表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/11

第5話 姫騎士、手がかりを掴む 前編

※まえがき

姫騎士視点です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「姉上!!」


 ノックもせずに姉上の自室に入る。

 私の姉、ソルランが優雅に紅茶を飲んでいた。

 宝石や装飾品、魔物の剥製が並べられた、悪趣味な部屋だ。


「ノックくらいしなさい。客人の前よ」


 姉上と対面するように、小柄な人物が座っていた。

 フードを深く被り、その顔はよく見えない。


 だが、臭う。

 これは……魔物の臭いだ。


「父上にさらなる重税をするよう願い出たと聞きました。何故ですか!!」


「魔物の中でも特に希少な魔物、グリフォン。その目玉がかなり高価なのよ。希少で高価なものって、欲しくなっちゃうのよねぇ」


「なっ!? そのためだけに!?」


「だったらなに?」


「くっ!! 姉上は腐っている!! それにその客人、何者なのですか!!」


「あなたには関係のないことよマーリン。大人しく姫騎士でもしてなさい。……まさか、今の王権に反抗なんてしないわよね?」


 できるならしてやりたい。

 しかし無理だ。

 無駄に平民を煽って、死者を出すだけ。


 何故なら王族含め、あらゆる貴族が腐敗しているから。

 圧倒的な金と兵士の差に惨敗するだけだ。


 なにより、国内情勢が不安定になれば、隣国に付け入る隙を与えてしまう。


「くそっ!!」


 部屋を飛び出す。

 やはり私は無力だ。


 姫でありながら、なんたるザマだ。

 確信がある。この国は近いうちに滅ぶという確信が。


 下手をすれば来年にも……決して考えすぎではない。

 なのに、私には何もできない。

 もし、勇者ルースであれば、きっと良い案を思いつくはずなのに。


「ルース」


 ふひひ、いかんいかん。

 名前を呼んだだけでニヤニヤしてしまった。


 私の愛しの勇者様。

 彼の冒険は本になっており、私は毎晩熟読している。


 そのなかでも特に好きなエピソードは、村を魔物から救うくだり。


 ただ魔物を殺すのではなく、村人に魔物退治の方法を教えるのだ。

 たとえ、時間がかかっても。


 それこそ、真の救済。

 勇者様は常に物事の芯を捉えている。


 やはり早急に私の旦那様にして、国内でとことん成り上がらせてトップに君臨させなくては。


「マーリン様」


 前方から執事がやってきた。


「どうした、セバスチャン」


「ニシノ村の森にてドラゴンが討伐されたと情報が入りました」


「ほう、ドラゴンが。ニシノ村……そんなところに出現したとは……。やはり魔物たちの動きが活発になっている」


「良い機会です。騎士団を引き連れ、遺体を処理するついでに、ドラゴンの観察をなされては?」


「うむ。魔王が死んでから、ロクにドラゴンを見たことがない兵も増えてきたからな」


「それに、みんな姫様を大変慕っております。そんな姫様とのささやかな遠征を楽しみにしているのです。日頃の労いを兼ねて、ぜひ」


「そうだな、最近はめっきり顔を出していなかった。王国騎士団第一部隊隊長でありながら」


 私自身、気晴らしになるか。


「ところで、誰がドラゴンを倒したのだ? 相当な手だれであろうが」


「倒したのは地元の魔法使いの少女とのことで」


「ほほう。ぜひ会ってみたいな。しかし、ドラゴン退治なら王国軍に任せればよかったものを」


「依頼をするだけで税金がかかりますから。故にギルドが盛んなのです。ギルドは民営なので」


 それでは、騎士たちの経験値がまったく蓄積されない。

 こんなことでは、もし魔王軍が復活したらどうするつもりなのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 王国騎士団、つまりは王国の軍隊である。

 その騎士団から若手を30名ほど選出し、ニシノ村へ向かった。

 村についてから噂の魔法使いフォウに会い、ドラゴンの遺体まで案内される。


「ほほう、ずいぶんと大きいな。エネルギーの暴発を利用して倒した。若く、目も効かんのに大したものだな、フォウよ」


「い、いえ……」


 それにしてもこの死体、不自然だ。

 両翼と脚一本が切断されている。

 しかも見事に綺麗な断面。おそらく一太刀で斬ったはず。


 かなりの剣士だ。

 おそらく私以上の実力者。


「仲間がいたみたいだな」


「あ、はい。その人と二人で戦いました。キタノ街のギルドで出会ったんですけど……」


「何故、そいつが殺さなかった?」


「へ?」


「これほどの芸当ができるなら、ドラゴンを瞬殺することも可能だったはずだ。なのにトドメは君が刺した」


「えっと、その……。ごめんなさい、言えません。口を酸っぱくしてお願いされたんです、あまり自分のことは語るなって」


「ほう」


 正体を隠したい、もしくは目立つのを嫌う者なのか。

 だからフォウに殺させた?

 結局、最後の一撃を与えた者が一番の功労者として扱われやすいからな。


「ふむ……」


 と、騎士団の若手メンバーがドラゴンの遺体に感嘆の声を漏らした。


「おーすっげー、これがドラゴンかぁ。初めて見たぜ。……頭ないけど」


 魔王が死んで5年。たった5年のようでされど5年。

 当然世代も変わる。


 私だって、5年前は見習い騎士だったから、実はドラゴンとの戦闘はほとんど経験がない。





 待てよ?


「君、いくつだ?」


 フォウが答える。


「え、13歳です」


「ずいぶん優秀な魔法使いだな」


「あ、ありがとうございます。独学なんですけど……」


「ドラゴンの倒し方も、独学か?」


「え……」


「まさか、その剣士の仲間から教わったんじゃないか? 君は若い。ドラゴンとの戦闘は初めてで、楽な倒し方を知らなかった。だからギルドに助けを求めた」


「…………」


「そして同行してくれた仲間から教わった。違うか?」


 フォウが明らかに狼狽えている。

 根が素直な子なのだろう、嘘やごまかしが下手なようだ。


 私の心臓がドクドク高鳴る。


 困っている人に、魔物の倒し方を教える。

 勇者ルースのやり方だ。

 それに圧倒的な剣術レベル。

 勇者ルースならばあり得る。


「まさか、その仲間は坊主頭じゃなかったか? 黒髪の」


「す、すみません、私、音はわかりますけど……」


「あ、いや、こっちこそすまない。失礼なことを……そいつの名前は……」


「ごめんなさい、言えないです」


 構わん。


「セバスチャン」


「はい」


「キタノ街のギルドに行くぞ」


「はい?」


「フォウはギルドでそいつと出会った。おそらくギルドを通して依頼したのだろう。ならば、履歴に名前があるはずだ。急ぐぞ」


「ドラゴンの処理は?」


「ええい、大急ぎで終わらせる!!」


 もしかするともしかする。

 私がずっと追い求めていた坊主頭の勇者様。


 いや……勇者様♡♡

 ゆうしゃさまの手がかり♡♡

 ついに、ついについについにッッ!!!!


 うひょおおおおおお!!!!


「んんんっ♡♡♡」


「姫様!?」


「す、すまん。興奮しすぎて絶頂しかけた。よし、さっそく取り掛かるぞ!!」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

楽な倒し方、といってもドラゴンがエネルギー弾を撃とうとしなければ不可能なんですけどね。

なので結局、ドラゴン退治にはかなりの腕前が必要です。


フォウちゃん、メインキャラに昇格させたいなあ。

させたいですね。


応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ