ!! オホオオオオオオオオオオッッッッ♡♡♡♡」


「え……」


「すまん、忘れてくれ。勇者様はまだこの街にいるのか?」


「それはわかりません。えっと、あの、こちらがクエスト履歴になります」


 冊子を渡してくれた。

 討伐対象、サイクロプスの群れ。

 参加者、コロン。


「ん? 一人?」


「勇者ルース様はギルドに登録していなかったので、無記名です」


「それ、許されるのか?」


「本来は許されません」


 しっかりとした身分証や住民票がなければ、ギルドに登録できない。

 そしてギルドに冒険者として登録していないと、クエストは受けられない。


「旧ギルド時代の登録カードも捨ててしまったと。魔王討伐後に今の新ギルド運営がはじまって、また申請しなくちゃいけなかったのですが、それをしてなかったらしいのです」


 よくある話ではある。

 だからてっきり、そのときポコニャンとして登録したのだと推理したのだ。


「ルース様に、登録している時間はないから許してくれとお願いされました」


「…………」


「伝説のパーティー様のお願いですし、報酬も半額でいいからとのことで。それでここの所長が許可を出したのです」


「まぁ、我々が平和に生きているのも、彼らのおかげなわけだし、多少の駄々は許されるか」


 しかし妙だな。

 何かが引っ掛かる。

 なんだ、この違和感は。


 ギルドに登録していなかった。

 不思議な話ではない。


 実は私だって登録していない。冒険者にはならない、祖国のために戦う騎士でありたい。

 それが騎士団の隊長としてのプライドだから。


「セバスチャン、どう思う?」


「姫様、これはワタクシの考えすぎなのかもしれませんが」


「構わん、申してみろ」


「ヤケにタイミングがいいですね。姫様がポコニャン氏を捜し始めた直後だなんて。まるで姫様を欺こうとしているかのようです」


「ふむ……」


 タイミングが良すぎる。

 確かにそうだが、考えすぎである可能性は否めない。


 それより気になるのは『この街で偶然出会った』という点。

 勇者様はケワシ地方で暮らしていた?

 世界中から冒険者が集まる街で?


 隠居して目立たぬよう生きているなら、避けそうな場所だが。


 じゃあ、クエストを受けるために来たのか?

 ならきちんとギルドに登録しているはずだし、していないならするだろう。

 普段はクエストは受けないが、どうしてもサイクロプスを倒さなくてはいけなかった?


 いや、ならばギルドを通さずに直接倒しに行けばいい。

 わざわざクエストとして倒したのは、やはり金になるから。

 では報酬を半額にするのはおかしいだろう。


 それに、金に困っているのなら、なおさら登録してクエストを受けまくるはずだ。


「やはり変だな。ルース様は隠居して、仲間にも居場所を教えていなかった。それほど勇者様は表に出たくないということ。なのに大々的に新聞に名前を載せるなんて……。受付嬢、口止めなどはされたか?」


「いいえまったく。好きに話せばいいと」


 おかしい。

 明らかにおかしい。

 どうして今さら表に出る。


 何故クエストを受けたことを秘密にしなかった。

 どういう意図でクエストを受けたのだ。


「何か意味があって、ルース様とコロン氏はクエストを受けたのか。単にサイクロプスを撃退する以外の意味が」


「コロン様は勇者様の居場所を知っていたのでしょうか? 以前知らないと言っていたのは、嘘だったのですかね」


「そしてクエストに誘った。もしくは、勇者様から提案した。いったい、何故……」


 嘘。

 嘘、か。


 待てよ、クエスト履歴に名前がないのは、【ギルドに登録をしていない】のではなく、別の理由があるのでは?

 これも嘘であるという可能性。

 登録をしていないんじゃない、できない、しない理由がを隠すための。


 例えば、


 ①単純に身元を隠したい。

 ②実はギルドから出禁をくらっている。

 ③本人ではない。

 ④すでに別名義で登録されている。


「すでに別名義で……。まさか!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

騎士は国を守るために戦い、国からお金を貰います。

冒険者は決まった組織に所属せず、ギルドからお金を貰います。


応援よろしくお願いします。

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