表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第6話 あかりのみらい

 わたしは別の世界から来た。

 

 そこは、いつも曇り空で、みんな何かに追い立てられて生きている世界。


 物には恵まれているけれど、頑張って探さなければ生きる意味が見つけられない世界。


 そんな世界にわたしはいた。



 うちの家族は4人で、パパ、ママ、おにーちゃんと一緒に暮らしていた。ママの実家はお寺で、わたしはおじーちゃんのことも大好きだった。だから、小さな頃からお寺で修行の真似事をしていた。


 中学に入った頃、子猫を拾った。

 白くて丸い女の子の猫。

 

 こまちっていう名前をつけた。


 中2のある日、部活に遅れそうになって、急いで家を出た。すると、ドアの隙間から、こまちが逃げてしまった。


 わたしはこまちを追いかけた。

 そして、こまちを捕まえて抱き上げると、目の前に大きなトラックが迫っていた。


 トラックの信号無視ではない。

 たぶん、追いかけるのに夢中で無視したのはワタシだ。


 だから、わたしが轢かれてしまったら、運転手に申し訳ないな、と思った。


 けたたましいクラクションの音が迫ってくる。

 わたしは目を閉じて歯を食いしばった。




 「あかり!!」


 背中からドンッという衝撃があって。


 気づくと、おにーちゃんが倒れていた。

 最後に見たのは、おにーちゃんが血だらけになっている姿。その瞳には力がなくて……、命が肉になって、魂が煙になる姿。



 大好きなおにーちゃん。

 いつも助けてくれて。いつも優しくて。

 誰よりもカッコいい。


 わたしはそんなおにーちゃんに、密かに恋をしていた。


 

 だけれど、そんなおにーちゃんの命が失われていくのに、わたしの身体はピクリとも動かなくて、何もできなかった。

 


 あぁ。瞼が重い。

 わたしもこのまま死ぬのだろうか。


 でも、それも良いのかもしれない。

 だって、きっと、そうしたら。


 おにーちゃんとまた出会える。

 きっと次は妹じゃなくて、血の繋がっていない普通の男の子と女の子として。



 …………。


 


 「にゃんにゃん」



 どこからかこまちの声が聞こえる。




 気づくと、わたしはアヴェルラークという世界にいた。目を開けると、どこかの知らない街で、目の前には大きなお城があった。


 周りには、見慣れぬ鎧やローブのようなものを着た人たちが沢山いて、中世ヨーロッパのようだった。


 皆、わたしと同じように、ここに飛ばされて戸惑っているようだった。


 そして、空が真っ暗になって、無機的な声が聞こえてきた。それは圧倒的な存在感で、神や悪魔のようだった。



 ソレは自らを「混沌」と名乗った。


 

 わたしたちがここに飛ばされてきたのは、混沌の気まぐれのようだった。そして、私たちは、混沌を倒さなければ元の世界に戻れないらしい。


 ……混沌を倒すことは、私達の共通の目的となった。


 やがて、わたしたちは落星人……落星の民と呼ばれるようになった。


 半年ほどすると、落星人の中にも組織みたいなものができた。戦闘が得意な者はギルドをつくり、混沌を目指して未開の地を攻略した。


 わたしたちは、現地の人達よりも、文明レベルが高く、力も強い。そのため、いつの間にか自分たちを神かなにかと勘違いし、現地人を見下し奴隷のように扱う風習が生まれた。


 わたしはそれに馴染めなくて、1人で旅をすることにした。1人の旅は寂しくて危険なことも多かったが、神様気取りの彼らと過ごすよりは、いくぶんもマシだった。


 そんなある日、たまたま即席パーティーをしたメンバーからあることを聞いた。


 ……彼女は、亡くなった家族とそっくりな人を、この世界で見かけたらしい。


 わたしは思った。

 もしかしたら、もしかしたら。


 おにーちゃんもこの世界にいるのかもしれない。わたしは、旅をしながらおにーちゃんを探すことにした。


 パパやママはきっと悲しんでいる。

 学校の友達も、部活の後輩も。


 だから、向こうの世界に戻ってまた皆と過ごしたい。でも……。


 そうして、わたしは旅を続けている。

 わたしは、道具袋から地図を出し、開いた。


 「さて、次は、このロコ村に行ってみようかな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ