第2話 姫騎士、発情する
※姫騎士マーリン視点です。
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この国は腐っている。
腐敗した政治、平和ボケした貴族たち。
増える犯罪、増える魔物。
怠慢は他の国にも伝染し、世界全体のモラルが低下しつつある。
このままではいずれ新しい魔王が誕生して、また混沌の世界に戻ってしまうだろう。
「マーリン姫、少しよろしいでしょうか」
庭で剣の修行をしていた私に、執事が話しかけてきた。
「なんだ? これからスクワット1000回をしなくてはならないのに」
「お探しの勇者様についてです」
「なにっ!?」
かつて、魔王に捕らえられていた私を救ってくれた坊主頭の勇者様。
魔王討伐後は一切行方がわからなくなっていたのだが……。
「見つかったのか!?」
「いえ、ですがかつての仲間の一人に聞いたところ、勇者は」
「勇者、様!!」
「……勇者様は隠居なされているようで、王国軍には入らないんじゃないか、とのことで」
「確定ではないのだろう? なら無意味な情報だ」
「し、しかし、かれこれ5年も捜しているのに、一切手掛かりもありません」
「人類が魔王を倒すのに50年も費やしたのだ。それの10分の1ではないか」
「はぁ……」
見つけだしたい、私の救世主。
もう一度会いたい、あの坊主頭の勇者様。
「おーい、マーリン」
遠くから兄上が声をかけてきた。
周りに貴族の女を侍らせて。
「そんなことしてないで、お前も参加しろよ、もうはじまるぞ、パーティー」
「兄上、パーティーなんてしている場合ではありません。民草は税金で苦しみ、農民たちも魔物の被害に悩んでいるというのに」
「知らねー。てか魔物を倒すのはギルドの役目っしょ!!」
「ギルドだけでは……。なんのための王国軍ですか!!」
「お前は姫なんだから、そんなダルいこと考えなくていいの。お前が考えるべきは……男の喜ばせ方だ!! なんつって!! へへへー!!」
「くっ……」
この、愚兄が!!
いずれこいつが王となるなど、悪夢でしかない。
いっそ処刑できたら楽なのだが、現状それをすると私自身の立場も危うくなる。
指導者になり得る人物がいなくなってしまう。
こうなったら、何がなんでも勇者様を見つけだし、この国のトップにまで成り上がらせてみせる。
またこの国を、いや世界を救ってもらうのだ。
あの勇者様なら、あの聡明で優しく賢く強い坊主頭のお方ならきっとできるはず。
魔王を倒す旅をしながら、各地の政治問題を解決し、悪徳貴族を成敗した勇者様なら。
そして、そして……。
ゆくゆくは私の旦那にして、いっぱいイチャイチャしたい♡♡
めちゃくちゃにしてほしいし、逆にめちゃくちゃにされるのもアリ!!
あぁ、勇者様♡♡
私の初恋泥棒様♡♡
彼を思うと全身が熱く滾っちゃう♡♡
発情しまくりでどうしようもなくなっちゃう♡♡♡♡
あ〜あ、勇者様の喜ばせ方なら、いくらでも勉強できるのに。
だから見つけだす。
絶対に成り上がらせる。
姫たる私に相応しい夫になってもらうッッ!!
私の、勇者様♡♡
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※あとがき
勇者ルースと姫騎士マーリン、二人の視点で描きます。
サブタイトルの頭になっている方がその回の視点です。
戦いがはじまるまで、もう少々かかります。