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第4話 初めての。

 

 な、な、なんで裸なのさっ。

 最初は、好きな男の子としたかったのに。


 ……ひどいよ。


 わたしは子供のように声を出して泣いてしまった。


 すると、あかりが目を開けた。

 こっちに擦り寄ってきて、ナデナデしてくれる。


 アカリは言った。


 「なんで泣いているの?」


 「だって。わたしの初めて。ひどいよ……」


 すると、あかりがお腹を抱えて笑った。


 「あはははっ。あー。そういうことね。心配するようなことは、してないから安心して」


 「じゃあ、なんでアカリちゃん裸なの?!」


 「これ? わたし、裸で寝る主義なの」


 なにそれ。

 泥棒とかきたらどうするのさ。


 「じゃあ、なんでわたしも裸なの?」


 あかりは思わせぶりに、顎に指を当てた。


 「知りたい? 世の中には、知らない方がいいこともあると思うよ」


 知らずにいたら、余計にトラウマできちゃうよ。


 「教えて。泣いたりしないから」


 あかりはニタニタすると、わたしの耳元で囁いた。


 「あのね……」


 「うん」


 どうしよう。

 この先を聞いたら、わたし、あっちの世界の人になっちゃうかも。でも、知らずにはいられない。


 「……イヴちゃん。お漏らししたの」


 「え?」


 「だから。狼に睨まれて、失禁しちゃったみたいよ?」


 えっ。

 言われてみれば、狼に睨まれて腰砕けになって。


 なんか生温かかったような気も……。


 それは、ある意味。

 ロストバージンよりもショックかもしれない。


 わたしはまた泣いた。

 すると、あかりが優しい口調で言った。


 「大丈夫。臭くなかったよ?」


 「もう、知らないっ。あかりちゃんのバカっ」


 あぅ。

 お漏らしして、匂い嗅がれたなんて。


 もうお嫁にいけない。


 あかりのことを枕でポカポカと叩いていると、あかりの腕が戻っていることに気づいた。


 「よかったぁ。あかりちゃんの腕戻ってる。誰か治してくれたの?」


 「えっ。治してくれたのイヴちゃんだよ? 気づいてないのかぁ。これはね……」


 すると。

 ガチャっと扉が開いた。


 ナルさんだった。

 ナルさんは、裸でじゃれ合う私達をみると、目をまん丸にした。


 「お、お邪魔しました。その。ごゆっくりお楽しみを……」


 ナルさんは部屋に入る事なく、パタンとドアが閉まった。


 「ち、違う。そういうのじゃないからぁぁぁ!!」

 

 そのあとは、誤解を解くのが大変だった。


 

 ここはナルさんの家らしい。

 ノルンちゃんも無事だったようだ。


 本当によかった。

 そのお礼も兼ねて、夕食をご馳走になることになった。


 夕食は丸パンとサラダとシチューだった。

 他の街ではどうかしらないが、この村ではこれはかなりのご馳走だ。


 ノルンちゃんは、私の胸くらいの背丈だ。

 茶色の髪で、ぱっちり二重の可愛らしい顔をしている。


 ノルンちゃんはナルさんのお手伝いをして、私たちにパンを持ってきてくれる。


 「イヴちゃん。あかりお姉ちゃん。ありがとう」


 その姿をみて、心の底から良かったと思った。

 

 あかりの話によると、わたしはあかりの腕をくっつけたあと気を失ってしまい、あかりが1人でノルンちゃんを見つけたらしい。


 ノルンちゃんは、あの狼がいる事に気づいて、薬草畑の岩陰に隠れていたらしかった。


 「そういえば、どうして薬草を取りに行ったの?」


 そう言いながら、わたしはある事に気づいた。

 そうか。今日は……。


 ノルンちゃんは、わたしにウィンクをすると、タタッと廊下の向こうから小箱を持ってきた。


 そして、ナルさんの前にいくと満面の笑みになった。


 「お母さん。いつもありがとう!! これ。母の日の送り物」


 ナルさんが箱を開けると、中には薬草が入っていた。ナルさんは、ノルンちゃんを抱きしめると、涙を流した。


 「ありがとう。でもね。あんな危ない事しちゃダメ。私にとっては、あなたが元気なことが一番の贈り物なの」

 

 ノルンちゃんも涙を流した。


 「だって。お母さん。私のためにいつもお仕事頑張ってくれて。冷たいお水で手がガサガサだから……」


 ノルンちゃんは、悩んだあげく、薬草をプレゼントすることにしたらしい。真心のこもったとってもいいプレゼントだと思った。


 ……わたしとアカリちゃんは巻き添えで死にかけたけれど。


 でも、見ていて、あたたかい気持ちになったよ。わたしも、お母さんに何かプレゼントしようかな。


 それに、顔も知らない本当のお母さん。

 貴女にもプレゼントしたいな。


 アカリの方を見ると、涙ぐんでいた。

 ちょっと意外だった。


 本当は優しい子なのかな。


 初めて会った私を、命懸けで守ってくれたんだ。悪い子のハズがない。


 あ。腕のことを聞いてみよう。


 食事もひと段落したところで、あかりに腕のことについて聞いてみた。


 「わたし、気を失って何も覚えてないんだけど。あかりちゃんの腕はどうやって治ったの? もしかして、わたしの魔法で、すごくカッコいい感じに変身したとか?」


 すると、あかりはニコニコした。

 ……嫌な予感がする。


 「うん。すごかったよ。なんていうのかな。イソギンチャクみたいな。生まれて一番気持ち悪い光景だったかも」

  

 「……」


 ちょっと、いや、すごくショックだ。

 天使みたいな翼が生えたりして、かっこいい感じになったと思ってたのに。


 アカリちゃんは、私の頭を撫でてくれると続けた。


 「時操の奇跡はね。時を操るんだよ。だから、それを一箇所に限定すれば、怪我も元通りにすることができる」


 「だから、見た目は……」


 「グロいね。かなり。モザイク必要かも」


 わたしは目眩がした。

 やっぱり、キワモノスキルみたいだ。


 「ちなみに、なんでウルズ様は嫌われ者なの?」


 「うーん。イヴちゃん。魔力量、いや、神聖力量っていうのかな。測ったことある?」


 「なにそれ?」


 「そこからかぁ。うんとね。面倒だから魔力という言葉に統一するけど、人にはそれぞれ魔力の量があるんだ。でもね、ほとんどが生まれながらの素質で決まる。そして、時操の奇跡は、魔力の消費が尋常じゃないの」


 「それで?」


 「元々、使い手が少ない上に、一瞬で魔力が枯渇してしまって、まともに扱える人がいない。だから、奇跡も起こせない詐欺宗教って認識されて廃れたんだよ」


 えっ。

 いま、聞き捨てならないワードが聞こえたような。


 「廃れたって?」


 「信者がいないってこと。奇跡起こせる人がいないんだもん。それは廃れるよね……」


 どうりで。

 女神様に信仰スポット聞いても、ダンマリ決め込む訳だよ。


 「はぁ」


 なんだか、前途多難すぎてため息がでちゃうよ。


 すると、ノルンちゃんが駆けてきた。

 なんだろう。元気付けてくれるのかな。


 ノルンちゃんは元気な声で言った。

 いや、叫んだ。


 「大丈夫!! イヴちゃん!! お漏らししても臭くなかったからっ」


 アカリちゃんはお腹を抱えて笑っている。 

 ナルさんは、あっちを向いてプルプルしている。



 ……なにひとつ大丈夫じゃないよ。


 ノルンちゃんは続けた。

 目をまん丸にして、首を傾げている。


 「イヴちゃん神さまの魔法使えるんだもんね。聖女さまなの? だから、おしっこ臭くないの??」


 おいっ。ノルン。

 キミ、絶対にわたしを泣かせにきてるでしょ?

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