プロローグ
「今更、傭兵団に戻ってきて、はい戻りますなんて虫のいい話があると思ってたの?」
黒髪の青年が髪を掻き分け、傍らに女を3人侍らせて、地面に這いつくばる赤髪の男を見下している。
赤髪の男の体のあちらこちらから血が吹き出ており、生きているのが奇跡という状態だ。
「………ん、シュー………っ------!!」
赤髪の男は顔だけでも上げて黒髪の青年に向かい叫ぶが、口から掠れた音と粘り気のある液体が溢れただけだ。
「ん?今すぐに回復魔法を使えって?やれやれ、アンタら俺の力を不要として追放したんじゃ無いか。なのに助けてくださいなんて滑稽だな」
誰が望んだ、願ったそんなことをと赤髪の男は奥歯を噛み締める。
手持ちに怪我を癒す即効性のポーションはない。
自分は魔法も魔術も使えない。
時期に息絶える。
紛れもない事実だ。
だが、目の前の青年はどうしても許せない。
自分をその他の仲間に非道を無自覚に振い、それを良しとしている態度が気に食わない。
周りで青年に、外野のくせに賛同する女どもも気に食わない。
彼との、勘違い自己利益過大評価主義の糞野郎と過ごした日々なんて記憶から消し去りたい。
背中を預けた怪我を癒された、明後日の方向に努力するただの迷惑野郎が偉そうに説教垂れるな。
「----っ!-----!れ、じ、----にっっっ!!」
地獄に落ちろ。
思考が、意識が遠のく。
視界が暗闇に包まれていく。
最後、目に焼き付けてしまったのがこの世で最も嫌いで殺したい男。
虫唾が走るほど最悪だと赤髪の男は思った。